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第2回 『忘れられない試合』
ジェッツと私の半生記
 
昭和天皇がジェッツのゲームに来訪

 40年の間、年間平均26ゲームはフィールドでNFLゲームを見てきた。この間最も感動したこと、印象深かったプレイヤーを2、3日探っていた。
 RBマック・へロン(元ペートリオッツ)とLBゴドウィン・ターク(元ジェッツ)という2人が煮え詰まってきた。
 へロンは多分、NFL史上、最も小さいプロ・プレイヤーだった。日本人の間でも大きくない私と身長が変わらなかった。タークは将来を嘱望されていたLBだった。2人ともNFLプレイヤーの頂点には登りきれずに終った。
 あれは1975年だったから、日本の若いファンにはなじみはあるまい。もうアメリカでも、知るファンは多くあるまい。私には忘れられない2人となった。
 日米親善旅行中の昭和天皇が、ペートリオッツ @ ジェッツのNFLゲーム(後半だけだったが)を観戦された。
後半のキックオフ直前に入場されると私はひそかに知らされていた。この行事は、警備に過敏な日本側の要求で、アメリカの報道関係には通達していなかったので、シェー・スタジアム満席の5万4000人の一般観衆は誰も、天皇が来るとはしらなかったのだ。天皇陛下は、その事実を知らされてなかったと想像する。
 初めての経験だが私は、フットボールから眼をそらせ、超望遠レンズで天皇陛下を覗いていた。映像でよく見るように、誰もご来場を知らないのに、ソフト帽を数分ふられ、着席されようとした時、大観衆が沸きに湧いた。 天皇陛下は中腰からたちあがって、また、数分帽子をふられた。
 何だか間の抜けた話だが、ジェッツのキックオフ。KRマック・へロンをゴドウィン・タークがタックルし、へロンがファンブル、タークがリカバーしたので満席のジェッツ・ファンが狂喜したのは当然であった。
 当時、フィールドで働く日系人は私一人であった。天皇随行の日本のカメラマン100名はフィールドの折りたたみ椅子で観戦するはず(記者席は120名)であったが、同じ顔つきの私がフィールドにいるので、「あいつがいいなら……」となだれ崩れに全員がサイドラインに出てしまい、観客は罵り、アメリカの取材フォトグラファーは激怒した。私としては、何とも片身の狭い経験でもあった。

思いがけず立ち会った日米親善の機会に感動

 私は「人間天皇」の世代であり、私にはご縁のない存在としか考えてなかったが、私が感じたのは「スポーツ好きのおじいさん」という印象で、その天皇が、日系としては、当時はまだ私一人が熱中していたNFLフットボールを見られたことが何とも嬉しかった記憶である。
 タイミングよく、へロンとタークが起こしたファンブルとリカバリーが、日米親善の功績であった。月刊の某誌に「ただのスポーツ好きのおじいさんにフットボールを見せるほど理解のある日本政府なら、へロンとタークに勲章をやれ。大きいのをやってくれ」と私は書いた。当時のアメリカ駐日大使(多分、ライシャワー氏だった)が大いに笑ってくれたと後日に聞き及んだ。
 その日、3TDを投げたQBジョー・ネーマスが、ゲーム後の記者会見で天皇陛下のご来場を知らされて「いやぁ、日本の天皇は、フットボールは簡単に得点できるのだなと思われたかな」と冗談をいったのも覚えている。
 あれは、もう28年も前のことである。今でも「あの時は、嬉しかったなぁ」と何だか目頭が熱くなる思いがしてきた。
 天皇陛下のご来場を知らなかった観衆と、それをご存知なかった天皇陛下の間に、起こった大歓呼と、それに応えられた天皇陛下。日頃冷静といわれる私は心を揺さぶられていた。
 印象に残るプレイヤーを書くべきコラムでは、少し的を外れたかも知れないが、そういうプレイヤーを書く機会はまたあるだろうと考えて終ろう。

【タック牧田】(写真右)米ワシントン州シアトル生まれ。関西学院大学卒業後アメリカに帰米。ニューヨーク・ジェッツの初代球団専属フォトグラファーとなり、現代NFL写真ジャーナリズムの基礎を築いた。スーパーボウルは第4回、第5回大会を除きすべての試合を取材している。文筆家としても活躍。著書に『これがNFLだ』(ベースボール・マガジン社刊)などがある。

back number
第4回 『念願のジェッツ来日に思う』
第3回 『裏方たちが彩ったジェッツ史』
第2回 『忘れられない試合』
第1回
『渡米、そしてジェッツとの出会い』


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