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NFL Report Japan


第13回
エクスキューションとアウトコーチング
〜AFCチャンピオンシップ
 ニューイングランド・ペイトリオッツ×インディアナポリス・コルツ戦〜
 
ペイトリオッツを2年ぶりのスーパーボウルへと導いたQBトム・ブレイディ
AFCチャンピオンシップではブレイディと明暗を分けたコルツQBペイトン・マニング
 以前この項で、トム・ブレイディというQBについて論じた。その時はかつてのニューイングランド・ペイトリオッツのエース(現バッファロー・ビルズQB)、ドリュー・ブレッドソーとの比較をしたのであるが、今回のインディアナポリス・コルツとの対戦もまた、QBの比較という面で非常に興味深い対決となった。
 もちろん、ゲームそのものがスーパーボウル進出を賭けたチャンピオンシップゲームであったことから、興味をそそらない訳がなかった。加えてコルツQBペイトン・マニングはこのプレーオフにおいてほぼパーフェクトといっていい出来でここまでを勝ち上がっていることから、それがどこまで続くのかということにも耳目は集まった。
 それゆえここでは、コルツオフェンス対ビル・ベリチックヘッドコーチの薫陶を受けたペイトリオッツディフェンスを軸に話をしていこうと考えていた。しかし、誠に申し訳ないことであるが、僕の目はペイトリオッツオフェンスにくぎづけになってしまった。なぜなら見れば見るほど『outcoach(コーチ力で圧倒する)』という言葉が、頭を駆け巡っていたからだ。
 同時に同じようなプレーをコールしていながら、結果のあまりの違いにも驚いた。これは2人のQBの現段階における到達度の違いと見ることができる。そこから浮かんでくる言葉として、『execution(やりきること)』という言葉がぴったりくる。
 今回はこの2つの言葉をキーワードにして、ゲームの解析をしてみたい。
 最初に話をしやすくするために、僕の2人のQB評について述べておきたい。いろいろなところでいろいろな言い方がなされてきたが、僕は次のように考える。
 ブレイディは、『豪胆な職人』。
 マニングは、『繊細な秀才』。
 マニングほど学んだことを忠実に成果につなげるQBも珍しい。彼は失敗から学ぶことによって絶えず進化するQBであるといえる。これまでビッグゲームで勝てない、といわれ続けてきたが、今年はタンパベイ・バッカニアーズ戦での大逆転劇を含めて数々のヒロイックを演出し、さらにはプレーオフに入ってからデンヴァー・ブロンコス、カンザスシティー・チーフスと大量得点で撃破してきた。レイティングは限りなくパーフェクトに近く、QBとしては完璧と言える域に達したかに見えるほどであった。すなわちかつての評価をその努力によって乗り越えた、のである。ここに稀有な秀才振りを僕は見る。
 しかし今回のゲームでは、その繊細さが災いする。ベリチックのディフェンスを攻略しなくてはならない、ということにプレッシャーを感じ過ぎ、結果として数々の判断ミスを犯してしまった。勿論秀才の彼は、これを糧にして来季にはスーパー進出を叶えてしまうかもしれない。またそうすることが彼の彼たる所以でもあり、その可能性は限りなく高いと言っていいだろう。
 一方のブレイディについては、僕は職人のメンタリティを見てきた。職人とは言い換えるならば、スペシャリスト、もしくは本物のプロフェッショナル。自分の仕事をいかなる状況下でもやり遂げる。まるで取り巻く状況など存在しないかのような落ち着きでもって、淡々と仕事をこなす。
 2年前にスーパーボウルを制した際に、ペイトリオッツは徹底的にエゴを排したチーム作りを行った。自分のエゴを通すこととスーパーボウルに進出して勝利を手にすることとどちらが本当に欲しいものであるか。答えは彼らのパフォーマンスに明らかだった。
 そのスタンスは今でも続いている。そしてそれを最も端的に表しているのがブレイディである。チームメイトは言う。
