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HOT OFF THE GRIDIRON #100
「モーリス・クラレットとポール・タグリアブーの対決」

 オハイオ州立大学2年生RB モーリス・クラレットと NFLコミッショナー ポール・タグリアブーそして全てのNFL弁護士のあいだで大変重要な法廷闘争が繰り広げられます。争点は、クラレットが変更を希望している NFLドラフト資格です。
現行のNFL規則は下記の通りです。
 原則的に、ドラフトされようと考えているカレッジフットボール選手は、コミッショナーによって設定される毎年1月初旬の締切り日前に、その資格があることを証明する書類をリーグ事務所に提出しなければならない。ただし、その資格を希望するカレッジフットボール選手は、少なくともその選手が高校を卒業してから3フットボールシーズンを経過していなければならない。『カレッジフットボール選手は、別のドラフト(例えばヨーロッパリーグ選手のためのドラフト)にエントリーするために、通常のドラフトを回避することをしてはいけない。』


まだあどけなさの残るオハイオ州立大学2年生RB モーリス・クラレット
 モーリス・クラレットは、まれにみる才能をもったフットボール選手で、昨シーズン、オハイオ州立大学を全米チャンピオンに導きました。しかし、今シーズンは、数多くのNCAAや大学の規則に違反し、試合に出場することはできません。

 現行のNFLドラフト資格に関する規則では、クラレットがNFLドラフト資格を有するのは2005年以降となります。クラレットはアラン・シー・ミルスタイン弁護士を通して、来年(2004年)4月のNFLドラフト資格を得られるよう、NFLドラフト資格に関する規則を変更させようとしています。しかし、NFLは、高校卒業後3フットボールシーズンを経過しなければドラフト資格を得ることはできないという規則を変更したくありません。
 ゴルフ、テニス、野球、アイスホッケー、そしてバスケットボールなど他のスポーツでは、才能ある選手が年齢に関係なくプロでプレイすることができます。
 2003年 NCAAカレッジバスケットボールの全米チャンピオン シラキュース大学の中心選手だった1年生 カーメロ・アンソニーはNBAドラフトにエントリーし、今シーズンからNBAデンバー・ナゲッツでプレイします。
 同じように、NCAAカレッジフットボールの全米チャンピオン オハイオ州立大学の中心選手であったモーリス・クラレットは、アンソニーと同じ学年でありながら現行の規則では2005年シーズンまでNFLでプレイできません。

 野球やアイスホッケーといったチームスポーツには年齢に関係なく入れるマイナーリーグシステムがあります。また、MLBもNHLも高校を卒業したばかりの選手をドラフトしてもよいとしています。
 NBA、特にNFLの選手はそのほとんどが大学出身の選手です。NFLにはマイナーリーグシステムがなく、カレッジフットボールが将来のNFL選手を育てる役割を果たしています。健全で強力なカレッジフットボール組織はNFLには絶好のマイナー組織です。
 現行のドラフト規則で全体の第1位、第2位で指名されるような選手、例えば、昨シーズンのハイズマン賞受賞者カーソン・パーマー(ベンガルズ・全体第1位指名)、カレッジフットボールで2シーズンプレイしたあと3年生でアーリーエントリーしたWR チャールズ・ロジャーズ(ライオンズ・全体第2位指名)は、すでに選手として成長していて、“スター”になってからNFLの厳しい世界でプレイします。

 現在、NFLとカレッジフットボールの関係はとてもよく、すべてのコーチは、コーチ方法、トレーニング技術、選手育成、重要な選手の情報などをお互いに自由に交換しあっています。NFLのスカウトは大学のキャンパスに快く迎えられ、主要な大学はシーズン終了後に“プロ・デイ”を設け、そこで、ドラフト資格を得た選手はNFLコーチやスカウトだけに練習を公開します。
 これに対して、NBAとカレッジバスケットボールの関係はよくありません。ほとんどの大学のコーチはNBAのスカウトと関係をもちたくありません。それは、自分のチームから優秀なスター選手を引き抜かれてしまう恐れがあるからです。

 また、高校卒業後すぐにNBAドラフトにアーリーエントリーすることができるという規則は、コービー・ブライアントやレブロン・ジェームスのようなスターにはうれしいことですが、自分の才能を高く評価しすぎていたその他の選手には悪い影響を及ぼしています。
 カレッジバスケットボールはあまりにも多くの選手が早々に大学を去ってしまうという状態になっています。そして、NBAとカレッジバスケットボールの両者にとってよくない状況になりつつあります。多くのまだ成長しきっていない選手が早くにプロになった結果、コート外でのトラブルに巻き込まれたり、解雇されたあとには何もできない人になってしまったりしているのです。

