Thu, 11/06/2003 8:32 pm UPDATE
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NFL Report Japan


第4回
カウワー、フィッシャー両ヘッドコーチの率いる2チームのハイレベルな戦い
〜ピッツバーグ・スティーラーズ対テネシー・タイタンズ〜[2002年度・プレイオフ第2ラウンド]
 
目覚ましい急成長でエースレシーバーとなったプレクシコ・バレス
 この項は完全フリーテーマが許されているので、自分の興味に従って自由に書かせてもらっている。2002年シーズンもいろいろなことがあり、自分の興味を捉えて離さない新しい力もいくつか発見した。
 その中で一度は取りあげたいと思っていたのが、ピッツバーグ・スティーラーズとテネシー・タイタンズだ。
 今やジョン・グルーデンが最も華やかなコーチであるかのように喧伝されるが、やはりコーチ的な視点からすると、ビル・カウアーとジェフ・フィッシャーを見逃すわけにはいかない。両者とも若手であり、しかも実力者。すでに長期政権を築き、確実に殿堂入りが待っている。
 この両者がプレイオフで激突した。レギュラーシーズンにおいても一度対戦しているが、その際にはスティーラーズQBトミー・マダックスが頚椎を損傷し、一時首から下の感覚を失うという事故が起こっていた。幸い数時間後に感覚が戻り、驚くべきことにわずか2週間でフィールドに戻ってきた。
本調子ではなかったが、さすがにタイタンズの主軸RBジョージ
 一旦はNFLでダメの烙印を押された彼がXFLでの活躍を機にNFLにカムバックしただけでなく、まさしく死地よりのカムバックを果たした、という感じだった。彼のカムバック・オブ・ザ・イヤー受賞には、誰も異論をはさむことはないだろう。
 さてゲームの方に移りたい。
 実はこのゲーム、スティーラーズの圧倒的な不利が指摘されていた。それは3つの理由による。
1.タイタンズは第2シード権を得て、バイウィークを手にしていたこと
2.スティーラーズは前週の日曜日ワイルドカードを戦っていたにもかかわらず、ゲーム土曜日となり、わずか6日間の準備期間しかなかったこと
3.ワイルドカードのブラウンズ戦で多くの負傷者を出しており、1日短くなったことにより、回復が望めなかったこと
 これらがタイタンズ有利、を支えた条件だったが、2つ目に関して面白い計算がある。
 NFL側が「なぜワイルドカードを土曜日に戦ったNYジェッツに日曜日のディビジョナルプレイオフを組んだのか?」の理由として公式に述べていたのは、「ジェッツが次の対戦相手オークランド・レイダースと戦うにはアメリカを横断しなければならない。それゆえその移動時間を考慮して、ジェッツを日曜日に組んだ」というものだった。
 しかしカウアーは怒る。スティーラーズは準備にわずか6日、一方のジェッツは8日。この2日間の差は、移動時間の差わずか4時間のために生まれたものだ、とリーグは言うのだ。
「俺たちのゲームのほうが視聴率が取れない、ってことだろう」と毒づくカウアーの気持ちはよくわかる。わずか4時間のために48時間も準備に差をつけられることは耐えがたいことである。加えて相手はバイウィークを過ごしているタイタンズ。そこに生まれる不均衡は、リーグの理想とする公平性からはかけ離れていたとも言える。
 いずれにしても、6日間の準備でスティーラーズはゲームをしなければならなかった。しかし予想外といっていいと思うのだが、スティーラーズは健闘した、なんてものではなかった。完全に互角。驚くべきゲームを、キープレイを見ながら振り返ってみたい。
 タイタンズのキックオフによりゲームは開始された。リターナーはアントワーン・ランドルエルとリー・メイズのルーキーコンビ。ボールを捕ったのはメイズ。この日、終始このメイズは好リターンを見せていたが、このリターンも33ヤードをリターン。スティーラーズ陣38ヤードより攻撃を開始した。
 早速、図1に行きたいが、これが最初にスティーラーズが繰り出したプレイ。僕の個人的な命名であるが、BOXフォーメーション(RB、QBが箱のような形を作っている)から、カウンタープレイで(21)RBエイモス・ゼロウェイにボールを持たせた。これがタイタンズ守備陣のミスアジャストメントを誘い、一気にダウンの更新を果たした。
