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第2回 第13週、ニューオリンズ・セインツ対タンパベイ・バッカニアーズキープレイ解説
 
この日、27キャリーで99ヤードを走ったセインツRBデュース・マカリスター
 NFLも終盤戦に入ってきた。そろそろプレイオフピクチャーなどが話題の中心をさらっていく時期である。

 特にサンクスギヴィングデイとなる13週はワイルドカードを狙う各チームにとっては必勝を期したゲームが目白押しで、僕にとっても興味の尽きない週であった。

 サンディエゴ・チャージャーズ×デンヴァー・ブロンコス、NYジェッツ×オークランド・レイダース、フィラデルフィア・イーグルス×セントルイス・ラムズ、マイアミ・ドルフィンズ×バッファロー・ビルズ、テネシー・タイタンズ×NYジャイアンツ、ピッツバーグ・スティーラーズ×ジャクソンヴィル・ジャグワーズ。

 どれもこれもディヴィジョンの首位がかかっていたり、ワイルドカードがかかっていたりの好ゲームばかりだった。

バックスRBマイケル・ピットマンをセインツDが追い詰める
 しかし実は最も楽しみにしていたのが、今回とりあげることにしたニューオリンズ・セインツとタンパベイ・パッカニアーズの一戦であった。

 なぜかと言うと、
○ NFCサウスというディヴィジョンがファルコンズを含めて三つ巴となっていること
○ この時点で首位を走るバックスにとっては、翌週にファルコンズとの直接対決を控えているために、このゲームの勝敗が大きな影響をもつことになること
○ 個人的に好きなセインツQBブルックスがどのようにリーグ#1のバックス・ディフェンスに対抗していくのかに興味があったことというようなことが僕の頭にあったからだ。

 よって今回の原稿では、セインツオフェンス対バックスディフェンスに注目して、特にサードダウンの攻防を中心に、キープレイを追っていきたいと思う。ちょっと長い原稿になるので、休み休み読んで頂いたら、と思う。

 ゲームはセインツのホーム、ルイジアナスーパードームで開始された。昨年ちょうどスーパーボウルが開催された場所でもあることから、日本のファンにも比較的馴染みの深い場所かもしれない。

 キックオフはセインツ。TB陣18ヤードからの最初のシリーズ。5回連続でパスを試みたバックスであるが、1回のダウンの更新をしただけで、その正に5プレイ目に、セインツのルーキーDEチャールズ・グラントがQBブラッド・ジョンソンをサック。ファンブルをLBチャーリー・クレモンズがリカバーするという、荒れ模様でスタートした。

 TB陣29ヤードと言う絶好のポジションを得たセインツであるが、最初のプレイは左サイドにパワーオフタックル。そしてセカンドダウンで7ヤードを残し、QBアーロン・ブルックスからエースWRジョー・ホーンへクイックヒッチが投げられた。バックスDはSS(47)ジョン・リンチをボックスの中に入れた8メンフロントであったため、CB(25)ブライアン・ケリーはかなり深くにセットしていた。そのためキャッチしてからのランが期待されたが、何とケリーはホーンが捕るや否やすぐにタックル。わずか2ヤードのゲインに留めたのである。

 まさしくこれがバックスD。並大抵の攻撃では崩すことは至難の技であろう。

 ただ、セインツも考えに考えて準備をしてきた。サードダウンで4ヤードを残し、セインツオフェンスがコールしたのが【図1】に示したプレイである。
 いわゆる4WRセットをとったセインツに対し、バックスDは中央を大きく空けた隊形を取った。残りは5ヤード、ということを考えるとちょっと極端なシフトだな、という感じがした。

 案の定セインツQB(2)ブルックスはオーディブルコールを出し、プレイを中央のトラップに変更。パスラッシュしか考えていないDLは簡単に処理され(99ウォーレン・サップは68カイル・ターリーにカットブロックされ躓いていた)、エースRB(26)デュース・マカリスターは9ヤードをゲインし、易々とファーストダウンを獲得した。

 続くファーストダウンのプレイは3ステップからのスラントパス。これは失敗。セカンドダウンのプレイはプレイアクション。プロテクションは比較的よく持っていたが、ブルックスの動きによってラッシュのコースを変えたDL(97)シミオン・ライスにサックを受けた。ただしロスはわずか1ヤード。これは救いであったと言えるだろう。

 そして【図2】となる。セインツはサードダウン11ヤードをブルックスのネイキッドからのラン/パスオプションで乗り切ろうとした。これはスピードを身上とするライスを引っ掛けるためのプレイで、これによってライスにいろいろ考えさせることができればスタートが鈍るだろう、ということを狙ったものであったと言える。
 通常ロールアウト系のプレイ、ネイキッド系のプレイと言うのは、QBが右投げである場合、右へ動かすことが原則となる。なぜなら左に走った場合、投げる前に体の向きを戻してやる必要が出てくるため、時間がその分余計にかかり、その結果プレッシャーを受けやすいからである。