 NBA選手の大多数はカレッジバスケットボール出身の選手ですが、大きな違いがあります。NBAは、1976年からアーリーエントリー制度を採用しています。その制度では、たとえ大学でのプレイ資格がまだ残っていたとしても、少なくとも45日前にNBAに通知すればドラフトにエントリーすることができるようになりました。“アーリーエントリー”制度は、1971年に設定された“ハードシップ”制度がかわったものです。
 “ハードシップ”制度とは、家計を助けるためにプロになることが必要ということが証明されれば、大学でのプレイ資格を終了していなくてもドラフトにエントリーすることができる、というものでした。それ以前、NBAは、大学でのプレイ資格を終了する前に選手がアーリーエントリーしたり、チームが大学生選手と契約することを許可しないという規則がありました。しかし、NBAは最高裁判所からドラフトにアーリーエントリーできるようにすべきであるとの判決をくだされました。それは、当時デトロイト大学の1年生であったスペンサー・ヘイウッドが、家族のためのローンを返済しなければならないため、自分がドラフトにエントリーできるようにNBA規則を変更するべきであるという裁判を起こしたからです。これに対し、最高裁判所は、経済的に厳しい状況にある選手が生活費を稼ぐのは当然の権利である判断しました。

 現行のNFL規則に挑戦するモーリス・クラレットの弁護士やこれから現れるかもしれない挑戦者は、NBAドラフトの歴史を引き合いに出すことでしょう。そしてスペンサー・ヘイウッドに関する裁判で最高裁判所が下した判決を先例としてみているでしょう。裁判所が判断しなければならない争点は、「NFLとNBAはどこが違うのか?」ということになるでしょう。

 カレッジフットボールとの良好な関係を守りたいNFLは、そのドラフト規則へのいかなる法的挑戦とも戦う準備をしています。実際にNFLコーチと関係者は、大学の選手はできるだけ長く大学に在籍することを薦め、NFLドラフトにアーリーエントリーしようとしている大学4年生には大学にとどまるようアドバイスすることもあります。
 これまで、NFLのロスターに入れなかったアーリーエントリー選手があまりに大勢います。彼らは技術を伸ばすための貴重な一年を無駄にし、フットボールの世界から消えてしまったのです。NFL選手協会によると、1990年以降、アーリーエントリーを表明した選手479人のうち実際にドラフトされた選手は67.2%です。そのうち、遥かに高額な契約を結べる第一巡で指名された選手は131人(27.3%)にすぎません。

 NFLは1990年にドラフト規則を変更しました。この年、ハイズマン賞を受賞したオクラホマ州立大学3年生RB バリー・サンダースがNFLを訴える恐れがありました。この変更により、大学3年生、レッドシャツをした2年生もNFLドラフト資格がもてるようになりました。以前の規則(まず、選手は大学で4シーズンのプレイを終了していなければならない。)にいくつかの例外がありました。そして、1980年代後半にその例外が増えてきたために、NFLは現行の3年間方針に変更しました。
 今週、NFLの労務主任ハロルド・ヘンダーソンとNFLの主任弁護士ジェフ・パッシュは、クラレットの弁護士アラン・ミルスタインとクラレットの母親ミシェールと一時間ほど会い、出場停止となった大学選手に2004年のNFLドラフト資格があるかどうかの話し合いをしました。話し合い後、ヘンダーソンは、ミルスタインがNFLを法廷に立たせる可能性があると言っていたと述べました。NFL代表者グレッグ・アイエロは、「我々はよい話し合いをし、意見の交換をしました。今後も話し合いに応じることを伝えました。」と言いました。また、ヘンダーソンは、「もし、クラレットが法廷でNFLドラフト資格について争うことになれば、彼のフットボール選手としのキャリアには大きなリスクとなるだろう。」と言いました。

 しかし、その話し合いの翌日、クラレットはニューヨーク地方裁判所にNFLを訴えました。告訴内容の1つはNFLドラフト規則変更の要求、もう1つは、自分が2003年NFLドラフトにエントリーしていれば確実に第1位指名を受け、今シーズンからNFL選手としてプレイしていたはずだとして、その機会を奪われことへの賠償請求(第1位指名の契約金とその年棒相当額)です。
 コミッショナー ポール・タクリアブーは法務担当とミーティングを重ね、クラレットの訴えにNFLが勝つ見込みがあるのかどうかを話し合っています。