 フットボールとは11人で行うものであるが、大半は左右に5人対6人という形で散らばることが多い。それを更にアンバランスさせて4対7にしたりもするが、左右アンバランスが基本であるといってもいい。
 それゆえディフェンスも、そのアンバランスさにバランスアップすることを試行錯誤してきた。その結果、今のギャップコントロールに落ち着いたということができる。
 それゆえ、アンバランスなオフェンスへはうまく対応できるのに対し、逆にバランスのよいフォーメーションに対するアジャストに苦労することになる。
 特にTEが2人いる両TE、そして図のような3バックBOXについては時に混乱をきたす。なぜならストロングサイドがはっきりしないからである。
 TEが1人であるならばストロングサイドははっきりする。それによってDLのアライメント、ブリッツ、スタンツ、スラントの全てが決定される。
 しかしストロングサイドが決まらないフォーメーションに対しては、それを決定するプロセスから始めなくてはならない。
 案の定、このフォーメーションに対して準備のないタイタンズ守備陣は、バタバタとした結果ミスを犯してしまう。後には修正されるのであるが、ここではスラントを入れて、スラント逆サイドからブリッツを入れる予定であった。しかし、ストロングサイドのコミュニケーションがうまく行かなかったのだろう。スラントしたサイドからオープンブリッツが入ったのだ。フロントはオフェンスから見て右へスラント。本来ならば(25)SSタンク・ウィリアムズは左からブリッツに入る予定であった。しかし、実際には右からブリッツ。人数の少ない左へプレイが展開し、そのままゼロウェイは12ヤードをゲインした。
 オフェンスがゲームの開始においてよくやることとして、“目新しいことを見せる”ということがある。これは、相手に対応される前にゲームをコントロールしたい、ということと同時に、新しいことを見せることで相手に対応を迫る、ということがある。この対応には時間がかかり、その間にゲームは進んでいく、ということだ。
 しかしこの次のプレイで、スティーラーズは手痛い失策をしてしまう。今やエースとなった(80)WRプラキシコ・バレスがブレイクの際にスリップ。(8)QBトミー・マダックスはそのままボールを投げてしまっていたので、バレスをカバーしていた(21)CBサマリ・ロールがインターセプトしたのである。
 このプレイにおいてはロールと(25)ウィリアムズの2人でバレスをダブルカバーしていた。それも2人で横から挟み込むようなカバーだった。
 バレスはポストも警戒しているはずのロールにアタックするが、ロールはサイドラインのディープだけが責任だったため、引っかからない。結果的にはスリップによってはっきりとは現れなかったが、スリップしていなくてもキャッチは難しかっただろう。ひょっとしたらそれでもインターセプトしていたかもしれない。タイタンズは完全にスキームレベルで一歩先を読んでいたと言える。
 続くタイタンズの攻撃であるが、こちらも図2に描いてみた。
 タイタンズも同様に極端なフォーメーションから入った。タイタンズのオフェンスは、WRケヴィン・ダイソンを負傷により欠いていたため、(85)WRデリック・メイソンへプレッシャーがかかることが予想されていた。しかし彼にボールを持たせて、早いうちに活躍させたい。更にはスティーラーズ同様、タイタンズはスティーラーズの強力ランディフェンスを支える3−4の形を崩すことを狙っていたと思われる。
 いきなりRBのいないエンプティフォーメーションをとったタイタンズは、スロットの位置に入った(88)TEイーロン・キニーをモーションさせ、右に4人のレシーバーを固めた。左右で計算すると、何と7人対4人の超アンバランス。スティーラーズ守備陣はバタバタと慌てふためくが、結局3−4の形のまま。結果として人数に勝るタイタンズが、一番内側にセットしていた(85)メイソンにヒッチパス。それを(83)ドリュー・ベネット、(89)フランク・ワイチェック、(88)キニーがブロッカーとなり、走路を切り開いた。メイソンはそのスピードを利して、16ヤードをゲイン。早々に存在感をアピールすると同時に、スティーラーズにアジャストの必要性を認識させることになった。
 このドライブでタイタンズはワイチェック、そしてエース(27)RBエディ・ジョージをフィーチャーしていく。ジョージのランには鬼気迫るものがあり、スティーラーズ(41)SSリー・フラワーズなどはタックルに行ったところを吹っ飛ばされるシーンもあった。