 しかしセインツはあえて左へのネイキッドを選択した。そこには(97)ライスのスピードをスローダウンさせることがその後のゲームの展開にとって必要である、というセインツの意志が読み取れるである。

 しかし結果は思わぬことになった。ライスは一旦フェイクバックの(26)マカリスターに興味を示すが、すぐに(2)ブルックスに視線を合わせ、彼がボールを持っていることを確認してから猛然とラッシュをかけた。先述の通り、左へのロールは右投げのQBには辛い。体の向きを変えようとする間にライスはブルックスに近づき、慌てて逃げ始めた彼を後ろから引きずり倒してしまったのである。

 結果は14ヤードのロス。ダウン更新を諦め、FGに落ち着いた。しかしKジョン・カーニーがこれを外してしまう。痛い失態であった。

 ここで紙幅を取ってしまうが、このシリーズを整理してみよう。

 コールを順番に並べてみる。
1. パワーオフタックル(左)
2. 1ステップからのクイック・ヒッチ
3. トラップ(オーディブル)
4. 3ステップからのスラントパス
5. プレイアクション
6. ネイキッド

 一般に強力DLを止める、もしくは無力化するためには、
1'.ランプレイをパスラッシャーに向けてぶち当てる
2'.ダブルチームやトラップブロックを使う
3'.スクリーン、ドロー
4'.クイックなパッシングゲーム(1ステップ、3ステップ)
5'.プレイアクション
6'.スプリント/ネイキッド(ブーツレッグ)
7'.エクストラブロッカーを使う(この場合プロテクションの人数を増やす)

 などのような考え方をするが、正に上記の6プレイにはこれらが満載されていた。それほどまでにライス、そしてサップを止めることがこのゲームの行方を大きく握っていたわけである。

 パントを蹴りあった後のセインツの攻撃は、リターン中の反則のために自陣奥深く8ヤードからの攻撃となった。

 ここでセインツは上記4'のクイックなパッシングゲームに活路を見出そうとする。1ダウンで3ステップからホーンへクイックフライを投じたのである。ホーンはケリーを抜き去り、キャッチしたかに見えたが、これを落球。『たら、れば』は禁物ではあるが、これが決まっていたら、随分と展開は楽になっていたかもしれない。

 セカンドダウンはラン。わずか2ヤードのゲイン。そして【図3】に示したプレイとなる。
 バックスはここで単純な4メンラッシュを選択した。テレビの画面上詳しいカバレッジは読み取れないが、恐らくカバーはルースなカバー2マンだったと思われる。

 CBとニッケルバックはルースに守りながら、浅いパスは捕らせてタックルをする。それよりもファーストダウンでやられかけたような失態は許さない。そんな意図のあったデイフェンスであった。

 フロント4はオフェンスから見て左に全員がスラント。人数的には問題のないラッシュと言えるが、この動きが実はセインツにとっては致命傷となった。セインツの左サイド、つまりブルックスのブラインドサイドを守るのは、今季よりLTへコンバートされた(68)ターリーとLG(64)ケンディル・ジェイコックス。その2人のところへ(97)ライスと(99)サップがともに流れてきたのである。

 ライスのスピードを考えると、このゲームを通じてターリーはなかなかいいプロテクションをしていたと僕は見るが、決して100点であったわけではないし、何とか縦に押し切ってやり過ごしていた、という感じだった。そこにサップが猛然と突っ込んでくる。しかしジェイコックスとともにそれも流しきれば、と思った瞬間、何とブルックスが後ろにステップバックしてきたのである。

 まるで自分からライスに吸い込まれるような感じであった。ライスは目の前に近づいてきた獲物の右腕を叩き、ボールを弾き出した。そしてそれはエンドラインを越えてフィールド外へ転がっていき、セーフティとなってしまったのである。

 解説者のジョー・サイズマンが言っていた。「ブルックスは、あのような状況ではステップアップせずに後ろに下がる悪い癖がある」。正にその通り。ブルックスの右斜め前方にはわずかながらレーンができており、ステップアップすれば少なくともファンブルは免れたはずだ(図中赤線)。またマカリスターにダンプオフすることによっても、逃げることはできただろう(図中紫線)。

 こうしてライスは第1Qだけで3つのサックを記録し、3つのタックルを決め、そして1ファンブル・フォースをしたのである。

 第2Qに入ると俄然ゲームは動き始める。

 セインツは続くドライブを、10プレイかけて80ヤードドライブしてTDを奪う。そのきっかけを作ったプレイを【図4】にかいておいた。
 これは(26))マカリスターにトスをしてから、再び(2)ブルックスへトスしてパスを投げるというスペシャルプレイで、『フリーフリッカー』と呼ばれる。

