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| ジェッツ・ヘッドコーチ ハーマン・エドワーズ |
「Hello? Are you kidding me?」(もしもし、こんな質問をするなんて君は正気かい)
これは昨シーズン序盤、1勝4敗と開幕ダッシュに失敗したチームに対し、今シーズンはもうプレイオフ進出は厳しいのではないか、という類の質問をした記者に対する、ニューヨーク・ジェッツのハーマン・エドワーズヘッドコーチの第一声である。この怒気を含んだメッセージは昨シーズン中、何度も印象的な場面としてメディアに登場し、これまで他チームのヘッドコーチと比べてひときわ地味だったエドワーズの存在が、全米のスポーツファンに知れわたるきっかけとなった。
そしてこの後の結果はご存知の通り、チームはチャド・ペニントンを新QBに据えて息を吹き返し、チーム史上2度目の地区優勝。スーパーボウルまであと一歩のところまで勝ち進んだ。
リーグ1の激戦区といってもよいAFC東部地区において、決してタレントが豊富とは言えないジェッツ。しかし、就任1年目の2001年に10勝6敗でチーム史上初の新任コーチとしてのプレイオフ進出を果たし、昨年の躍進と2年連続して結果を残しているのは、冒頭のコメントに代表されるエドワーズの情熱的な姿勢が選手のモチベーションを上げ、チームに「ケミストリー」(=一体感)を作り出していることが決して小さくない要因となっている。
エドワーズがジェッツのヘッドコーチに就任したのは2001年だが、その前は5年間、今回対戦するバッカニアーズの守備コーディネイターとして、前ヘッドコーチのトニー・ダンジーとともに強力ディフェンスの礎を築いていた。ダンジーがNFLでコーチ人生を歩んだのは、NFL選手として現役引退後の1990年にカンザスシティ・チーフスのスカウトを務めた翌年、同チームの守備バックコーチ補佐に転身してから。92年から94年は守備バックコーチを務めている。
エドワーズはその経歴が示すように守備畑出身であり、攻撃面での実績はあまりない。そのエドワーズに代わってオフェンスをデザインするのが攻撃コーディネイターを務める大ベテランコーチ、ポール・ハケットである。ハケットは1983年から85年に49ersで攻撃コーディネイターを務めており、ビル・ウォルシュからみっちりとオフェンスを学んだウェストコースト・オフェンス派の直系である。南カルフォルニア大のヘッドコーチを辞任した後、一昨年にエドワーズヘッドコーチとともにジェッツに加入した。そしてジェッツでも早速ウェストコースト・オフェンスの導入をしたが、エースQBのヴィニー・テスタヴァーディはハケットの複雑なシステムをうまく習得できず、シンプルな戦術にオフェンスを作り直さざるを得なかった。
しかし昨シーズン途中にペニントンがエースQBに昇格。戦術理解力に長けるとともに視野が広く、パスを投げ分けることができるペニントンとハケット攻撃スタイルは相性が抜群だった。昨年、リーグ1位のQBレイティングをマークしたペニントンの活躍は、ハケットのウェストコースト・オフェンス抜きでは語れないだろう。今季は昨年までエースレシーバーだったWRラヴァーニアス・コールズが抜けたが、この穴を埋めるべく、ハケットがどのような攻撃を描くのか注目したい。
守備コーディネイターのテッド・コトレルも、バッファロー・ビルズ、アリゾナ・カーディナルズなどのチームで手腕を発揮した後、エドワーズ、ハケットと同じく2001年に新加入。ゾーンブリッツや5人の選手によるパスラッシュなど、さまざまな手段を用いて相手にプレッシャーをかけるのが得意である。シーズン序盤は苦戦したものの、タレントレベルは決して高くない守備陣を率い、残り10試合に限ればリーグトップ5のディフェンスを見せたのは、コトレルの創意工夫あふれる攻撃的な守備システムによるものだ。
エドワーズがそのあふれんばかりの闘志で抜群の統率力を発揮し、チームをひとつにまとめる。そしてエドワーズの指揮下でハケット、コトレルの経験豊富な策士が支える。ジェッツのコーチ陣は絶妙なバランスのもとに成り立っている。 |