『QBというのは特別なものであるはずだけど、彼はチームの一員に過ぎないって感じで振舞っているし、皆もそう扱っているよ』
 ブレイディは、QBという仕事を淡々とやりこなす。多過ぎるものを望むのではなく、目の前の1プレーを適切にこなしていく。その先にあるものが勝利であって、その順序の逆転は起こらない。
 さて、例によって前置きが長くなってしまった。早速ゲームへと進んでいこう。
 まずはコルツのキッカー、マイク・ヴァンダージャクトによるキックオフでゲーム開始。短いブループキックのため、パッツは自陣35ヤードよりドライブ開始。
 最初はRB32アントワン・スミスのドローをコールするが、このプレー、スナップカウントをセットに合わせており、準備をまだしていないコルツDLを押し込んで、9ヤードのゲインを奪った。
 こういった細かい技を使うのが、ペイトリオッツというチームである。これによりディフェンス全員が早くセットしなくては、という追い立てられた気持ちになる。それによってスナップ前の情報収集が疎かになり、それが大きなプレーにつながる可能性が増してくる。
 しかし、続くプレーアクションではボールが浮いてしまい、第3ダウン1でのスプリットバックからHBダイブはノーゲインに終わる。自陣44ヤードであることから、パントを誰もが予想した。
 ところが、流れをものにしたいベリチック率いるパッツは、第4ダウンコンバージョンを試みることに。第3ダウンでも使ったタイトなフォーメーションから、シフトしてバックス陣が散らばる。ブレイディはショットガンの位置に。
 当然パスを考えているコルツディフェンスを目の前にしながら、何らかのチェックコールを入れつつ、ブレイディは前へ歩き出す。そしてエクスチェンジスナップを受けると、そのままスニークをしたのだ。
 これが2ヤードのゲインとなり、ダウン更新。ディフェンスにとっては手玉に取られているような感覚がしていたに違いない。
 自陣46ヤードからの続くプレーを挙げてみた。
 これはエンプティバックからのパスプレーであるが、注目して頂きたいのは、インサイドレシーバーの87デイビッド・ギヴンスの動きである。
 コルツのDLはリーグで最強とはいえないものの、DE93ドワイト・フリーニーを中心としたパスラッシュは侮れない。そこでパッツのとった方法は、RBやTEを使ったダブルチームではなく、死角にいるレシーバーによるチップであったのだ。
 予想外のところからそれも横からブロックされたフリーニーはバランスを崩し、ヨタヨタと内側へ流れる。そのあとをLT72マット・ライトが引き受ける。その間にギヴンスはレシーバーとしてリリースし、センターでフックする。そしてタイミング通りにブレイディがヒット。5ヤードを獲得した。
 2年前のスーパーボウルでは、爆発的な攻撃力のセントルイス・ラムズに対して、同様のスキームをディフェンス側でパッツはやってのけていた。それはDEにセットした選手がインサイドレシーバーを横から不意にヒットし、バランスを崩させて消し去るというもの。それによってターゲットを一人失ったQBカート・ワーナーが落ち着きをも失っていた様子が思い出される。
 いずれにしてもこういったテクニックの使用もあって、パッツはフリーニーをゲームを通じてコントロールし続けた。
 続く攻撃では、まったく同じ形から右サイドのインサイドレシーバー80トロイ・ブラウンのシームに投げる。決まったように見えたパスであったが、コルツCB21ウォルト・ハリスのタックルで落球。第3ダウン5ヤードとなった。
 コルツのトニー・ダンジーヘッドコーチがゲーム前に言っていたことは、第3ダウンをもう少しうまく守らなくてはならない、ということであった。レギュラーシーズンでパッツと対戦した際には、再三の第3ダウンロングをQBに時間を与えすぎたことによって成功され、結果として敗戦となった。今回の対戦では同じ轍を踏んではならない、ということだったが、それは適わず。またしてもポケットの中で天才的な動きを見せるブレイディに時間を稼がれ、WR83ディオン・ブランチへのパスが成功、ダウンを更新されてしまった。コルツ陣36ヤード。