 NFLは、フットボールはバスケットや他のスポーツと違うと思っています。フットボールは極度の身体的“接触”を要求されるスポーツであり、NFLは、若い選手には肉体的にも感情的にもふさわしいものではないという立場をとっています。この理由はほとんどの選手にあてはまることです。特に、ラインマンは大学5年間の考えられたウェイトリフティングのトレーニングで大抵15〜30キログラム増え、肉体的にかなり逞しくなります。また、カレッジフットボールでプレイしたことのないクォーターバックを欲しがるNFLチームはありません。高校から直接プロになるクォーターバックは思慮深くないという思いがあるからです。高校を卒業したばかりの若い選手がすぐNFLに入り、もし通じる可能性があるとすれば、そのポジションはランニングバック、ワイドレシーヴァー、ディフェンスバック、キッカーでしょう。しかし、たとえクラレットのように身体的能力を持ち合わせた特別な選手であっても、10代の身体的能力を大人の“プロの能力”に合わせることができるかどうかは疑問です。

 クラレットは特別な選手です。それは疑いの余地はありません。BCSフィエスタボウル全米チャンピオン決定戦後半、マイアミ大学が試合の流れを大きく変えるインターセプトをしたと誰もが思った瞬間、クラレットはマイアミ大学DB ショーン・テイラーを倒し、再びインターセプトを仕返し、ボールをオハイオ州立大学に取り返しました。NFLスカウトはランニングバックがそのようなプレイを見たことがありませんでした。特に、このようなビッグゲームで。昨シーズン、オハイオ州立大学でプレイしていたクラレットは、フットボールというスポーツをプレイするための“特別な才能”を何度も何度も見せていました。

 クラレットのNFLへの挑戦はどうなるでしょうか?
 両者のあいだではさまざまな議論が起こっています。クラレットには、プロスポーツは、しかるべき才能を持ち合わせる人がスポーツで生計を立てる権利を奪うことはできないとしたNBAの“ハードシップ”判決という先例があります。NFLは、高校卒業後3年を経過した選手にドラフト資格があるという現行の規則を正当化するために、フットボールが肉体的スポーツであるいうことを主張するでしょう。NFLは、クラレットが自分で約束したNCAA奨学金規則に違反し、今シーズンプレイすることができなくなったことを理由に、クラレットの素養にも言及するでしょう。それだけでなく、クラレットは借りた車の所持品が盗難にあった際、その金額について虚偽の報告をしたとしてオハイオ州コロンバスとも法律的な問題に直面しています。


クラレットは今シーズン、フィールドにも、サイドラインにも立つことはできない
 クラレットは今20歳です。クラレットはNFLランニングバックのキャリアが平均で 2.57年だということもよく知っています。すでに、今シーズンはプレイできません。もしあと1シーズン、あるいは2シーズン判決が出るまで待たなければならないとしたら、彼の成長と彼の技術について、多くの疑問がもたれることでしょう。
 これがどういう結果になるかわかりませんが、私はフットボールがバスケットボールと違うスポーツであり、選手はプロになる前に肉体的に成長し、社会的経験を積む時間が必要だと考えています。クラレットは、2004シーズンにプレイできるように、オハイオ州立大学のチームメイトとコーチングスタッフに、彼がしてきたことについて謝罪し、黙々と努力するべきだと思います。そして、クラレットはもう1年メジャーカレッジフットボールの経験を積み、2005年NFLドラフトで自分の力を試すべきです。フットボールコーチはよく、「一生懸命練習し、謙虚でありなさい。そうすれば、必ずいいことが起こります。」と言っています。今こそモーリス・クラレットはこの言葉を聞くべきです。

SEE YOU NEXT TIME!
Bill Marklevits

back number
#115 「リッキー・ウィリアムズの引退はドルフィンズを茫然とさせました。」
#114 「ペイトリオッツは昨年よりもよいチームとなっているようです。」
#113 「NFLの完璧な勝利」
#112 「NFL2004年ドラフト レビュー」
#111 「マニングの願いが叶いました。」
#110 「“NFLドラフト 第1位指名権の行方は?”」
#109 「クラレットのルールへの挑戦は、NFLの根本を揺るがすものです。」
#108 SUPER BOWL 38 レビュー
「ブレイディがペイトリオッツを再びスーパーボウル勝利に導きました。」
#107 「SUPER BOWL XXXVIII プレビュー」
#106 「ファーヴがグリーンベイにマジックをまた取り返しています。」
#105 「ハイズマントロフィーが必ずしもNFLでの成功を確約するわけではありません。」
#104 「バッカニアーズからマジックが消えてゆきました。」
#103 「マービン・ルイスはベンガルズをプレイオフへ導く勢いです。」
#102 「ヴァイキングスは今、NFCで注目のチームです。」
#101 「ディック・ヴァミールはチーフスを好調の波に乗せました。」
#100 「モーリス・クラレットとポール・タグリアブーの対決」
#99 「バッカニアーズはNFLで最高のチームです。」
#98 「全米連覇を狙うオハイオ州立大学」
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#96 「トミー・マドックスにどのぐらいの価値があると思いますか?」
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