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NFL Report Japan


このコーナーでは米国のNFL記者クラブ的存在であるPro Football Writers of Americaに日本人として唯一所属するジャパンタイムズ記者、生沢浩がNFLチームの存在する都市をいろいろな角度から紹介します。どうぞお楽しみに!!

第7回 《ピッツバーグ編》

 僕は学生時代のうち1年間をピッツバーグで過ごしたことがある。それ以来、ほとんど毎年のようにこの街を訪れるが、ピッツバーグ国際空港に降り立った瞬間のあのなんともいえない心の昂ぶりは、今でもうまく抑えることができない。

 空港でタクシーを拾い、ルート279を北東に向かう。土や岩がむき出しになった丘を左右に見ながら20分ほど走るとやがてフォートピットという名のトンネルが現れる。このトンネルを渡りきるのに要する時間は30秒ほどだろうか。コンクリートの壁が途切れると突如としてユニークな形をしたダウンタウンの高層ビル街が眼前に広がる。胸の高まりが最高潮に達し、ピッツバーグにやってきたという実感を持つことができる瞬間だ。

 ペンシルバニア州南西部に位置するピッツバーグは人口約34万人の中都市である。オハイオ、アルゲニー、モノンガヘラという3つの河にはさまれたデルタ地帯、「ゴールデントライアングル」を中心に都市部が広がっている。

 かつては鉄鋼の街として全米のみならず世界的にも有名だったが、現在では稼動している鉄工場の数も全盛期の半分以下となり、街の様相は大きく様変わりした。今日はむしろビジネスタウンとしての色彩が濃い。

 かつては「スモーキータウン」という、あまりうれしくないあだ名をいただくほどに工場からのばい煙による空気汚染が社会問題となっていた。しかし、80年代以降に力を注いだ街の緑化と文化事業の活性化が功を奏し、90年以降は全米でも最も住みやすい都市トップ10の常連となっている。

 観光都市ではないから、商用とスポーツ観戦以外ではあまり縁のない街かもしれないが、私たち日本人にもなじみの深いものがこの街にはいくつか存在する。ひとつは日本でも画風が人気のポップアーティスト、アンディ・ウォーホルだ。ウォーホルはピッツバーグ出身で、ピッツバーグ大学のあるオークランド地区で育った。ダウンタウンからアルゲニー側を渡ったノースサイドにはアンディ・ウォーホル美術館があり、約3000点の作品が展示されている。

 もうひとつはケチャップや缶入りスープで有名なハインツ社で、本社がピッツバーグにある。演劇の行われるハインツホールやスティーラーズのホームグラウンドであるハインツフィールドへのスポンサードなど地元に根ざした事業にも熱心な企業のひとつだ。

 ダウンタウンはゴールデントライアングルの中にある。完全なビジネス街なので、ここでのショッピングはあまり勧められない。ショッピングをするのであれば、地下鉄を使ってモノンガヘラ川を渡り、ステーションスクエアへ行こう。ステーションスクエアはかつて駅舎だった建物を小さいショッピングモールに改造したもので、レストランや土産物屋が並んでいる。奥のほうには「菊」という日本食レストランもある。

 ステーションスクエアよりも大きいモールに行くには車の手配が必要。行きはタクシーでもいいが、帰る際にモール内ではタクシーを捕まえることはまず不可能。電話で呼ぶにしても、週末は交通渋滞が起こりやすく、待たされることが多い(僕はクリスマス前に2時間待たされた!)。そういう意味で、あまり観光客に親切な街ではない。

 ステーションスクエアのすぐ近くにインクラインと呼ばれるケーブルカーがある。これを使うとMtワシントンという小高い丘に登ることができる。ここは高級住宅街だが、高い位置にあるのでピッツバーグの街が一望できる展望台にもなっている。ここからピッツバーグを見下ろすと、河がY字型に流れて、それにはさまれる形で都市が展開しているのがよくわかる。なるほどこの街が「スリーリバータウン」と呼ばれるわけだ、と納得してしまう。この場所から美しくライトアップされるビル群の夜景を見るのが僕のピッツバーグでの最高の贅沢のひとつだ。

 Mtワシントンから街を見下ろすと、右手(東方)にひとつだけ際立って高いゴシック調のタワーが見える。これはピッツバーグ大学のシンボルタワーで、「学問の大聖堂(Cathedral of Learning)」と呼ばれる。42階建ての高層タワーのなかには世界各国の装飾様式を模した部屋が23個あり(ナショナリティルーム)、あらゆる国の装飾文化を楽しむことができる。