 パッツはその後もドロー、プレーアクションなどで確実にボールを進め、コルツ陣11ヤードで第3ダウン4ヤードを迎えた。パッツは再びエンプティーフォーメーションをとって、パスを試みた。それを図2に挙げた。
 ここでは先程指摘したブレイディのポケットの中での動きに注目していただきたい。後ほど出てくるコルツQBマニングの動きと比べると彼のプレッシャーハンドリング(プレッシャーへの対応)能力の高さがよくわかる。
 87ギヴンスはこれまでと同様に93フリーニーをチップしてから中央へ。フリーニーは今度はヨタヨタとはせず、そのままの勢いでセンターの位置までラッシュするが、そこにはセンター67ダニエル・コッペンが待ち構えており、完璧にプロテクション。
 ただ、インサイドDLに入っていた92チャド・ブラツキがスピードを生かして縦に割って入った。それを感じたブレイディは右へ逃げるが、そのまま右へ行くよりも左前に戻ってブラツキの逆を取ったほうが賢明であると判断し、左前方へステップアップ。そしてタイミングが崩れたことを察知した83ブランチが空いているソフトスポットへ入り込み、ブレイディからのパスをキャッチ。ダウンを更新した。
 ボールオンは7ヤード。パッツは2TEをいれて、ランのパーソネルを引き出し、右側にトレイのウィングセット。そして右側に3人固めたアンバランスな隊形にありがちなシングルレシーバーへのヒッチパスを投げた。
 実はこれはパンプ。CB27デイビッド・マクリンは本当にいい反応をしていた。実際に投げていたならインターセプトリターンTDにでもなったかというくらいのタイミングであった。
 しかしパッツはその一枚上手を行っていた。パンプから縦にアップしたギヴンスへブレイディは余裕のパスを決め、このゲーム最初のタッチダウンとしたのである(図3)。7−0ペイトリオッツ。
 ただゲームはまだ始まったばかり。パッツのキッカー、アダム・ヴィナティエリのキックを27ヤードまで返すと、コルツはそこから攻撃を始めた。
 コルツにしては珍しくルースなバンチ隊形からの攻撃。フロント7が盛んにシフトを繰り返す中で、オフェンスラインがフォールス・スタート。5ヤード罰退となり第1ダウン15。まったく同じ隊形から、左へのランを見せてブーツレッグ。TE81マーカス・ポラードへスローバックを投げ、これが32ヤードゲインとなり、敵陣に入った。
 コルツはスプレッド隊形でも、2人のレシーバーをタンデム(縦に重ねる)にセットさせ、ジャムの得意なパッツディフェンスにそれをさせないようにする。RB32エジャリン・ジェイムズのドローやゾーンでボールを進めるが、パスは思うように決まらない。
 パッツ陣11ヤードまで入った第2ダウン9。WR87レジー・ウェインへドラッグが決まるが、パッツCB24タイ・ロウ、SS37ロドニー・ハリソンが強烈なタックル。ボールを捕った後1インチも進ませなかった。
 そして第3ダウン3、エンドゾーンまでは残り5ヤード。ここでマニングに手痛い判断ミスが発生する。パッツのカバーはマン。コルツのルートはレシーバー同士が交差するため、マンを振り切るには最適のルートであった。
 実際TE81ポラードをマンカバーしていたOLB55ウィリー・マクギネストは、WR83ブランドン・ストークリーと彼をマンカバーしていたNB38タイロン・プールに巻き込まれてポラードを放してしまっている。しかしマニングはプレッシャーを自ら感じてしまう。ディレイ気味で入ってきたLB54テディ・ブルースキはLG64リック・デマリングが確実にブロック。ところがマニングはそれを気にして左へ流れる。するとそこには外側から強引にラッシュしてくるDT93リチャード・シーモアが。ここでステップアップしさえすれば時間も稼げ、十分にオープンレシーバーを見つけることができたことだろう。
 しかしマニングはステップアップをせず、一瞬空いているかのように見えたポラードへ無理に投げてしまう。そしてそれを横で待っていた37ハリソンが割って入り、インターセプト。得点チャンスを自ら潰してしまった。
