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NFL Report Japan


第11回
我慢が呼ぶ勝機
〜第3週 キャロライナ・パンサーズ×ミネソタ・ヴァイキングス戦〜
 
昨シーズンの第3戦、パンサーズ対ヴァイキングス
今シーズンのパンサーズ快進撃の基礎は昨シーズン築かれた
 昨年の開幕ダッシュで世間を賑わせたチームの一つにキャロライナ・パンサーズがある。ヘッドコーチをジョージ・シーファートからジョン・フォックスに代えたことが吉と出たのか、3連勝を記録し、エキスパンション2年目にしてNFCチャンピオンシップに駒を進めた96年の再来か、と大きな希望をもたせた。
 前任のシーファートは言わずと知れたサンフランシスコ49ersの名将。在任中に2度のスーパーボウル制覇を成し遂げている。一方後任となったフォックスは、元ニューヨーク・ジャイアンツのディフェンシヴ・コーディネーター。2000年のスーパーボウルでは、ボルティモア・レイヴァンズに大敗するが、それでもマイケル・ストレイハンやジェイソン・シーホーン、マイク・バーロウ、ジェシー・アームステッドら錚々たるメンバーを率いた強力ディフェンス構築の立役者として、一気に評価を高めた。
 しかし2002年シーズンの開幕戦には、「?」がついて回った。エースQBにフロリダ州立大を全米1位に導いた実績を持つクリス・ウィンキではなく、NFLに入り14年目を迎えたジャーニーマン、ロドニー・ピートを据えていたからだ。
 もちろんピート自身は、南カリフォルニア大学時代にオールアメリカのファーストチームに選出されたり、ハイズマン賞の候補に挙げられたりと輝かしい経歴を持っている。しかしデトロイトを皮切りにダラス、フィラデルフィア、ワシントン、オークランドと渡り歩いてきたという事実は、エースQBには何かが足りないということを物語っている。
 そのピートがスターターとなっていたのである。そして緒戦のレイヴァンズ戦こそ10-7と辛勝したにすぎなかったが、第2週の古巣デトロイト・ライオンズ戦には、驚くなかれ、ピートは32回中21回のパス成功、トータル310ヤード、インターセプト0、レイティングでは驚異的な107,6のパフォーマンスをやってのけたのだ。チームも31-7と攻守の噛み合った大勝を成し遂げ、フォックス効果を存分に発揮した形となった。

 一方のミネソタ・ヴァイキングスは、QBに若手の成長株ダンテ・カルペッパーを擁し、WRには現在のNFLで並ぶ者のないアスリートといわれるランディー・モス、そしてエースRBにはNFL最速のマイケル・ベネットを揃えたハイパーオフェンスが売りのチーム。ただディフェンスの出入りが激しいことから、勝ち星を揃えることに苦労しているチームである。
2002年はDTジョン・ランドルを失い、その結果、弱体化したパスラッシュを再構築するためにランス・ジョンストーン、ケニー・ミクソン、ロレンゾ・ブロメールを補強したところだった。インサイドには若手白人DTとしては出色のクリス・ホーヴァン、MLBにオークランド・レイダースからグレッグ・ビーカート、OLBにヘンリ・クロケットと、フロント7はかなりの充実度である。
しかし問題はDBにあった。前半を優位に攻めながら、結局WRマーティー・ブッカ−に198ヤードのビッグゲームを許し、逆転負けを喫した緒戦シカゴ・ベアーズ戦(パスの喪失ヤードで297ヤード)。移籍したばかりのドリュー・ブレッドソウ率いるバッファロー・ビルズとの乱打戦において、437ヤードのパス獲得ヤーデージを許し、オーバータイムまでもつれこんで45-39で敗れ去った第2戦。
いずれのゲームもパスディフェンスに大きな課題があることを示していた。

