第3回
明暗を分けたプレイアクション・パスへの道
〜NYジェッツ対インディアナポリス・コルツ〜[プレイオフ第1ラウンド] |
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| パスターゲットとしての活躍が光ったジェッツFBリッチー・アンダーソン |
すでにプレイオフも第1ラウンドが終わり、様々なドラマを生み出しながら、今週末の第2ラウンドを迎えようとしている。
一番ホットと言われたジャイアンツがオフィシャルの判定、施行のミスによりFGの蹴り直しの機会を与えられぬまま49ersに敗れ、ツンドラの王者パッカーズも新時代の到来を予兆させるようなヴィックの走力の前に撃沈した。バックアップのケリー・ホルコムがティム・カウチ以上と言われるパッシングで429ヤードを稼ぎ出すも、神がかり的な逆転劇をトミー・マダックスのガイダンスの下で演出したスティーラーズが、ブラウンズに引導を渡した。
それぞれにエキサイトする素晴らしい戦いばかりであったが、その中にあって唯一色合いを異にしたゲームがあった。それが今回取り上げるゲーム、NYジェッツ対インディアナポリス・コルツの対戦だった。
結果はすでにご存知だと思う。41−0。これは2000シーズンにジャイアンツがヴァイキングスをチャンピオンシップゲームで一蹴した際とまったく同じスコアであり、シャットアウトゲームとしては、1940年にベアーズがレッドスキンズを73−0で破ったのに次ぐ記録となる。
たまたま2000シーズンにジャイアンツのメンバーであったSのサム・ガーンズが、「(自分が出場した)ジャイアンツスタジアムのプレイオフでは(トータルスコアは)82−0なんだ」と言っていたのには、彼の幸運を思って驚いたが、いずれにしてもあまりにも予想外の展開に誰もが口をつぐんだに違いない。
かく言う僕は、GAORAの生放送で解説をしていたので、思い切り喋りまくっていたのだが。
さて今回も長い原稿となるので、戯言はこれくらいにして本題に入りたいと思う。
今回の対決は新旧(というより新・中堅)のプレイアクション・パサーの対決となった。少なくともそのように喧伝され、各メディアの記事を読んでみても、ほとんどすべてがそう書いていたので、その見方そのものは間違いではなかろう。
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| コルツオフェンスを完封したジェッツディフェンス陣 |
しかし今季のコルツを見てきた僕の視点は少し異なっていた。「ペイトン・マニングはプレイアクションをさせると一級品だが、今年はそれを構築するための前準備が悪すぎる。それゆえ今のマニングはプレイアクション・パサーとは言えないのではないか」。これが僕の見方だったのである。
それゆえ僕の興味は、お手本のような組み立てをし、その組み立ての中で間違いを滅多にしないジェッツのチャド・ペニントンに対して、スクリメージラインでマニングがオーディブルをコールし続けることでコルツはランプレイを出すことができるのか、ということであった。つまりコーディネイターから離れて自立したQBは、どれほど正確に、また有効にディフェンスを狙い打つことができるものなのか、が知りたかったのである。
ゲームはジェッツのジョン・ホールのキックによって開始。芝の状態がかなり悪いのが遠目にも良くわかる。リターナーのトロイ・ウォルターズがダウン後にボールをこぼしたため一瞬場内が騒然とするが、事なきを得てコルツが第1シリーズを迎えることになる。
マニングはスプレッドからパスを試み、(32)エジャリン・ジェイムズにダンプオフ。4ヤードを獲得した。
続く第2ダウン。両TEセット。相手の隊形【図1】を見てマニングがすかさずオーディブル。左のオフタックルへプレイを変更した(もちろん元々のプレイについては知る由もない)。 |
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このゲームを通じて気になったことであるが、コルツのブロッキングはあまりにアングルを重視しすぎていた。ゾーンやスクープ、カットといったブロックを使おうとせず、常に相手の動きを斜め横から押さえにかかっていたのだ。
その理由はわからないが、ここでわかることは、右サイドにDLが固まっていたこと。図では敢えてLBの番号しか記していないが、その配置を見て頂けたなら左サイドがかなり弱いと誰もが思うであろう。それゆえマニングが左オフタックルをコールしたのは間違いではない。
続いて【図2】を見てもらいたい。ジェッツはマニングがオーディブルを出した後にシフトし、ダブルイーグル隊形をとった。もちろんこの隊形に対してもオフタックルプレイは有効である。OLのすべてがアサイメントを守り、成功するかに思われた。 |
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しかし問題は先ほど触れたアングルへのこだわりだったのだ。日本でもパワーオフタックルというプレイは馴染みのあるプレイであるが、基本的にこのプレイはOGがプルインしてリードブロッカーとなる。しかしアングルを気にするコルツのアジャストは(73)OTアダム・メドウズがプルインするというものであった。
