第5回
スーパーボウルでのバックス勝利を用意したドルフィンズのゲームプラン |
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| 不振だったのはエースのブラウンだけでなく、ライスも同じだった |
本来ならここで第37回スーパーボウルに関する記述があってもいいところであるが、あえてそれを避けてきた。それはすでに『アメリカンフットボールマガジン』誌において速報という形で原稿を書いたからで、ここで更にそれを繰り返すことはしたくないからだ。
だから今回、そのスーパーボウルの勝敗を大きく左右することになったゲームを解説することで、別の視点からスーパーボウルを論じ直してみたいと思う。
ご存知、今年のドルフィンズはエースRBのリッキー・ウィリアムズが1850ヤードを走りリーグのリーディングラッシャーとなっただけでなく、DEジェイソン・テイラーというリーグのサック王を生み出したディフェンスのチームでもある。プレイオフに出られなかったという事実はあるものの、ドルフィンズの強さは本物であったといえるだろう。
このゲームがあった第15週時点で、AFCはレイダース、タイタンズ、ドルフィンズがトップ3を形成しており、そこに0.5ゲーム差でスティーラーズが追いかける展開となっていた。
言うなれば今回のドルフィンズ対レイダースの一戦は、プレイオフピクチャーに大きな影響を与える『頂上決戦』、ということができた。
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| プロボウルCBサーテインをもってしてもレイダースオフェンスは止められず |
またそれぞれのオフェンスには、記録のかかったプレイヤーが存在していたことも話題の1つだった。ドルフィンズのRBウィリアムズは、このゲームに先立つビルズ、ベアーズの2ゲームにおいて連続で200ヤード以上のランを記録し、それまでOJ・シンプソン、アール・キャンベルが持っていた記録に並んでいた。もしこのゲームで200ヤードを走ることになれば、勿論これは史上初の記録となる。
一方レイダースのQBリッチ・ギャノンは、この時点ですでに4205ヤードのパスを成功させており、1984年にドルフィンズのQBダン・マリーノによって打ち立てられたシーズン記録(16ゲーム制になって以降の)5084ヤードに、挑みかからんとしていた。特にこのゲームに先立つ3ゲームで平均293ヤードを叩き出していたこともあり、大きな話題となっていた。
ゲームはドルフィンズのキックオフで開始。NFLヨーロッパで活躍し、リターナーとしての地位を徐々に固めつつあったマーカス・ナイトが30ヤードの好リターン。自陣34ヤードの好位置からの攻撃となった。
第1ダウン、例によってクロス系のルートを走る(81)WRティム・ブラウンにパスを決める。ただしこの時ドルフィンズの(99)REテイラーは、スピードに任せて(65)LTバリー・シムズをパスし、タッチの差でサックを逃していた。
それが続くプレイに生きた。【図1】を見て頂きたい。これはスキームレベルの話ではないが、スピード派を不得意としているOLに対しては、スピードを印象つけることによって図のように駆け引きに優位に立つことができる。 |
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すなわち直前のプレイで置いていかれかけたシムズにとっては、続くパスプレイでのプライオリティーは“抜かれないこと”となっていたことだろう。第1プレイで優位に立ったテイラーにとっては、そんなことはお見通し。縦へのプレッシャーを見せると、今度は一転してインサイド・ムーブを繰り出し、ギャノンを後ろから捉えた。
テイラーのタックルはギャノンを直撃し、思わずボールをファンブル。何とかターンオーバーは避けたものの、13ヤードのロス。
そして続くプレイにおいては落ち着きを失ったシムズのスタートが後れ、その結果あっさりとテイラーに抜かれ連続サックを許した。
このプレイでも6ヤードをロスし、第4ダウンで24ヤード。あまりにも衝撃的な幕開けだった。
ところでこの図1から何かを感じないだろうか。これは実はスーパーボウルでシメオン・ライスが第1シリーズでサックを決めた形と全く同じなのである。シムズの考えていたこと、そしてそれに対抗するためにライスが考えていたことが、手にとるようにわかるだろう。
折り返しの攻撃、ドルフィンズは好位置を得た。自陣の44ヤード。その第1プレイでレイダースDTサム・アダムズがエンクローチメント。1ダウン5ヤードとなった。