 一階は教室や共有スペースになっており、ピッツバーグ大学の授業も幾つか行われている。僕もここで授業を受けていた。

 大聖堂の中には自由に入れるので、ぜひ一度訪れていただきたい。大聖堂の中央のホールでは学生たちが読書をしたり、談笑している姿が見られるだろう。

 学問の大聖堂から通り(フォーブズアベニュー)を1本隔てたところにカーネギーメロン大学がある。人工知能で一躍有名になった大学だ。『卒業』、『レインマン』などに出演したダスティン・ホフマンの母校でもある。

 カーネギーメロン大学に隣接するカーネギー博物館は必見だ。自然史博物館と美術館からなり、古生代の化石や19世紀のヨーロッパ美術品などが数多く展示されている。なかでも恐竜の化石は全米でも有名で、各地の恐竜展に貸し出しされる。

 僕がピッツバーグを訪れる最近の目的はもっぱらフットボール取材だから、この街に来るのはおもに冬。ピッツバーグの冬は厳しい。最高気温が摂氏0度という日も珍しくはない。留学時代には寒さのあまりスリーリバーが凍っているのを見たことがある。

 このところ冬のピッツバーグしか体験していないが、それだけに夏のピッツバーグも恋しい。夏の気温は30度前後まで上がることもあるが、朝夕はカラッとしていて気持ちがいい。夜には蛍の姿を見ることもできる。もし、夏にピッツバーグを訪れる機会があったら、スリーリバーのクルージングを久しぶりに楽しみたいものだ。

 北米4大スポーツのうちピッツバーグを本拠地とするのはNFLスティーラーズ、MLBパイレーツ、NHLペンギンズだ。全てのスタジアムがダウンタウンから徒歩圏内にあるのがうれしい。3チームともリーグ優勝経験があるが、1979年のシーズンにはパイレーツがワールドシリーズを、スティーラーズがスーパーボウルを制覇し、街中が祝賀ムード一色になったという。

 最も歴史が深いのはパイレーツで1901年の創立。71年と79年にワールドシリーズで優勝している。スティーラーズは1933年に発足したが、当初はMLBと同じパイレーツと名乗っていた。スティーラーズと改名されたのは40年のことだった。スティーラーズが74−75年、78−79年とスーパーボウル連覇を2度成し遂げ、70年代のチームと呼ばれるのはご承知の通り。最も若いペンギンズは1967年の誕生だ。91−92年にスタンレーカップを制覇している。

◎スタジアムの歴史
ハインツフィールド
 70年から31シーズンにわたって親しまれてきたスリーリヴァーズスタジアムに代わって2001年に完成した。地元の食品メーカーであるハインツが10年契約で命名権を獲得して、この名が付けられた。スリーリヴァーズスタジアムはパイレーツとの共用だったが、ハインツフィールドはフットボール専用スタジアム。ピッツバーグ大学のホーム球場でもある。天然芝だが、芝の状態はあまりよくなく、悪名高かったスリーリヴァーズ同様に選手からの評判は芳しくない。アルゲニー側に面した南側のゴールポストでは風が複雑に待っているようで、FGが外れやすく、キッカー泣かせの鬼門となっている。ハインツフィールドでのスティーラーズの記念すべき緒戦は2001年第2週に、長年のライバルであるブラウンズとの対戦で予定されていたが、同年9月11日に起きた同時多発テロの影響でこの週が延期となり、10月7日のベンガルズ戦にずれ込むという不測の事態となった。

生沢浩(いけざわひろし)
ジャパンタイムズ運動部主任。1965年北海道生まれ。高校生のときに偶然テレビで見たボー・ジャクソンのランに魅せられてフットボールの虜となる。上智大学でRBとしてプレイ。米国のNFL記者クラブ的存在であるPro Football Writers of Americaに日本人として唯一所属。現在は『アメリカンフットボールマガジン』、『Sports Yeah!!』などの雑誌にNFLの記事を寄稿する傍ら、「NHK-BS」や「G+」でゲーム解説を務める。訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。

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第20回 《デトロイト編》
第19回 《クリーヴランド編》
第18回 《アトランタ編》
第17回 《セントルイス編》
第16回 《フィラデルフィア編》
第15回 《ニューイングランド編》
第14回 《ヒューストン編》
第13回 《ボルティモア編》
第12回 《シアトル編》
第11回 《ワシントンDC編》
第10回 《マイアミ編》
第9回 《シカゴ編》
第8回 《サンフランシスコ編》
第7回 《ピッツバーグ編》
第6回 《インディアナポリス編》
第5回 《タンパベイ編》
第4回 《ニューオリンズ編》
第3回 《サンディエゴ編》
第2回 《デンヴァー編》
第1回 《ニューヨーク編》

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