 ポラードは最初完全に空いていた。そして図中点線で示したように、ハリソンのいないほうに投げてさえいればタッチダウンは確実であった。しかしマニングはそれほどのプレッシャーではなかったにもかかわらず、妙に落ち着きのないやり方でボールをリリースし、インターセプトとなった。ここに現段階の彼の限界が見てとれる。つまり、ベリチックの率いるディフェンスに対してメンタルに負けているため、小さなことが大きく見えてしまっているのだ。これはゲームを通じて続く。
 ディフェンスにもらったボールをパッツオフェンスはじっくりと時間を使いながら進めていく。最初のサードダウンコンバージョンは、残りが3ヤードで、3ステップからのスラントを選択。
 コルツDは43からのゾーンブリッツを選択。右から2人のブリッツァーが入る代わりに、左サイドのDE93フリーニーがドロップする。
 パッツのRT68トム・アシュワースはカットブロックで、2人のパスラッシャーを刈りとる。ブレイディは、投げようとした瞬間に見えたフリーニーのドロップに対し、意識的に低いボールを投げた。フリーニーは手を挙げてボールをはたこうとするが、ボールはその脇の下を通ってブラウンへヒットした。
 僕はこのプレーに唸った。なぜならブレイディの考えていたことがよく伝わってきたからだ。それはターンオーバーを避ける、ということ。普通に投げていたならフリーニーがチップする可能性が高くなる。それゆえに低めに投げた。そして一瞬フリーニーの体でボールが見えなくなったにもかかわらず、ブラウンもそれに反応した。単なるサードダウンコンバージョンに見えたかもしれないが、このプレーはペイトリオッツというチームを象徴している。
 そしてランとパスをうまく織り交ぜながらパッツは歩みを止めない。第2Qに入った。ドライブは続く。
 コルツ陣13ヤードまで攻め込んだ第3ダウン7のシチュエーション。この前にもサードダウンコンバージョンを1度成功させており、このドライブ3回目となる。選択されたのは、ドローアクションから80ブラウンへのカール。ブレイディは珍しく判断ミスをして、NB25ニック・ハーパーによってきれいにカバーされているブラウンへ投げてしまった。ハーパーはブラウンの真正面に割って入り、簡単にインターセプト。ターンオーバーかと思われた。
 しかしここでまた信じられないことが起こった。ハーパーの背中側にいたブラウンが、ハーパーの手を叩き、ボールを弾き出してしまったのだ。これによりこのプレーは単なるパスインコンプリートとなった。そう、FG3点への望みをつなげたのだ。それをヴィナティエリが確実に成功させ、10−0。うーん・・・・・・。
 何を唸っているのかというと、訓練の徹底のされ方に、である。ここまで行き届いたチームを見たことがない。
 続くキックオフをコルツのリターナー33ドミニク・ローズが好リターン。コルツは自陣41ヤードからの攻撃となった。
 コルツは32ジェイムズのランが出ていたこともあり、マニングを助けるためもあってか、プレーアクションのロングアウトをコールした。
 パッツDは最初、37ハリソンがWR88マーヴィン・ハリソンの前にラインアップし、いかにもブリッツが入るかのように見せた。同時に左サイドのOLB50マイク・ブレイヴェルもスクリメージにクリープして、ブリッツをほのめめかした。そしてスナップの直前にハリソンは後ろに下がり、24のロウが前に上がってきた。通常のカバー2であった。
 マニングはジェイムズへのハンドオフのフェイクをした後、88ハリソンの空くのを待った。その間に93シーモアがプロテクションのために外側に広がりすぎた78タリク・グレン、64デマリングの内側を割って入り、マニングのバックサイドを襲う。それを感じ取って右へ流れたマニングは、カバー2であるから絶対に88ハリソンは空く、との確信を持ってボールを投げた。その確信の裏には、24ロウはFB36トム・ラピンスキのカバーに行っているだろうということもあったはずだ。
 しかし実際は異なった。マニングが流れ始めたのを見たロウは、ラピンスキをカバーするのではなく、一目散に後ろに下がりだしたのだ。逆にロウの中にはこういった時マニングは絶対にハリソンに投げるという確信があったのだろう。