 さて、そういった前振りがあっての第3戦。2勝中のパンサーズと2連敗中のヴァイキングスが対戦することになったのである。この時点でパンサーズのターンオーバーはゼロ、一方のヴァイキングスは何と6つを記録している。
ゲームはヴァイキングスのキックオフによって開始された。
パンサーズの攻撃は、静かにしかし確実性をもって進められる。エースRBとなったラマ−・スミスを軸にし、エンプティバックのフォーメーションでミスマッチを生み出したりしながら、コツコツと。しかし結局ハーフラインで攻撃はストール。サウアーブランのパントとなった。
一方ヴァイキングスの攻撃、いきなり24ヤードのベネットへのスクリーンパスから始まった。パンサーズの強力DLの勢いを殺ぐためのプレイコールであったが、しかしこのシリーズにおいても、2度にわたるファンブルを記録するなど、懸案だったボールセキュリティがいまだ解決されていないことが浮き彫りとなった。さらにルースなカバー2で守るパンサーズの奥に走りこんだモスを狙ったパスは、Sマイク・ミンターによってインターセプト。パスのうち40%をモスに集めることを公言していることが裏目に出、このゲームを通じてモスは終始厳しいダブルカバーに遭うことになった。
幸い折り返しの攻撃をパンサーズはFGのミスによって終えることになり、自責点は発生しなかった。ただこのシリーズで忘れてはならないのは、第3ダウン15ヤードを含めるサードダウンシチュエーションを2度にわたり成功されたことである。この後の展開の中でもロングシチュエーションを何度かに渡りクリアされてしまい、パスディフェンスの脆さが露呈してしまった。
続くヴァイキングスの攻撃もまたもやインターセプトで終了。今回はカバー2シームを忠実に実行したLB(55)ダン・モーガンが邪魔になり、モスへ投じたパスが浮いてしまった。それをSディオン・グラントが奪い取ったのだ。
しかし3プレイ後には、CBに入っていたコーリー・チェイヴァスがインターセプトのお返しをし、このシチュエーションにおいても事なきを得た。加えて33ヤードもリターンし、パンサーズ陣17ヤードからの攻撃権を得ることになった。
これをベネットのバックアップであるモー・ウィリアムスが迫力のランで進め、最後はベネットが11ヤードを飛び込み、先制のタッチダウンとした。
この後ゲームが膠着する。両者ともランが思うように出ず、またパスを投じようとしても互いにラッシュがきつくて投げられない。
結局前半は7-0。ヴァイキングスリードのまま折り返した。