 そしてゴール前のエンプティから、一番のミスマッチ、ワイチェック対(51)LBジャイムズ・ファリアーを攻め、TDパスを投じた。しかしこれをワイチェックがまさかの落球。そこで図3をコールしたのである。
 ここでは人数に対してバランスアップすることの重要性をスティーラーズ守備陣が感じていることが見て取れる。3人のレシーバーサイドに(51)ファリアーをいれて4人。更にはプレイ開始とともに(27)FSブレント・アレキサンダーまでもが3人サイドに移動。結果としてQB9スティーブ・マクネアをカバーする人間がいなくなった。(35)RBロバート・ホルコムが(50)LBラリーフットに好ブロックを見せたこともあって、マクネアは悠々とゴールラインを割り、先制のTDを奪ったのである。
 要するに、第1プレイでバランスアップの重要性を頭に刷り込んでおいたから、このプレイが成功したのである。もしいきなりこれをやったとしても、LB、DBは思ったように動いてくれはしなかっただろう。その点で極めて周到なプレイコールだったと言えるのである。
 タイタンズの見事なドライブに対して、スティーラーズはまだ糸口を見つけていない。1度のダウン更新を果たしたものの、その後が続かずパント。折り返しのタイタンズは、第3ダウンコンバージョンを4回に渡り成功させ、最後はジョージの左サイドへのランでTDを奪う。9分をかけたこのドライブでは(83)ベネットの活躍が光った。このベネットはデンバーのエド・マキャフリーを思わせる勝負強さを持っており、今後要注目である。
 スティーラーズのキックオフリターンは相変わらずいい。第2Qにまたがる次のドライブでは、敵陣深くまで入ったものの、度重なる反則により自らの首をしめ、パントに終わった。
 しかし、相手陣深くに攻め込んだことが幸いして、パントでタイタンズをゴール前に釘付けにすることができた。
 そのタイタンズの第1ダウン。定石通りランプレイでジョージにボールを持たせた。古傷を悪化させたLGピラーに代わり入っていた(67)アッカーマンが(98)NGケイシー・ハンプトンに押し込まれた。そこにジョージが突っ込む。予想外にチームメイトに当たったジョージはボールをこぼす。それをスティーラーズがリカバー。何とゴール前8ヤードでスティーラーズが攻撃権を手にしたのである。
 この好機にスティーラーズは(36)RBジェローム・ベティスにボールを持たせノーゲイン。続く第2ダウン8ヤードで、にくいコールを見せたのが図4である。
 ここではパーソネルがランであることを注意して欲しい。それゆえディフェンスもランのパーソネルとなっている。すなわちLBが3人入っているのである。加えてサインはゾーンによるカバー。圧倒的にスティーラーズは有利な形を生み出した。
 (84)TEジェレイム・トゥーマン、(80)WRバレス、(35)FBダン・クライダーでバンチを作り、二アセットした(86)WRハインズ・ウォードを絡ませる。すなわち4人のレシーバを使って、LBのゾーンを攻め立てたのだ。(53)LBキース・バラックはスピード派。しかしトゥーマンとバレスによって下げられている。(56)ランドール・ゴドフリーはバレスの内側への動きが気にかかり、ターンしてその後を追いかける。その結果LBの前のゾーンが完全にフリーになった。ウォードは易々と捕球すると、そのままTDを奪った。これが反撃ののろしとなる。
 
 日本ではあまりないことであるが、失ったモメンタムを取り返すために、大きなプレイをいきなりコールする、ということがアメリカでは多々起こる。時間は十分あるのに、といつも見ていて思うのであるが、ここでも同じ事が起こる。
 タイタンズの折り返しの第2ダウン11ヤード。タイタンズは(85)メイソンにロングパスを投げる。折角抜いていたのにボールがショートしたため、(30)CBチャド・スコットに奪われてしまう。連続ターンオーバー。嫌な展開になってきた。
 そしてそれにダメを押すかのように、続く第1ダウンのプレイでスティーラーズもまたロングパスをコールした。解説のディアドルフが、「ダブルカバーされているところに投げるなんてマダックスは何というギャンブラーだ」と驚いたように、バレスはロールと(31)FSランス・シュルターズの間をぶち抜いて39ヤードをゲインした。残念ながらFGに終わるが、勢いは完全にスティーラーズに傾いていた。