 そして彼は右手を一杯に伸ばし、ボールをワンハンドキャッチした。インターセプト。あまりの光景に僕はまたもや唸って、そして絶句した。
 マニングはベリチックの元でのパッツに対して1勝4敗と振るわない。しかし数字的には62.1%のパス成功率、平均282.2ヤードのパス獲得ヤード、10TD/7INT、レイティング86.1と決して悪くはない。
 しかしこの日は惨憺たる有様だった。2Qにして2つのインターセプト。この折り返しの攻撃をパッツはFGに結び付けて13−0とした。ターンオーバーがらみの失点が6。
 コルツは何をやってもうまくいかない。続くドライブではダウンの更新を1度するも、97ジャーヴィス・グリーンのサックなどを受けて、自陣35ヤードでプレーオフ初となるパントに追い込まれた。
 これをロングスナッパー48ジャスティン・スノウがオーバースローしてしまう。パンターのハンター・スミスは落ち着いてそれをエンドゾーンから外側に蹴りだしたが、セーフティー。パッツは労せずして15−0としたのだ。
 流れなんていうものは、コルツの側には一度もこない。しかしディフェンスが奮起した。セーフティー後のパッツオフェンスの2プレー目、WR81ベセル・ジョンソンに決まったパスをNB25ハーパーがパンチアウト。それをCB27デイビッド・マクリンがリカバーしたのである。パッツ初のターンオーバー。
 パッツ陣41ヤードでボールを得たコルツであるが、2ミニッツに入ってから手痛い失敗が出た。というよりこれはパッツのディフェンスを誉めるべきか。
 エンドゾーンまで後一歩と迫った第2ダウン6の攻撃で、88ハリソンへのスラントが決まった。パッツのディフェンスは2人のDL、4人のLB、5人のDBという特殊なパーソネルでハリアップオフェンスに対抗していた。ここでは何の変哲もないカバー2。インサイドレシーバーがLBを後ろに引き下げ、空いたところにスラントが入ってくる。ハリソンへのパスはきれいにヒットし、それを確保してファーストダウンとなるはずであった。
 しかし37のハリソンが強烈な勢いでタックルに向かった。彼の狙っていたのは、88ハリソンの右腕に納まったボール。ヘルメットが丁度ボールを持った腕を強打し、そのままボールは地面に転がり出た。それを38プールがリカバーした。3つ目のターンオーバー。得点のチャンスをコルツは失った(図6)。
 後半はパッツのキックで開始。33ローズが再び好リターンを見せ、自陣49ヤードからの攻撃となる。
 コルツはこれまでのスタイルを変えて、パスを決めるための状況をセットアップするために、ラン中心のオフェンスに切り替えてきた。成功の方程式を捨て去るほどまでに、マニングもオフェンスコーディネーターのトム・ムーアも追い込まれていたということだろう。32ジェイムズと33ローズを交互に使いながら、パワーとスピードでボールを進めていく。4ダウン1のシチュエーションではマニングがベンチに、行くぞ、と意思表示をするシーンなどもあり、攻撃的になっている様子がよくわかる。
 12プレーのうち8プレーがラン。ラン獲得43ヤード、パス獲得9ヤード。これがこのドライブのスタッツである。そして2ダウンゴール2ヤードをジェイムズのランでタッチダウンとした。
 ただディフェンスの建て直しはうまくいっていない。というより落ち着いてやることができていない。Executionの問題ということだ。
 図7を見て頂こう。ツイン隊形に対して、ちょっと変わったアジャストをしている。日本ではお目にかからないが、アメリカでは結構一般的である。
 4-4のようにも見えるが、4-3の形は崩していない。ストロングLBの代わりを、SS20マイク・ドスと21ハリスの2人で務める。パスが来たならTEとFBの二人をこの2人でカバーする。
 一方のウィークサイドはスロットのブロックに勝てるようにOLBをラインアップする。パスはセーフティーを入れた3人で2人を守る、という仕組みである。
