第5回 《タンパベイ編》
松井秀喜選手が在籍するNYヤンキースが春季キャンプを行う場所として、日本でもすっかりお馴染みとなったフロリダ州タンパ。バッカニアーズのスーパーボウル優勝で2002年シーズンのタイトルタウンとなった都市である。
NFLファンには「タンパベイ」の名で知られるが、実はそういう名前の街は存在しない。北米大陸の南東に突き出すような形で位置するフロリダ州の西側にメキシコ湾が広がる。そのメキシコ湾が内陸に入り組んだ形になっている場所がタンパ湾、すなわちタンパベイである。
NFLチームのフランチャイズは都市名(マイアミ、サンフランシスコなど)もしくは州の名前(ミネソタ、テネシーなど)で呼ばれるのが通例。バッカニアーズのように地域名をフランチャイズとして使用するのはニューイングランド、キャロライナなどごく少数だ。
ちなみにタンパに本拠地を置くMLBデヴィルレイズ、NHLライトニングもやはりタンパベイと名乗っているが、これはバッカニアーズの例に倣ったものである。
タンパにおけるメジャースポーツの歴史は浅い。上記の3チームのうち最も古いのがバッカニアーズだが、それでもチームがリーグ戦に参加したのは1976年だ。
ご承知の通り、第37回スーパーボウルで初出場で初優勝を飾ったわけだが、バッカニアーズの低迷は長く続いた。76年は全敗で翌年も第13週にようやく勝利。チーム初勝利まで実に26連敗を喫したのである。これは今でも破られていないNFLの最長連敗記録である。
次に誕生したのはライトニング。1992−93年シーズンから参戦。現在はイースタンカンファレンスのサウスイーストディビジョンに所属している。ライトニングも初期のバッカニアーズと同じようにディビジョンの最下位がほぼ定位置という低迷期を長く経験している。ただ、2003年3月現在ではワシントン・キャピタルズと地区優勝を争うなど、チーム創設以来で最大の好調振りを発揮している。
最も新しいのがデヴィルレイズだ。98年からアメリカンリーグイーストディビジョンに参戦しているが、これまでで2000年の69勝93敗(.429)というのが最高勝率(2002年シーズン終了現在)。こちらも苦戦が続いている。どうもタンパという街では、スポーツチームはバッカニアーズやライトニングのように大器晩成型になってしまうようだ。
ところでバッカニアーズとは海賊(パイレーツ)のなかでもカリブ海を中心として活動していたものたちのこと。実際、19世紀半ばまではこのタンパ湾には海賊が出没していたそうだ。現在では海賊戦が商業船にかわり、全米でも有数の港湾都市となった。
タンパの街には海賊にちなんだ民芸品や行事が多いが、そのなかでも最も大掛かりなのは「ガスパレラ」と呼ばれる祭りだ。ガスパレラとは毎年2月に行われる仮装パレード。ニューオリンズのマルディグラの衣装を海賊にしたものといえばわかりやすいだろうか。
ガスパレラでは、海賊に扮した参加者が大砲や銃を派手に鳴らしながら大きな帆船でタンパ湾に乗りつける。船が接岸すると船上のにわか海賊たちはイミテーションの宝石や金貨・銀貨を陸の見物客にむけて投げる。そして、いよいよ上陸だ。これが海賊の侵略を模していることは言うまでもない。その後海賊たちは街中をゆっくりとパレードするのである。
ガスパレラは1904年に始まり、ほぼ1世紀の歴史を持つ。18世紀にスペインから移住してきた海賊ホセ・ガスパーをたたえるものだ。海軍上がりのガスパーはメキシコ湾を中心に暴れまわり、最強を誇った。引退する直前に金銀財宝をタンパのどこかに埋めたと伝えられるが、現在までそれは見つかっていない。
タンパはどちらかというと商業都市で観光地ではないから、日本のガイドブックなどでもあまり取り上げられない。数少ない観光スポットをあげるなら、アフリカのサバンナを再現したブッシュガーデン、巨大なフロリダ水族館、葉巻で有名なイーボシティだ。イーボシティはかつて世界でも有数の葉巻生産地として知られ、最盛期には年間7億本もの葉巻を全世界に送り出していた。いまではタンパで最も大きな繁華街だ。
フロリダの都市らしく夏は湿度が高く気温も上がる。冬は温暖で過ごしやすい。マイアミからは飛行機で約1時間。ディズニーワールドやユニバーサルスタジオのあるオーラードーからは車で約3時間の距離だ。 |