ボールは丁度ハーフライン。そして残りは5ヤードで、3回の攻撃権がある。このシチュエーション、オフェンスとしては狙いたくなるものである。1プレイをミスしたとしても、2ダウン5ヤード。残り2回で5ヤードなら何とでもできる。
果たしてドルフィンズがコールしたのは、一発TDを狙うパスだった。200ヤードを2ゲーム続けているRBへのハンドオフのムーブが、ディフェンスにどれほどの影響を与えることになるのか、経験者なら嫌というほどわかるだろう。ドルフィンズはそれをブーツレッグに仕立て上げた【図2】。 |
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H-Backに入った(81)ランディ・マクマイケルが左へモーション。左への(34)ウィリアムズのランフェイクから、(9)QBジェイ・フィードラーが右へブーツレッグ。(66)LGジェイミー・ネイルズが先回りをして、パスラッシャーをブロック。
その間にエースWR(84)クリス・チェンバースがアウト&アップの動きで(22)CBテランス・ショウと(26)FSロド・ウッドソンを引っ掛ける。一瞬、後ろへの動きを止められたウッドソンが諦めたように追いかける中、フィードラーが完璧なポイントにボールを投げ、チェンバースが競り合いを制してキャッチ。40ヤードのボムとなった。
結局FGに終わることになったが、チャック・ブレスナハン守備コーディネイター率いる4-3パーソネルを使った5-2ルックのマンツーマン・ディフェンスには問題が多いと思っていた僕は、痛いところを衝かれたな、と感じた。
幸い(83)ナイトのリターンがフィールドポジションを戻してくれる。レイダースはここでDLのスタートを抑えるために、ランとプレイアクションを繰り出していく。しかし第3ダウン3ヤードのシチュエーションで、(25)RBチャーリー・ガーナーがパスをドロップ。ここまで77回のレセプションを記録するレシービングバックのミスにより、3&アウト。
しかし続く攻撃でディフェンスがRBウィリアムズからターンオーバーを奪う。ドルフィンズ陣13ヤードからの攻撃となった。
これだけプレッシャーのきついゲームであるから、レイダースとしてはタッチダウンが欲しいところだ。1プレイ目にダブル・クロスのルートをコールし、(81)ブラウンがワンハンドキャッチで9ヤードゲイン。(25)ガーナーのランで3ヤード地点からのゴールトゥーゴーの攻撃となった。
第1プレイは反則でマイナス5ヤード。ショートシチュエーションのスペシャリスト、(32)RBザック・クロケットへのプレイアクションから(84)WRジェリー・ポーターへフライを投じるもドルフィンズ(23)CBパトリック・サーテインが完璧にカバー。続く攻撃でもテイラーのプレッシャーを受けたギャノンがガーナーへセーフティバルブ。これが1ヤードロスし、3ダウン9ヤードとなった。
ここで再びレイダースはダブルクロスをコールした。コール自体は悪くはない。しかし再びテイラーがプレッシャーをかけた。
解説者のフィル・シムズが言ったように、『投げる態勢に入る前に投げさせられた不完全なパス』であったため、(81)ブラウンがパスをドロップ。FGに落ち着いた。
すでにこの時点でテイラーのプレッシャーは尋常の域を越えていた。ギャノンの平静がどんどんと崩れていくのが手にとるようにわかる。
一方のドルフィンズも、トラビス・マイナーの好リターンによりいいフィールドポジションを得る。何とレイダース陣46ヤードから。1プレイ目を【図3】に示した。 |
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このプレイは図2に通じるものがある。狙いはサイドライン。レイダースが多用するマンカバーが来てもカバー2が来ても問題なく対応できる。
ここではツインの形から両サイドラインとフィールド中央を狙った。マンカバーであるなら(84)チェンバースと(22)ショウのマッチアップがミスマッチ。カバー2ならパンプフェイクでやっぱりチェンバース。そんなプランだったように思う。
そしてQBフィードラーはその通りに実行した。カバー2と判断した彼は、中央に走り込んだ(80)ジェイムズ・マクナイトにパンプをして(26)ウッドソンを動かし、再びチェンバースにヒット。28ヤードをゲインし、レッドゾーンへ侵入した。
このシリーズ、第3ダウン6ヤードのシチュエーションで今季復帰を果たした(88)クリス・カーターへのポストでTDを奪う。レイダースのブラウン、ジェリー・ライスと並ぶ1000キャッチWRである彼は、その数字を支えた技術力を遺憾なく発揮し、ホームのファンを大いにファイアアップした。10−3、ドルフィンズ。