 プレーは32スミスのランフェイクからのパス。FBの31ラリー・センタースは言わずとしれたRBとして歴代1位のパスレシーブ記録保持者である。
 20ドスも21ハリスも開始と同時にTE88クリスチャン・フォーリエにあわせて後ろに下がる。しかしセンタースはほったらかし。これはおかしい。どちらかが彼のカバーの責任を持っているはずだ。
 ブレイディは後ろには投げられないことを確認し、すぐにセンタースへ。ドスが途中でスリップしていたこともあって、センタースはそのまま独走した。28ヤードゲイン。ただこのドライブもストールし、タッチダウンを奪えず。ヴィナティエリのFG3点に留まった。18−7。
 このプレーを先述のマニングのインターセプトと比較してもらうとよくわかるだろう。パッツのオフェンスは面白みのないオフェンスであるといわれるが、勝負どころが来るまで決して急ぎ過ぎないそのスタイルは、ヒロイックよりも勝つことに心を集中させている結果ではないだろうか。勝負事にはドラマも必要であるが、まずは勝たなくては始まらない。それを徹底していることがよく見てとれるプレーの1つと言えよう。
 コルツは3&アウト。
 続くパッツの攻撃。取って置きのプレーを繰り出した。それを図8に挙げた。
 このプレーには多くの仕掛けがある。まずDT96ジョシュ・ウィリアムスを浮かせたこと。DLは浮かされたら中を見ろ、と教えられている。ウィリアムスも果たして内側を見てHB82グラハムにブロックされた。
 またグラハムが逆方向にトラップすることで、カウンターであるとLB、DBに思わせることが出来たことも大きい。53マーカス・ワシントン、20ドスの動きを見て欲しい。2人ともカウンターがウィークサイドに来るかと思って、そちらに反応している。
 そしてOLがLBをブロックできている、ということも重要だ。いわゆるマッチアップで考えると、LBがOLのブロックを力勝負でブレイクすることは難しい。それはHBであるグラハムがDLをブロックしたことによって、OLが一人余ったことによる。こうしてコルツディフェンスは真っ二つに引き裂かれ、その間をワークホース32スミスが34ヤードのゲインにつなげたのである。このドライブもFGに結び付け21−7。
 いわゆるプレーの関連性ということからすると、唐突なような気もするが、こういった考え方もありだと思う。僕の好きなブロンコスのような連続性のオフェンスも素晴らしいが、ゲームの流れの中で、相手をもう一度混乱に陥れるようなキープレーを繰り出すことによって、ディフェンスにアジャストする手間を取らせるということもオフェンスとしては有効だからだ。
 この後24ロウによる2つ目のインターセプトがあり、逆にこのチャンスをブレイディ今季ホーム初となるインターセプトによって終えてしまう。
 残りは13分28秒。自陣20ヤードからの攻撃でコルツは14プレーのドライブを繰り出した。途中第4ダウンコンバージョンを成功させるが、またもやレッドゾーン間近でインターセプトを喫してしまう。
 この攻撃は第4ダウン13ヤード。その前の第3ダウン6でマニングがサックを喫した時に、88ハリソンのスクエアインを24ロウはトレイルテクニックで完璧にカバーしていた。そして次のダウンでロウはアウト系のルートを張っていたことだろう。
 そしてコルツはそれをコールした。カバー2マンが入っており、またしてもトレイルテクニックを使うロウは、外側へブレイクしたハリソンを見て自分も外側へブレイク。振り返った瞬間に飛んできていたボールをそのままキャッチし、この日3つ目のインターセプトを記録した。
 パッツが時間の消費を考え出しているのがわかる。ラン3回でパント。折り返しの攻撃では、長いパスを決めさせずに、短いパスでつながせるようにカバーを厚くするパッツ。コルツはその術中にはまり、大量の時間を消費しながらも、13プレーかけてタッチダウンを奪う。21−14。
 2ミニッツを目の前に、判断が問われるところ。コルツにはタイムアウトは3回全て残っている。しかしコルツはオンサイドを指示。残念ながらパッツのリカバーに終わる。