 タイタンズは落ち着きを取り戻し、一から攻撃を組み立て始めるが、結局パント。しかし2ミニッツを得たスティーラーズは、タイタンズの反則にも助けられながら、ウォード、第4レシーバー、テランス・マシスの活躍もあり、FGまで持ち込んだ。
 14−13タイタンズ。稀に見る接戦に、スティーラーズの用意周到さ凄さが感じ取れる。
 第3Qに入ってもグローブなしの打ち合いは止まらなかった。
 タイタンズの開始第1プレイで、RBジョージがハンプトンとヘッドオンで当たり、脳震盪とファンブル。これを一発でTDに結びつけたのが図5である。
 お分かりのように、ゲームの第1プレイの形からトゥーマンをモーションさせることで、通常のアンバランス隊形に戻している。これによって8メンの弱点を攻めている。
 8メンディフェンスは左右に4人ずつというのが基本になっているが、それゆえTEがいるほうが人数的に強いと考えられている。
 そこでスティーラーズはBOXの形からトゥーマンをモーションさせることで右サイドにTEを作り出し、更にはFBクライダーがオフセットしているという状況を生み出した。有難いことに、タイタンズはトゥーマンがいるサイドをストロングサイドとしているようで、RGケンドール・シモンズの前は誰もいなかった。
 タイタンズはオフェンスから見て右へスラントするが、人数で負けているところを補うには十分ではなく、更には(59)LBピーター・サーモンのまずい動きも重なり、一発でTDを奪われる羽目になった。これでタイタンズ14、スティーラーズ20。このゲームで初めてスティーラーズがリードを奪った。
 しかしタイタンズも黙ってはいない。エンプティを多用して、スティーラーズが今年ペイトリオッツやレイダースに完敗した時のようにして、攻め立てる。メイソン、ワイチェック、マクネア自身のスクランブル。そして念願叶ってワイチェックとファリアーのマッチアップを制してTD。再び21−20とリードを奪った。
 スティーラーズが3&アウトで終わった後、タイタンズはまたしてもTDを奪う。ジョージの代わりに入ったホルコムの好ブロックやベネットの勝負強いキャッチ。そして最後はブロッカーに専念していた(88)TEキニーにプレイアクションからTDパス。28−20。スティーラーズの息切れが感じられてきた。
 ゲームは少し膠着し、ようやくリズムを取り戻したかに見えたスティーラーズも、Kジョシュ・リードのFGミスによって、頓挫する。しかしディフェンスが踏ん張る。3&アウトで凌いで、オフェンスのボールを取り戻した。
 この攻撃をランドルエル、ゼロウェイ、マシス、ファーマトゥ・マアファーラらで繋ぎ、最後はスラントからのキャッチ&ランで(86)ウォードが26ヤードを走りきりTD。同点を目指した2ポイントコンバージョンを図6に挙げた。
 実はこのプレイのネタふりが前週のブラウンズ戦で行われていた。ランドルエルにハンドオフし、カレッジ時代QBだった彼がパスを投げる。
 ここではそれを囮に使って、今度はハイスクール時代にQB経験のあるウォードにバックワードパス。ウォードのランと思って上がってきたロールをかわし、エンドゾーン隅で待ち構えるバレスにTDパスを決めたのである。
 最高の瞬間だった。スティーラーズの選手の多芸多才を余すことなく発揮し、この苦しいゲームにあって、同点をもぎ取ったのだ。
 この後ゲームはFGの蹴り合いとなり、結局は34−31でタイタンズが勝利した。
 タイタンズのKジョー・ネドニーはFGの失敗による戦犯の汚名を着せられるところをスティーラーズの反則に助けられ、蹴り直し。一転してヒーローとなった。
 ゲーム終了と同時にロッカールームへと走り去ったスティラーズコーチ、カウアーは、フィッシャーとの挨拶もしなかった自分の態度を後に謝罪しているが、ゲームの始まりから終わりに(カウアーは最後のFGを蹴る前にタイムアウトをコールしていたはずなのに、オフィシャルはそれを見逃した、と文句を言っていた)至るまで、スティーラーズにはすっきりしないことが多すぎた。
 それにもかかわらず、あれだけのことをやってのけたカウアーを始めとするスティーラーズ・オーガニゼーションには心底脱帽する。
 勿論フィッシャーの素晴らしさは言うまでもない。この2人の戦いがリアロケーション前までは、年に2度見ることができたのであるが、それがなくなって寂しい限りだ。
 これからも最高の戦いを見せてもらいたいものだ。

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