後半はヴァイキングスの攻撃によって開始された。ダブルカバーによって思うようにディープを攻められないことから、短いパスをモスに決めることからスタートした。狙いは正しい。ダブルカバーをするならば、他のレシーバーがシングルカバーになりやすく、またダブルカバーをしていても、ショートのパス、またクロス系のルートにはあまり効果がないからだ。
しかし同時に忘れてはならないことは、パンサーズが実はディフェンス主導のチームであるということだ。パスラッシュがきつい。特に2002年ドラフト1巡獲得のジュリアス・ペッパーズ、そして4年目となるマイケル・ラッカーの両DEはとてつもなく厄介な存在だった。
折角アジャストメントをしたにもかかわらず、このシリーズは2連続サックで幕を閉じる。特に2つ目のサックの際にはスクランブルに出たカルペッパーが誰にも触れられることなく一人でボールをこぼすなど、ボールへの意識が低いことを如実に示すプレイとなった。
その後数プレイで攻撃権が交代しながら、決定的な瞬間を迎える。自陣12ヤードから第2ダウン9のヴァイキングスの攻撃。カバーがきついことを承知していながら、またもやモスにミドルレンジのパスを試みた。LBが邪魔で浮いたボールをモスはワンハンドでキャッチしようと試み、上にはじいてしまう。それをグラントがこの日2つ目となるインターセプト。リターンはなかったが、ヴァイキングス陣28ヤードからの攻撃を許すことになった(図1)。
 カルペッパーもイラついてきていた。サイドラインに戻ってから、ヘルメットを振り回し、モスの背中越しから罵倒する言葉を投げかけたのだ。
内容はわからないが、両手を出していれば、とか、少なくともボールを上に弾かなければ、ということが考えられる状況だったので、カルペッパーの怒りは頷ける。もちろんその中には、40%をモスに集めるなどという馬鹿な公約をしてしまったコーチ陣に対する苛立ちも含まれていたことだろう。
後悔先に立たず。この2プレイ後にはパンサーズによってタッチダウンが記録されたのである。ピートからスティーヴ・スミスへの14ヤードTDパス。7-7。
事態を打開しようとするヴァイキングスは、この日初めて見せるフォーメーションからのプレイを試みるが成果なし。セーフティバルヴから投げたM・ウィリアムスへのパスが20ヤードのゲインとなったりもしたが、結局パントに終わる。
一方のパンサーズ、派手なプレイは一切行ってこなかったが、その代わり風向きが変わるのを待っていたかのように、この好機につけこんでいく。L・スミスによるランが6ヤード、9ヤードと続き、ニック・ゴーイングスのランをはさんで(85)ウェズリー・ウォールズへのネイキッドからのパスで20ヤード。コメンテーターのティム・ライアンが絶賛したのは、ピートのランからのパスの正確さだった。
そして図2に挙げたのが、続くプレイである。かなりソフトに守っているヴァイキングスのパスディフェンスを効果的に攻めることで32ヤードゲイン、ヴァイキングス陣12ヤードまで攻め込んだ。
 このプレイでヴァイキングスは3ディープのカバレッジを選択している。33ディープに対してはディープパスは難しい、と考えられるが、実はそうではない。3ディープにも2ディープ同様間違いなくシーム(隙間)は存在しており、レシーバーがクレバーに走り、QBがボールの落としどころ間違いさえしなければ、2ディープに負けず劣らず攻めきることができる。誤解を恐れずに言うならば、アンダーニースでDBによるジャムに遭うことがない分、レシーバーとしては思ったように走ることができるため、3ディープに対してもディープは狙うべき、と僕は考える。
このプレイにおいても、WR(89)S・スミスはCBチェイヴァスに対し縦へのプレッシャーとわずかながら外側へのプレッシャーを与えながら走った。チェイヴァスはディープであることの確認をとると同時にバックペダルから体を開きサイドラインに対し背を向け、スミスをコンテインした。
しかしそれがスミスの狙いだった。チェイヴァスをわずかながら外側に追い出し、セーフティー(26)ロニ−・ブラッドフォードとの間にスペースを作り出すことができたからだ。スミスのコースはスキニ−ポスト。ピートは狙い通りにブラッドフォードの届かない場所にボールを落とし、それをスミスはスライディングキャッチ。32ヤードのゲインとなったのである。
そして続くプレイで、L・スミスは易々と12ヤードを走りきり、逆転のTDを奪った(図3)。
 このプレイでは、勢いがあり思い切りのいいヴァイキングス守備陣が裏目に出た。同点TDの時には直前にカウンターを繰り出し、それが反応の早いMLBビーカートのギャンブル性の高いリアクションを引き出し、14ヤードのゲインを奪ったが、ここでもビーカートはギャンブルをしてしまっている。
通常のリアクションであるならば、ソロタックルとなるようなシチュエーション、ビーカートは何とコンボブロックの内側に突っ込み、簡単にシールされてしまったのである。
バックサイドを守るLB(56)ジム・ネルソンが追いつかないのはある面仕方がない。なぜならSブラッドフォードがFB(45)ブラッド・フーヴァーの動きにオーバーリアクトし、外側に流れすぎた結果、L・スミスが自由に走るスペースを与えてしまったからだ。
いずれにしてもチャンスの到来をじっくりと待ち、それが訪れたときには一気に攻めるというパンサーズのゲームプランが生きた瞬間だった。
この後パンサーズが先に加点し21-7。勝負あったかに思われた。しかしショットガンからの攻撃を始めたヴァイキングスが、第2レシーバーのドゥエイン・ベイツ、第3レシーバーのデレク・アレキサンダー、そしてこの日大活躍だったM・ウィリアムスへのパスなどで順調にドライブし、最後はスペシャルチーマーとしてすでに名を成したWRスティーヴ・ウォルシュに4ヤードのパスを決め、1本差にまで追い上げた。
続く攻撃をパンサーズが3&アウトで終えたことから、ゲームの行方は見えなくなった。残り2分16秒でヴァイキングスが自陣22ヤードからの攻撃権を手にしたのだ。
しかしアレギザンダーに投げたパスは(23)レジ−・ハワードによってカットされ、続く2回のパスをモスに投げ、1回成功3ヤードゲインに終わった。ギャンブルプレイでは投げられないと見るやカルペッパーはスクランブルし、それも1ヤードのゲインに終わってしまった。
万事休す。ボールオンはヴァイキングス陣の26ヤード。FGが決まれば終わり。その前に時間がなくなるかもしれない。
ところが、である。パンサーズのKヒルバーとがこの日2度目となるFGのミスをしたのである。
残り4秒で攻撃権を得たヴァイキングスは、当然のことながらヘイル&メアリーのパスを試みた。しかしボールはグラントの腕に収まり、彼はこの日3つ目のインターセプトを記録したのである。

ディフェンスが強いとこういった戦い方ができる、ということをパンサーズは見せてくれた。奇をてらうことなく、じっくりとできることを積み上げ、そしてチャンスは必ずものにする。その集積がポストシーズンへの道を開くのだ、という意志が感じられるゲームだった。
残念なことに7勝9敗という成績しか残せなかったが、リーグ2位のディフェンスを構築できたことは、フォックスにとって自信となったに違いない。今年はRBに元ワシントン・レッドスキンズのスティーヴン・デイヴィスを加えた。もう一歩先に進めたゲーム展開が見られることだろう。
しかし勝ち方がジャイアンツそのものだな、という感じがしたのは僕だけだろうか。周到というよりも、我慢比べに勝つゲーム運び。胃の痛くなるプランではあるが、玄人好みというやつかもしれない。僕は遠慮したいけど・・・。

back number
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