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NFL Report Japan


このコーナーではXリーグのファイニーズ・フットボールクラブHCで「GAORA」のNFL解説でもお馴染みの村田斉潔が、NFLチームの様々な戦術や試合のキープレイを専門的に解説します。どうぞお楽しみに!!

第1回 サンディエゴ・チャージャーズの戦略
 
ショッテンハイマーHCは己の信ずる戦術を駆使してチャージャーズを勝利に導く
 今年のチャージャーズの躍進を誰が予想しただろうか。
 
実は僕は予想していた。ご存知のとおり僕が解説者を務める『GAORA』の放送中に、何度となく今年のチャージャーズは強いと言ってきた。
 
その論拠となったのは、ラデイニアン・トムリンソンの存在でもドリュー・ブリーズの成長でもなく、GMジョン・バトラーの存在とHCマーティ・ショッテンハイマーの就任であった。

 FA、ドラフトとチーム強化において、それこそノーナンセンスな手腕を見せてきたバトラーが、ノーナンセンスの代名詞とも言うべきショッテンハイマーを最後の1ピースとして連れてきたのだから、このチームは間違いなく強くなる、そう確信した。

 案の定、ショッテンハイマーはチーフス時代の子飼いの選手(LBドニー・エドワーズ、PRタマリック・バノーバー)、そしてわずか1年という短期に終わったが、昨年コーチとして在籍したレッドスキンズの選手(TEスティーヴン・アレキザンダー)を加えて、確実に戦力の強化を行った。ある面、強化というよりバランスアップした、と言った方がいいかもしれない。

 そしてこれらはすべてペイした。今回取り上げるのは、10月20日(第7週)にオークランドの地元で行われたレイダース戦のプレイであるが、それまでの戦績が5勝1敗。同ディビジョンの宿敵ブロンコスには完敗したが、このゲームの前週では、爆発的な攻撃力を誇るチーフスを相手に、第4Qにブリーズがカムバックウィン(逆転勝ち)を指揮するなど、その強さが本物であることを示してきた。

 そしてレイダースとの対戦、である。チーフス時代からレイダースをカモにしてきたショッテンハイマーだが、このゲームにはそれを含めてたくさんの興味が伴った。

1.チーフスではなくチャージャーズのHCとなって、その神通力は今でも通じるのか?
2.シーズン1か月が経過した時点で、最も攻撃力に溢れるチームを相手に負傷者続出のディフェンスでどのように対処するのか?
3.ルーキーが並んだインサイドのOLがジョン・パレーラ、サム・アダムズといった重量級DLをどのようにブロックするのか?
4.ブロッキングTEを欠いた状態で、これまたサイズに溢れるDEをどのようにコントロールするのか? 

 以上のことが、このゲームに先立ち僕の心を捉えていた。
 もちろんこの項ですべてを語り尽くす紙幅もないことから、ここでは一番最後のTEとDEの不利なマッチアップの解決に向けたストラテジー(戦略)について述べていきたい。

 チャージャーズの、というよりショッテンハイマーの基本は、ランを出す、プレイアクションを決める、パスにおいて確実性を最上位に置く、ということである。

 幸い彼の就任以前に、バトラーによって必要な駒は揃えられていた。スピード派のWRカーティス・コンウェイ、リバース要員としても有用なティム・ドワイト、そして2年目にしてリーグのトップRBの一人となったトムリンソン、その同期でパデュー大学時代数々の記録を塗り替えたスターター1年目のパサー、ブリーズである。

 しかしこの日の問題は、ランブロックにおいてもプレイアクションにおいても、重要な役割を果たすべきTEのスターター、バックアップが負傷欠場するということであった。

 スターターにはレッドスキンズから移籍のアレキザンダー、そしてバックアップにはFAルーキーのジョシュ・ノーマンがいるが、両者ともこのゲームを前に故障を抱えていた。

 チャージャーズはそれでもランを出さなくてはならない。しかし第3TEのジャスティン・ピールはレシービングTEに過ぎず、特にレイダースの大型DEデローレンス・グラント、トニー・ブライアント、トレイス・アームストロングにマッチアップさせるには、あまりに非力である。

 確かにロスター上では、ピールはアレキザンダーやノーマンより大型であるかのように書かれているが、明らかに体重に関してはサバを読んでいる。100歩譲ってそのとおりとしても、レイダースDE陣とは10キロ以上の体重差があった(実際は15〜20キロの差はあるだろう)。

 実際、第2Q開始直後にブライアントとマッチアップした際には軽々とブロックをかわされ、トムリンソンは走るコースを失ってしまった。そこで【図1】なのである。
 このプレイはレイダースのKジャニコウスキーがFGを外した直後のチャージャーズの第1プレイである。レイダースは、イーグルディフェンスにストロングサイドLBがTEをマンツーマンしながら第1列に上がるといういわゆる『46』ディフェンスばりのスキームで臨んだ。

 チャージャーズが選択したのは、パワーオフタックルをアレンジしたプレイである。大型DT(95)のサム・アダムスをルーキーの大型RG(71)トニウー・フォノーティとRT(70)ヴォーン・パーカーがダブルチームで押し込み、そのままフォノーティがMLB(58)ナポレオン・ハリスに抜けていく。TE(84)ピールはDE(99)グラントをブロックに向かう。グラントは自分の内側にSLB(50)エリック・バートンがいるので、外側を守るだけに留まる。バートンはTEがブロックダウンしたことをみてから(44)フレッド・マクレイリーに当たるが、マンツーマンのため少し遅れてしまう。そのバートンとダブルチームで押し込まれたアダムズの間をバックサイドOGのボブ・ハレンが切れ上がり、セーフティへ向かうのである。