レイダースはテイラーのコントロールに腐心する。まずはテイラーサイドにドロー。これが4ヤードのゲインを記録するも、この日のテイラーにとってはそれも十分見えている。
続くスクリーンは投げられずにスクランブル。第3ダウン1ヤードとなって、レイダースはクロケットへのプレイアクションからパスを投じようとした。しかし投げられずウロウロして、結局(40)FBジョン・リッチ−に投げたパスは(29)サム・マティソンにカットされた。
その後パントを蹴り合いながら第2Qに突入していく。目立ったのはテイラーのラン守備の良さ。以前バックス対セインツのゲームの解説で書いたように、いいパスラッシャーにはランをぶち当てるという原則を書いたことがあったが、今やテイラーはそれを超えた存在になりつつあるようだ。
そして自陣3ヤードからの攻撃権をドルフィンズが得た。ドルフィンズとしてはパントを蹴りやすいところまで抜け出すことが一番の目的だった。
まずはウィリアムズへのラン。そして同じく彼へセーフティバルブ。第3ダウン1のシチュエーションで(84)チェンバースへスラント。
ここからウィリアムズへのランが炸裂し始める。そういうプランだったのだろう。相手が一番警戒しているものを囮にしてプレイを進め、その後に本当に出したいプレイを繰り出す。その時点ではすでにディフェンスのプランは大きな修正を余儀なくされ、その修正の間にゲームは進んでいく。
そしてレイダース陣25ヤードまで来て、ドルフィンズはウィリアムズへのランを繰り出した。5ヤードゲイン。
続くプレイでは、マンカバーを多用するレイダースディフェンスを手玉に取った。【図4】に描いた図がそれだ。 |
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(44)FBロブ・コンラッドが左へモーションし、それに対し(33)SSアンソニー・ドーセットが前に上がってくる。これはマンツーマンの動きであることは、すでにフィードラーの頭に入っている。
プレイはドロップバック。(81)マクマイケルの動きをみて欲しい。彼はまず(58)ナポレオン・ハリスの外側を目指し、彼の外側へのムーブを少し邪魔してからループ・アウト。(53)ビル・ロマノウスキーはマクマイケルをマンカバーしているので、スイングを走る(34)ウィリアムズを追いかけることはできない。つまりマクマイケルの動きによって、ハリスはウィリアムズから切り離されてしまったのだ。
その結果ウィリアムズは易々とキャッチ&ランし、ゴール前10ヤードまでボールを進めたのだ。
この2プレイ後、ウィリアムズに代わって入ったマイナーが2プレイでTDを奪った。17−3、ドルフィンズ。
レイダースは少しでも追いついておきたい。4WRセットを取ることで、ドルフィンズのディフェンス中央が甘くなることから、(47)タイロン・ウィートリーを入れ3回連続でドローをコール。これが合計25ヤードを生み出し、レッドゾーンへ。
しかしテイラーではなく、(93)アデウェイル・オグンリエのプレッシャーによりまたもや投げられず。FGに落ち着いた。
ゲームの後半の開始というのは、フットボール観戦者にとってはたまらない魅力を持っている。なぜなら両チームが状況をどのように認識し、それに対しどのようなアジャスト行ってきたかがわかるからだ。そこにコーチの癖や力量が如実に現れる。
レイダースのジャニコウスキーのキックによって、後半が始まった。
ドルフィンズは前半と同様、縦への一発から入った。チェンバースとショウのミスマッチを狙った形になったが、カバーは2ディープ。前半、容易く外側に逃がしていたショウであるが、ここは最初のポジショニングから外側を意識し、チェンバースをサイドラインに走らせなかった。
それが功を奏した。(33)SSドーセットは引き離されることなく喰らいつき、ナイスカット。続く攻撃をきっちりと3&アウトで止めたレイダース。アジャストが機能していることを知らしめた。
一方のオフェンスはどうだったか。エンプティから入り、ドルフィンズディフェンスのミスアジャストを引き出したが、ここでブラウンがパスをドロップ。ただし2ダウンを(88)TEダグ・ジョリーにヒットし25ヤードを獲得した。
この日、レイダースのエースWRブラウンの調子は最悪だった。事なきを得たがパントをドロップして危うくターンオーバーとなりかけたシーンも前半にあった。加えてライスはいまだにキャッチがない。頼りになるのはポーターのみという状況だった。その中でジョリーのキャッチは大きな救いとなった。
この後ポーターに15ヤードのパスを決めるものの、再びドルフィンズDLのプレッシャーの前にサックを受け、ジャニコウスキーの45ヤードFGに落ち着いた。
