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NFL Report Japan


このコーナーでは米国のNFL記者クラブ的存在であるPro Football Writers of Americaに日本人として唯一所属するジャパンタイムズ記者、生沢浩がNFLチームの存在する都市をいろいろな角度から紹介します。どうぞお楽しみに!!

第16回 《フィラデルフィア編》

 1776年7月6日、アメリカ合衆国はその人民史に永久に刻まれるべき瞬間を迎えていた。イギリスの植民地から独立国家としての道を歩むことを謳った「独立宣言」が、採択から2日を経て一般人に公開されたのだ。
 のちの大統領となるトーマス・ジェファーソンが起草した独立宣言が、インディペンデンスホールで読み上げられたとき、黄金色に輝く鐘の荘厳な音色が鳴り響いた。まさに植民地時代の終結と、自由の獲得を高らかに宣言する鐘の音だった。
 アメリカの独立を象徴するこの歴史的な出来事の舞台となったのが、ペンシルヴェニア州のフィラデルフィアである。米国最初の首都でもあり、まさにアメリカ合衆国生誕の地である。
 アメリカ人は「鷲」を誇り高き動物としており、自国を象徴する鳥としてシンボル化するのが好きだ。フィラデルフィアのNFLチームがイーグルズという名称であるのも、この都市が合衆国独立の舞台となった歴史的に重要な街だからだ。
 ペンシルヴェニア州の東端、ニューヨークに程近い場所に位置するフィラデルフィアは1682年にイギリスのウィリアム・ペンによって建設された。フィラデルフィアとはギリシャ語で「兄弟愛」を意味するそうだ。本国イギリスとの通商地として発達したが、独立の気運が高まるや、一転して政治の中心地となる。そのシンボル的な役割を果たしたのが、前述のインディペンデンスホールだ。「親」とも言うべき本国からの独立の舞台となった街が「兄弟愛」を意味するのも皮肉なものだ。
 1741年に建設された同ホールでは独立宣言が採択・発表されたほかに、合衆国憲法が発布された場所でもある。現在でもそのたたずまいはほぼ当時のまま残されており、フィラデルフィア市内で最も人気の観光スポットになっている。
 インディペンデンスホールの隣にあるのがコングレスホールだ。独立宣言後、アメリカの13州は深刻な経済問題に頭を抱えていた。それを克服するために13州をひとつの連邦国家として統一するための議論がなされた。これが歴史上有名なフィラデルフィア会議で、その舞台となったのがこのコングレスホールだ。フィラデルフィアが合衆国の首都となっていた1790〜1800年にはここで連邦会議が開催された。
 独立宣言の朗読時に鳴らされた鐘が有名なリバティベルだ。インディペンデンスホールの北側に位置する公園内に現存する。周囲約4メートル、重さ940キロの大きな鐘で、ペンシルヴェニア州の象徴だ。同州の車のナンバープレートにはこのリバティベルが描かれている。現在ではたてに大きく亀裂が入っているために鳴らすことができない。最後に音色を奏でたのは1846年だということだ。
 リバティベルには旧約聖書からとった「全住民に自由を宣言する」といった銘が刻まれている。
 そのほか、合衆国で2番目に設立された銀行(その名もずばりThe Second Bank of the US)など、歴史を伝える建造物が多い都市である。
 現在のフィラデルフィアは全米でも5番目の規模を持つ大都市だ。日本からの直行便はないが、ニューヨークから陸路(バスで2時間半、鉄道利用なら70分ほど)で入ることができる。歴史的建造物と近代的な高層ビルが見事なコンビネーションを作り上げている。
 市内は碁盤の目のように整備されているので、よほどの方向音痴か地図の読めない人でなければ迷うことはないだろう。
 歴史的建造物を除いて、観光客に最も人気なのはフィラデルフィア美術館だ。全米3番目の規模を持つといわれる美術館にはゴッホ、ルノアールなどの作品が展示されている。映画「ロッキー」の中でシルヴェスター・スタローン演じるロッキー・バルボアがランニングするシーンでもおなじみだ。映画といえばフィラデルフィアを舞台にした映画も多い。古くは1940年の「フィラデルフィア物語(ケイリー・グラント、キャサリン・ヘップバーン主演)、最近では93年の「フィラデルフィア(トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン)が有名だ。
 フィラデルフィアから西に50キロほど行ったランカスターカウンティという町には、ハリソン・フォード主演の映画「刑事ジョン・ブック」で広く知られるようになったアーミッシュが住んでいる。アーミッシュとは17世紀に誕生したキリスト教の一派で、現代でも自然に即した当時の生活スタイルを維持し、電気を一切使用しないことでも知られる。余談だが、僕は留学していたころにピッツバーグ市内の病院でこのアーミッシュの一団を見かけたことがある。全員黒を基調とした古風な服装なので、一目でそれとわかった。ところが、次の瞬間、僕は目を疑った。なんと彼らは2階から1階へエレベーターを使って降りて行ったのだ。なんとなく「ずるいッ!」と思ったのだが、彼らもランカスターを離れれば、電気を使ってもいいのだろうか。それはいまだに疑問のままだ。

◎スタジアムの歴史
リンカーンフィナンシャルフィールド
 長らくファンに愛されてきたヴェテランズスタジアム(もっとも、人工芝の老朽化が激しかったため、NFL選手間には不評を極めた)に代わって2003年に誕生した、NFLで最も新しいスタジアム。ヴェテランズスタジアムの8倍以上にあたる5億1200万ドルの総工費をかけて建設された。イーグルズの会長兼CEOのジェフリー・ルリーはかねてから「スーパーボウルに勝つことが究極の目的だ」と公言しているが、その目的達成のための一環として新設されたのがリンカーンフィナンシャルフィールドだ。NFLの試合に先立ち、2003年の8月3日にはマンチェスターユナイテッドとFCバルセロナのサッカーの試合が柿落としとして行われた。NFLのデビュー戦は2003年の開幕週のマンデーナイトゲームだったが、イーグルズは前年のチャンピオンのバッカニアーズに0−17で敗れ、記念すべき初戦を白星で飾ることができなかった。

生沢浩(いけざわひろし)
ジャパンタイムズ運動部主任。1965年北海道生まれ。高校生のときに偶然テレビで見たボー・ジャクソンのランに魅せられてフットボールの虜となる。上智大学でRBとしてプレイ。米国のNFL記者クラブ的存在であるPro Football Writers of Americaに日本人として唯一所属。現在は『アメリカンフットボールマガジン』、『Sports Yeah!!』などの雑誌にNFLの記事を寄稿する傍ら、「NHK-BS」や「G+」でゲーム解説を務める。訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。

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第20回 《デトロイト編》
第19回 《クリーヴランド編》
第18回 《アトランタ編》
第17回 《セントルイス編》
第16回 《フィラデルフィア編》
第15回 《ニューイングランド編》
第14回 《ヒューストン編》
第13回 《ボルティモア編》
第12回 《シアトル編》
第11回 《ワシントンDC編》
第10回 《マイアミ編》
第9回 《シカゴ編》
第8回 《サンフランシスコ編》
第7回 《ピッツバーグ編》
第6回 《インディアナポリス編》
第5回 《タンパベイ編》
第4回 《ニューオリンズ編》
第3回 《サンディエゴ編》
第2回 《デンヴァー編》
第1回 《ニューヨーク編》

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