 特にこのプレイではTEを2人入れて、ランを予想させておいたという点と、そのTEをプロテクションに使っていたということで、先述の5'、7'に当て嵌まる戦略であったと言える。このプレイで28ヤードのゲインを奪ったセインツは、最後にはマカリスターのトスプレイでTDを奪ったのである。

 直後のドライブでバックスはFB(40)マイク・オルストットへのダンプオフが44ヤードのTDランとなり、前半を9−6で折り返すことになった(実はセインツは先述のTD後2ポイントを狙い失敗。サイズマンをして「誰か説明をしてくれ」と言わしめていた)。

 第3Q開始のキックオフリターンで苦労人(彼は元ビール配達のトラックドライバー)のリターナー、マイケル・ルイスが46ヤードのリターンを見せ、セインツはそのドライブをベテランWRジェイク・リードへの4ヤードTDパスで締めくくった。

 そういえばこのゲームは、リードの兄弟でチームメイトでもあるCB(21)デイル・カーターの復帰第1戦であった。禁止薬物の違反によるサスペンション明けであったが、体脂肪率3%でチームに合流したという彼は、ランにパスにと素晴らしい活躍を見せていた。

 さてゲームの話を続けよう。

 リードへのTDによって勢いづくセインツだが、その直後のキックオフでバックスのリターナー、ステッカーからボールを奪いとってしまう。ここでの追加点がセインツを限りなく勝利へ近づけるもの、と誰もが思ったに違いない。グルーデンの苦虫を噛み潰したような顔が印象的であった。

 しかし事態は一変する。モンテ・キフィンの指揮するディフェンスは、ここで一番欲しいもの、すなわちターンオーバーをもたらしたのだ。

 そのプレイが【図5】のプレイである。メカニズムは【図3】に近い。すなわち「ブルックスがあまりステップアップしない」という癖をついた作戦であった。
 スキーム的には「オーバーロードブリッツ」といってもいいが、セインツはほぼ対応しきっていた。(68)ターリーは(97)ライスにマンツーマンでプロテクト。(64)ジェイコックスはゲート・テクニックを使ってSS(47)リンチをプロテクトした。更にマカリスターはオープンからラッシュを試みる(51)アル・シングルトンを…となるはずであった。

 しかしシングルトンは通常のオープンからのブリッツよりもさらに奥深くを狙ったのである。マカリスターがセットアップした位置は決して不適当なものではなかった。しかしシングルトンはお構いなしに彼の横を通過し、後ろ側からブルックスに襲い掛かったのだ。まさしくライスがセーフティを奪ったのと同じ形であった。
「ブルックスはステップアップしない」

 そこを巧妙についた作戦だったといえるだろう。これによりファンブルリカバーしたバックスが危機を排除したうえに、攻撃権を得たのである。

 ただゲームの流れは、再び苦労人によって引き戻された。彼は、今シーズン第6週のワシントン・レッドスキンズ戦で、パントリターンTD、キックオフリターンTDを決めるという快挙を成し遂げていたが、ここでもパントを55ヤードリターン。TB陣20ヤードからの攻撃をセットアップしたのである。

 ここを確実に決めるためにセインツはこの日初めてのフィロソフィーを使った。

 それはQBをスプリントさせるというもの。【図6】にあるように、QBのセットアップポイントを変えることによってDLのラッシュの方向を変えてやるのである。
 勘のいい(99)サップなどは、スプリントと気づくや否や横走りをして先回りをしようとしたが、彼が到達する前にボールはブルックスの手を離れていた。そしてそのボールはフックフェイクからスピンムーブをしてサイドラインを駆け上がったホーンの胸に吸い込まれたのである。

 ここでもDLをいかにコントロールするかという大テーマへの答えの1つが息づいているのであった。

 これにより20−11。比較的大きなクッションを持てたかに見えたが、バックスの追い上げも厳しかった。ゲームは2ミニッツにもつれこんだ。肘を痛めたブルックスをバックアップしたQB(12)ジェイク・デルホーンがサードダウンのパスを成功させ、時間を使い切った。

 23−20。NFCサウスの覇権を争う両チームの対戦であったが、力通りのがっぷり四つ。最高のゲームに、さらにフットボールへの興味がいや増した。ここにファルコンズを加えて3チームがプレイオフ進出、というのは、NYジャイアンツ、セントルイス・ラムズが脱落した今、かなりの現実味を帯びている。

 ちなみに、現時点(12月初旬)での僕のスーパー予想は、ファルコンズ×チャージャーズ。果たして結果はいかに。

back number
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