結果としてブロッカーとキャリアーのリレーションが悪くなり、ジェイムズがブロッカーより先に外側へ出てしまう。そして、(56)LBサム・カワートに激しいタックルを受けてしまったのである。
結局この攻撃はパントにて終了。このパントをジェッツのリターナー、サンタナ・モスが好リターンするが、反則により自陣23ヤードからジェッツの攻撃となった。
ジェッツはこの日、ツイン系のフォーメーションを多用していた。これはツインに対するアジャストメントは予想がしやすいからである。またセーフティに人材を欠いているコルツであったから、ツインのTEサイドでセーフティを相手に勝負ができると考えていたのかもしれない。
いきなりツインからTEサイドへプレイアクションで入ったジェッツだが、(20)FBリッチー・アンダーソンが躓いてターゲットが消えてしまった。ペニントンが賢くもフィールド外まで走り出て、事なきを得た。
続く2プレイでランを試み、それぞれ9ヤード、1ヤード(QBスニーク)をゲインしファーストダウンを獲得。
ここで4ワイドアウトのフォーメーションでディフェンスを広げ、中央をドロー。8ヤードを奪った。そして【図3】に至る。 |
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これはカウンターフェイクパスと思わせた(20)アンダーソンへのスクリーンパスである。コルツディフェンスはシーズン当初こそ混乱していたようだったが、途中より持ち直し、特にルーキーの(93)DEドワイト・フリーニーの大ブレイクによって、守備力をグングンあげていた。
特徴としているのはバッカニアーズを思わせるアグレッシブなペネトレーションをフィーチャーしたカバー2である。確かに言われるようにコルツのフロント4はかなり小型であるが、その動きの速さには目を見張るものがあった。またLBもスピード派ユニットではないものの、フロントに負けず劣らず動き回る運動量の多いメンバーが揃っていた。
そこでジェッツのこのスクリーンが力を発揮したのだ。速さを身上とするディフェンスは、往々にしてカウンター系のプレイに弱い。それゆえ選手の気持ちとしては、カウンターに対してはわかってからのリカバリーを急ぐことになる。
このプレイでもそうだ。(98)サム・スウォードの動きを見てもらいたい。最初は少しうろうろしているのであるが、カウンターとわかった瞬間一目散にアタッキングポイントへ急いだのである。
しかしその動きを逆手に取られた。4−3ディフェンスにおいては本来プレイサイドと反対側の選手は、スローに動くことによってカットバックやブーツレッグを守らなくてはならない。特にこのディフェンスのようにTEサイドにオーバーアジャストした隊形では、カットバックウォッチャーの存在は必須であったはずだ。
しかしスウォードは行ってしまった。そして一人残るセーフティの前には、プロボウラーの(68)Cケヴィン・マワエと(77)RGランディー・トーマス、そして(88)TEアンソニー・ベクトが立ちはだかったのである。TD。
思わぬ展開となったが、コルツは持ち直す。パスを要所で決めジェッツ陣奥深くまで攻め込んだ。しかしこのシリーズ、ジェイムズとマニングの失策が続いた。それを【図4】【図5】にあげた。 |
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【図4】の失策とは、まずはマニングがディフェンスのディスガイズ(相手をだますためのスナップ前の動き)に引っかかり、3ディープカバレッジと思ってしまったこと。このためにマニングはプレイを右のカウンターに切り替えた。
もう1つの失策とは、ジェイムズがリードブロッカーを無視した走路を取ったこと。カウンターにおいては、キックアウトをするブロッカーとキャリアーをリードするブロッカーとを伴うが、ジェイムズはリードブロッカーを無視してしまったのだ。
もちろんリードブロッカーとなった(81)TEマーカス・ポラードの判断も悪かった。しかしこの種のプレイの決め事を守らなかったことによって、本来ならば4ヤードは確実に取れる展開であったにもかかわらずわずか2ヤードゲインに留まったのは痛かった。
一方、【図5】の失策とは、マニングがディフェンダーの視点を理解していないことから生まれた。このプレイはDEがTEのインサイドリリースに対して内側にスクイーズするということを前提にしているのであるが、(57)OLBモー・ルイスは2ポイントセットしていたために、ジェイムズの動きがよく見え、そのままタックルに行ってしまったのである。
もし彼が3ポイントセットしていたならば、こうはならなかっただろう。3ポイントのDEがキャリアーのコースを認識するのにはもうコンマ何秒かの時間が必要であり、その間に(71)RGライアン・ディームがブロックに行っていたからだ。 |
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しかしマニングには、このディフェンスが“ダブルイーグル”としか映っていなかった。「どのようなメンバーがどのようなテクニックでどこにアラインしているか」ではなく、ただ「どこにアラインしているか」だけを元に行ったオーディブルコールであったことが致命傷となった。