折り返しのドルフィンズの攻撃は、14プレイを数えるロングドライブとなった。レイダースにとって苦しかったのは反則が次々と発生したこと。結局はFGに抑えたが、7分35秒をきっちりと費やされ、ディフェンスの疲労は大変なものだっただろう。
今思えばこれだけ反則が多いにもかかわらずよくもスーパーボウルまで到達することができたものだ。この点に関しては、脱帽というしかあるまい。失礼、話が逸れた。
レイダースのオフェンスはノーハドルオフェンスを混ぜながらボールを進め始めた。プレッシャーがかからないように3ステップやRBへのセーフティバルブ。エンプティを使ってミスマッチを狙ったり、スクリーンを投じたり。多様なパターンでDLのラッシュをかわしつつボールを進める。パスは決してタイミングどおりとはなかなか行かないが、ライスへのパスが通り始め、更にはジョリーがナイスキャッチ。最後は第4Qへの変わり端にポーターがTDキャッチをレシーブした。
ようやくエンジンがかかり始めた感じだった。2ポイントコンバージョンも成功させ、20−17。
続く攻撃、ドルフィンズはウィリアムスのドローをフィーチャーしていく。そしてインサイドのアイソレーション、カウンターも混ぜながら、自陣19ヤードからレッドゾーン近くまで攻め込むが、FGに落ち着いた。しかしこれをマレがミス。わずか3点差まで迫られている事実が重くのしかかる。
こういう時に頑張れるディフェンスがあるということは心強い。第2ダウンの攻撃でDEテイラーがこの日3つ目となるサックを決めた。またもやインサイドムーブだった。
結局3&アウト。事なきを得た。
続くドルフィンズもまた3&アウト。しかしフィードラーがなぜエースの座を手にしているのかを示すプレイが生まれた。まるでブレット・ファーヴのよう。ひらめきを意味する『インプロビゼーション』という言葉がぴったり来るプレイだった【図
5】。 |
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プレイそのものは【図2】と全く同じ。違ったのは(75)クーパーの激しいペネトレーションで(66)ネイルが(53)ロマノウスキーをブロックにいけず、勘のいいベテランの速いラッシュを受けたことだ。
危うくサックを受けかけたが、フィードラーはこれをかわすとターゲットを探し、プロテクションの後フリーとなっているウィリアムズにパスをヒット。まるでスクリーンであるかのような形が生まれ9ヤードをゲインしたのである。
この日のフィードラーはスクランブルにも冴えており、再三危ないシチュエーションを自らの才覚で切り開いた。年々上達する感のあるフィードラー。来期は更に上を目指すことができそうだ。
さて、膠着するのかと思った時、予想外の出来事が起こった。
パントをリターンしようと右オープンを大きく走る(81)ブラウンの右横からスペシャルチーマー、(42)トレント・ギャンブルが激しくタックル。ヘルメットが丁度ボールを持つ右腕を強打し、これによってブラウンはボールをファンブル。ターンオーバーとなってしまったのである。
本当にブラウンは絶不調だった。サイドラインの彼の表情は沈痛なものだった。
この攻撃をFGに結びつけ、ドルフィンズは6点のリードを奪った。
そして約2分半を残し、レイダースの最後の攻撃となった。フィル・シムズが指摘したように、テイラーをダブルチームしたりして、プロテクションを固めたりしていた。ちょっと対応が遅いかな、という感じもしたが、この攻撃をTDに結びつけることができれば、それも帳消しとなる。
最初のプレイで(25)ガーナーにパスを決めダウン更新。続く第1ダウンのパスは失敗。ここで2ミニッツウォーニングを迎えた。
それが明けた第2ダウンのプレイ。レイダースはこの日、初めてとなるロングパスを試みた。ターゲットはライス。しかし彼を(23)サーテインと(31)ブロック・マリオンがダブルカバー。スピードに余裕のあるサーテインが完璧にカバーをしており、ボールにアジャストしてワンハンドでインターセプトを決めた。
万事休す。
このゲームについてもそうであるが、レイダースは今年アジャストメントに苦労した、という感想が残っている。
連勝の後連敗をしていた時ヘッドコーチキャラハンは『自分達のスタイルを変えるつもりはない』と突っぱねていたが、その強引さがここでも、そしてスーパーボウルでもマイナスに働いた。
でもそんなものだろう。結果が伴いさえすれば全て正しい。だからこの強情さも僕は好きだ。でも絶対に落としたくないゲーム、というものもあるはずだ。それがスーパーボウル。ここでの反省を、スーパーボウルに活かせていたら、と『たら、れば』を言いたくなるのは僕だけだろうか。 |
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