 しかし2ミニッツに入る前に3&アウトでパッツを食い止め、パント。2分1秒を残して、自陣20ヤードから1プレーだけ行ってブレイクに入った。
 ブレイクの後、3つのプレーを試みるが、スクリーンを読まれ、またパスは3メンラッシュカバー2マンによってシャットアウトされる。
 パッツはここからの攻撃を3回のランで終え、FG。これをヴィナティエリが再び成功させ、24−14。ほぼ勝負は決した。
 最後は第4ダウン10の攻撃でマニングはWR86トロイ・ウォルターズにパスを通すものの、彼は外に出ることを急ぎすぎて、第1ダウンをとることを忘れてしまっていた。そのため第4ダウンコンバージョン失敗となり、ターンオーバー。
 これによりパッツのスーパーボウル返り咲きが決定した。


第38回スーパーボウルでパンサーズと対戦するペイトリオッツ
 この原稿の頭でも指摘したように、マニングは稀に見る秀才である。彼は一度したミスは必ず修正してくる。だから来期の彼には間違いなく期待が持てるだろう。
 ただ決して天才ではない。だから必ず学んでいない場面ではミスを犯す。それがこのゲームを失わせる結果となった。
 またマニングのフィールドジェネラルとしての能力を過度に生かそうとしたこともまた失敗の原因だったと思われる。強いディフェンスを相手には、やはりコーチングスタッフによるプレーコールへの強力なコミットが必要だったのではないか。
 一方のブレイディ、またしてもプレーオフで勝ってしまった。これで彼はプレーオフで負けなし。全勝である。後はスーパーボウルを制覇すれば、そのパーフェクトレコードはこれからも続く。
 そしてその可能性は大いにあると僕は考える。ブレイディは、QBがチームの一員であることを改めて思い出させてくれる。QBは特別で、リーダーであり、スターでなくてはならない、といったこれまでの通念を彼は自身の存在で否定し続ける。
 究極までオフェンスの駒に徹することで、プランを実現していく姿には、『豪胆な職人』という言葉がぴったりくるとは思わないだろうか。稀有な胆力を持ち、いつどんなときでも仕事をやりおおせる。彼はまたしても仕事をやり切ったので
ある。

back number
第13回 エクスキューションとアウトコーチング
〜AFCチャンピオンシップ ニューイングランド・ペイトリオッツ×インディアナポリス・コルツ戦〜
第12回 『TAMPA 2』を攻略するためのジャイアンツ・ゲームプランがいかに崩れたか
〜第12週 ニューヨーク・ジャイアンツ×タンパベイ・バッカニアーズ戦〜
第11回 我慢が呼ぶ勝機
〜第3週 キャロライナ・パンサーズ×ミネソタ・ヴァイキングス戦〜
第10回 デンヴァー・ブロンコスオフェンスの凄み
〜第14週 カンザスシティ・チーフス×デンヴァー・ブロンコス戦〜
第9回 全勝チーフスを破ったベンガルズのゲームプラン
〜第11週 カンザスシティ・チーフス×シンシナティ・ベンガルズ戦〜
第8回 スターQBファーヴから勝利を奪ったジェッツ・ディフェンス
〜第17週 ニューヨーク・ジェッツ×グリーンベイ・パッカーズ戦〜
第7回 フロックではなかったトム・ブレイディのクォーターバッキング
〜第14週 ニューイングランド・ペイトリオッツ×バッファロー・ビルズ戦〜
第6回 準備の大切さとゲーム中の判断の難しさ
〜第10週 サンフランシスコ49ers×カンザスシティ・チーフス戦〜
第5回 スーパーボウルでのバックス勝利を用意したドルフィンズのゲームプラン
第4回 カウワー、フィッシャー両ヘッドコーチの率いる2チームのハイレベルな戦い
〜ピッツバーグ・スティーラーズ対テネシー・タイタンズ〜[2002年度・プレイオフ第2ラウンド]
第3回 明暗を分けたプレイアクション・パスへの道
〜NYジェッツ対インディアナポリス・コルツ〜[プレイオフ第1ラウンド]
第2回 第13週、ニューオリンズ・セインツ対タンパベイ・バッカニアーズキープレイ解説
第1回
サンディエゴ・チャージャーズの戦略

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