このプレイで4ヤードロスすると、結局ファーストダウンを奪うことができず、FGに落ち着いた。ところが今実力ナンバー1と言われる(13)Kマイク・バンダージャクトが失敗してしまった。リプレイで映った画面には、ボールが荒れ果てた芝の中にずっぽりとめり込んでいるのが見えた。
ジェッツは折り返しの攻撃をカウンター、カウンターパワー、そしてプレイアクション・パス、ヒッチスクリーン等を織り交ぜながらドライブ。ジョン・ホールの41ヤードFGに結び付け、10−0。
一方コルツは、追撃を期した続くキックオフリターンを、(86)KRトロイ・ウォルターズのファンブルによって失ってしまった。再びコルツ陣39ヤードからの攻撃権を得たジェッツは、スペシャルプレイを試みることなくパワーオフタックルで攻めた。それが【図6】である。 |
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ここでは相手のアライメントに従って、通常とは異なる形でブロッキングを行った。TEとRGはそれぞれ内側のDLをダウンブロック。そして前に誰もいないRGとCがプルアウトし、リードブロッカーとなったのだ。
ここで重要なのは、(28)RBカーティス・マーティンの走り方。彼は(68)マワエのブロックを追い越すことなく、彼が切り開いてくれるコースを走ったのである。ここにこの日のコルツ、ジェイムズとの差が現れた。
しかし何よりも驚いたのは、マワエの機動力である。スムーズにプルアウトしただけでなく、彼は密集を抜ける際に地面に転がっている選手を軽く飛び越してセーフティへ向かった。恐らくこんな芸当のできるCはチーフスのウィーグマン、ベアーズのクルーツくらいなものだろう、と思ってみていた。
ジェッツは堅いプレイとちょっとしたスペシャルを混ぜ、さらには簡単なパスを織り交ぜてボールを進めた。そして最後はバックアップ(34)RBラモント・ジョーダンがインチを走り、TDを奪ったのである。
コルツは何をやってもうまく行かない。スリー&アウト(一度もファーストダウンを取れずにパントとなること)に終わり、再びジェッツに攻撃権を与えてしまった。
コルツディフェンスは、ランが止まらないことに痺れを切らし、4−3を崩し5−2の形をとった。これを見てすぐにジェッツは3ステップのスラントを決めた。後手後手に回った結果だ。しかし、結局パントに終わる。
2ミニッツが近づいたこの時間。何としても得点をしたいコルツは、再びジェッツのディスガイズに引っかかり、貴重なタイムアウトを消費してしまう。またオーディブルでプレイを変えた結果、第3ダウン1をロスタックルされ、攻撃の芽を摘まれてしまったりもした。やることなすこと裏目に出る。
そして2ミニッツに入ってからのジェッツ。敵陣42ヤードからの攻撃権を得て、エンドゾーンへのマーチを始めた。
まずは(87)WRラバラナス・コールズへのカムバックで10ヤード。スプリットバックからの珍しいカウンターで10ヤード。TEへのパスとHBへのパスで第1ダウン、ゴール・トゥ・ゴー。
右へスプリントからアウトのパスを投げ、そして2ダウン4ヤードを残して【図7】のプレイを繰り出した。
モーションをした(80)WRウェイン・クレベットの動きとOLの左へのゾーンステップ、そしてマーティンへのハンドオフフェイクでディフェンスは大きく動かされた。
(10)QBペニントンはネイキッドの体勢に入り、(88)TEベクトと(83)WRモスとをオプションする。 |
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ディフェンスはマンカバーではなかった。かといってカバー2であったかというと、少なくともミスが発生して、カバー2のようには守られていなかった。
と言うのは(21)CBウォルト・ハリスも(26)SSデイヴィット・ギブソンもモスをカバーせずにベクトへと反応したからであった。ペニントンは状況をしっかりと把握し、サイドラインぎりぎりに投げた。そしてモスは芸術的にそれをキャッチ。24−0で前半を折り返すことになったのである。
実はこの原稿はここまでである。別にサボっているのではない。これ以上書く必要がないからだ。プレイアクションを構築するためには、シナリオが必要である。そしてそのシナリオをQBがスクリメージで遂行するのは、かなり難しい。特にアウェイで戦うことになったコルツにとっては、クラウドノイズも馬鹿にならなかったことだろう。
にもかかわらず、彼らは後半に至ってもスタイルを変えようとはしなかった。それは負けに値すると僕は思う。コーディネイターのコール通りにプレイし続けたジェッツはこの前半ランで平均5ヤードを記録した(ゴール前のショートシチュエーションは除く)。一方オーディブルで進むはずだったコルツは、約1・7ヤード。その差は歴然であった。
フットボールにはいろいろな戦術がある。時に効率よく進めなくてはならない時もある。また時にばれていても進めなくてはならない時もある。しかし何事もバランスこそ大事なのである。
効率を求めたコルツは、それゆえに負けたのだ、と僕は思った。 |
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