 ここではあまり大きな役割を果たしていないかに見えるWR(85)ドワイトのインサイドモーションがこの後大きな意味を持ってくることになることは、レイダースのDEたちはまだ気づいていない。

 チャージャーズはこのプレイで9ヤードゲインするが、結局この攻撃はパントに終わる。

 続くレイダースの攻撃は第2Qにまたがる長いドライブとなったが、何とゴール前でショベルパスをチャージャーズLBエドワーズにインターセプトされてしまう。そして双方が「スリー&アウト(3回の攻撃で終了)」でパントを蹴りあった後のプレイが【図2】である。
 このプレイにはチャージャーズのプレイコールがレイダースディフェンスに先んじていることがはっきり見て取れる。

 レイダースの狙いは、ストロングサイドのCギャップ(オフタックル)ばかりを攻められていることに対して、そのスキームを潰すためのオーバーロードブリッツであった。DE(75)クリス・クーパーを外側にスラントさせ、一方LB(58)ハリスにガードの内側を攻めさせる。それぞれをT(77)マッキントッシュとG(62)ハレンをピックアップすることによって、クロスで入ってきたLB(50)バートンがフリーでアップフィールドに侵入し、ロスタックルを決めるというのがシナリオであった。

 ところがチャージャーズはフォーメーションを変え、TEのいないサイドのWR(85)ドワイトがモーションし、そのままDE(93)アームストロングをクラックバックブロック。OT(70)パーカーが外側にプルアウトしCB(31)ビュキャナンをブロックに向かい、インサイドレシーバーの(80)コンウェイが自分の前に上がってきたS(26)ロッド・ウッドソンを外側に押し出す。その結果アームストロングとウッドソンの間がきれいに開き、外側に引っ張ってから思い切って切れ上がったトムリンソンがファーストダウンを獲得したのである。

 もしレイダースがブリッツを入れていなかったらノーゲインに終わったプレイであったかもしれない。しかしビッグプレイを狙いブリッツをストロングサイドに入れた結果、その裏をかかれてしまった。

 そしてこのドワイトのクラックバックブロックがこのゲームを最後まで支配することになる。それがこのプレイに続く【図3】のプレイにも顕れている。
 このプレイはリバースで窮地を乗り越えた後に、続けてファーストダウンを更新した時のプレイである。レイダースは【図1】と同様にバートンをTEにマンツーマンさせた。当然DE(99)グラントは外側に対し、責任を与えられている。しかしそこにWR(85)ドワイトがモーションしてきた。外側を守らなくてはならない選手にとっては、気が気でない状況である。

 そこでグラントはプレイ開始と同時に大きく外側に踏み出し、クラックバックに備えた。それと同時に彼をブロックする役であるTE(84)ピールも大きく外側に動くことになった。LB(50)バートンはそのピールをマンツーマンしている。それゆえバートンも大きく外側にステップした。その結果、Cギャップが大きく開くことになった。

 S(36)ギブソンが慌てて縦に上がる。バックサイドからはLB(53)ロマノウスキーが急いでパシュートする。(62)ハレンはすれ違いになって誰もブロックすることはなかったが、トムリンソンが大きく空いた穴をアドバンテージにカットバック一閃、2人をアウトオブプレイにして、10ヤードをゲイン。敵陣13ヤードまでボールを進めた。

 チャージャーズはこの3プレイ後に、ショットガンからブリーズがルーキーWR(82)レシェイ・コールドウェルにTDパスを決め、このゲーム初の得点を記録。あまりの予想外の展開に、レイダースの地元ネットワーク・アソシエイツスタジアムのファンも、言葉を失った瞬間だった。

 結局このままレイダースが自慢の攻撃力を爆発させることはなかった。何とかオーバータイムに持ち込んだが、結局コイントスに勝ったチャージャーズがそのまま第3ダウンコンバージョンを2回成功させて得点圏まで進め、集中力の切れたディフェンスを掻き分けて、トムリンソンがパワーオフタックルからTDを記録。チャージャーズの勝利となった。

 「ノーナンセンス」、「コンサーバティブ」…いろいろとショッテンハイマーを評する言葉はあるが、面白味のないコーチングだ何てとんでもない。こんなに細部に渡って知恵を絞っているショッテンハイマーのフットボールは、今一番熱いのである。

村田斉潔(むらたただゆき)Xリーグウェスト、ファイニーズ・フットボールクラブHC。関西学生リーグディビジョン・龍谷大学シーホースHC。1966年、愛知県東海市生まれ。1986年京都大学入学後フットボールを始める。86、87年と同チームのスターターLBとして日本選手権2連覇。91年よりサンスター・ファイニーズ(当時)に参加。91、93年チームを西日本制覇に導き、東京スーパーボウル出場。西日本社会人リーグMVP。97年よりヘッドコーチに就任、現在に至るが、その間チームはスポンサー契約が終了し、自主運営を経て、NPO法人ファイニーズ・フットボールクラブを立ち上げる。現在はHC業の傍ら、『GAORA』のNFLゲーム解説、また『アメリカン・フットボールマガジン』などの雑誌、新聞等などに寄稿。

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