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NFL Report Japan


第7回
フロックではなかったトム・ブレイディのクォーターバッキング
〜第14週 ニューイングランド・ペイトリオッツ×バッファロー・ビルズ戦〜
 
チームをスーパーボウル優勝に導く活躍で、ブレッドソーからスターターの座を奪ったペイトリオッツQBトム・ブレイディ
2002シーズン前にペイトリオッツからビルズに移籍したQBドリュー・ブレッドソー
 一昨年のスーパーボウルを制したニューイングランド・ペイトリオッツ。エースQBのドリュー・ブレッドソーが負傷したために、たまたまチャンスを得たトム・ブレイディが、ある種のツキで頂点を極めたかのような見方をされることも多い。昨年はプレイオフにすら出られず、それが一層そういった評価を固定化する原因となった。
 しかし、僕はそうは思わない。彼は間違いなくトップクラスの力を持ったQBであり、次代を担う存在となるだろう。
 その理由は、元エースQBブレッドソーとの比較で明らかになる。ここではビルズに移籍したブレッドソーとペイトリオッツの対戦を取り上げて、その違いについて考えてみたい。

 2002年12月8日、ブレッドソー率いるビルズは、彼の古巣でもあるジレット・スタジアムに乗り込んだ。フィールドの隅に積み上げられた雪が示すように、この時期のフォックスボロウの寒さは尋常ではない。風の影響もただならぬこのフィールドで、この年2回目の対戦が繰り広げられた。
 1度目の対戦では、38−7とペイトリオッツが大勝。これによりペイトリオッツは連敗を4で食い止め、プレイオフレースに復帰することとなり、逆にビルズの連勝は3でストップ。混戦の中に巻き込まれてしまった。
『ブレッドソー・ボウル』と呼ばれたこのゲームで最も活躍したのは、皮肉にもブレイディだった。26回中22回のパスを成功させ、263ヤード。アベレージ10.1ヤードをたたき出した。
 一方主役のはずだったブレッドソーは、45回中28回成功266ヤードを稼いだが、4回のサックを受け、1INT。非力なランオフェンスの援護がわずかに65ヤード。ペイトリオッツのラン159ヤードを考えると、さすがに分が悪かった。

 さて、ゲームはビルズのマイク・ホリスのキックで開始。ペイトリオッツが自陣37ヤードからの攻撃権を得た。
 早速、ペイトリオッツはビルズの弱点を弄ぶ。確かに前回対戦時に負傷欠場していたCBアントワン・ウィンフィールドは復帰していたが、プレッシャーの不在とCBそのものの力不足は否めない。
 ブレイディはネイキッドの形からスローバックし、これをルーキーWRディオン・ブランチが完璧にキャッチ。いきなり41ヤードを稼ぐビッグプレイとなった。
 ばたつくディフェンスには、ランが効く。FBマーク・エドワーズのダイブ、TBアントワン・スミスのピッチオフタックルで容易くダウン更新。あまりのスムーズさに、舌を巻いた。
 しかし、その後はロスがあったり、TDプレイが反則により取り消しになったりで、FGに落ち着いた。
 ビルズは直後のキックを28ヤードまで返し、自陣28ヤードからの攻撃となった。エースWRエリック・モウルズ、ピアレス・プライスへのパス。エースRBトラビス・ヘンリーのラン。コツコツとではあるがボールを進め、ペイトリオッツ陣に入ったところでストール。パントとなった。
 ここで気づくのは、オフェンスよりもディフェンスの戦略の違い。ビルズが4メンフロントでオーソドックスに守るのに対し、ペイトリオッツは自慢の変幻自在なフロントとブリッツで、ブレッドソーをかき回す。ちなみにビルズの第1シリーズ、ペイトリオッツDは3メン、4メン、6メン、5メン、7メン、そして5メンと毎回異なる人数で攻め立てていた。
 さて、続く攻撃でペイトリオッツはTDを奪うことになる。このシリーズでは2度にわたり1ステップのクイックからヒッチをWRに決めた。これはCBとのマッチアップで勝てる、と踏んだ上でのプレイコールだ。その注文どおりエースWR(80)トロイ・ブラウンはスティフ・テクニックを使い11ヤードを奪い、WR(86)デイビッド・パッテンはタックルミスを引き出して、10ヤードを走りTDを決めた。
 しかしこのシリーズで本当に注目して欲しいのは、1度のダウン更新後のプレイで見せたブレイディのプレッシャー・ハンドリングである【図1】。僕はここにブレイディの目立たないが、最も大切な価値を見出す。
 たまたまこのゲームの解説を担当していたのは僕自身で、その中でも何度も触れていた。ポケットの中で上手に立ち回るという点において、ブレイディは天才的なセンスを見せる、と。
 このプレイは、トスのプレイアクションパスからのスローバックであるが、たまたま2ブリッツを入れた6メンラッシュがコールされていた。プロテクションはゾーン。しかしクロスで入ってきたLB(53)キース・ニューマンの動きにLT(72)マット・ライトが追いつかない。激しいペネトレーションを受けるが、ブレイディはドロップバック時のステップアップのように、シャッフルステップを踏みながら少しずつ回転してわずかな隙間に入り込み、クロスルートを走っていたTE(88)クリスチャン・フォーリエにパスを決めたのだ。
 TEのモーションによってマンツーマンのルールが崩れていたことも幸いし、なんと33ヤードのゲインを奪い、続くブラウンへのリバースによって21ヤードをゲインするなど、多くのことを仕掛けていったのである。
 プレッシャーを避ける仕掛け、ブリッツをさせない仕掛け、そしてブリッツが入ってもそれをハンドリングすることの出来るQBのテクニック。ここに危険回避の思想とその1つの完成形を僕は見る。

 ビルズはついていない。続くシリーズの第1プレイ。ブレッドソーのパスがDEアンソニー・プレザントによってカットされ、浮いたボールをDTリチャード・シーモアがインターセプト。ペイトリオッツにビルズ陣9ヤードからの攻撃権を与えてしまった。
 このチャンスをブレイディは2プレイでTDに結びつけ、第1Q3分少々を残しながら17−0となった。
 ビルズは続く攻撃、モウルズとプライスへのマークがきついことを生かして、TEジェイ・リマーズマ、TBヘンリーへボールを集めてこつこつとボールを進めた。そして14プレイ目のこと、ペイトリオッツ陣1ヤードからの第2ダウンの攻撃で、プレイアクションがコールされた。

 ブレッドソーはフェイクの後右に流れる。しかしそれがフェイクであることに気づいたDEウィリー・マクギネストが、プレッシャーをかける。まだ第2ダウンなので、無理をせずに次の攻撃、場合によっては第4ダウンまで使うことを考えてここはインコンプリート狙い…と思って見ていたら、なんとブレッドソーはパスを無理強いし、結果的にS(34)テバッキー・ジョーンズにインターセプトされてしまった。
 この結末にブレイディとブレッドソーの本質的な違いが存する。デザイン通りに自分に求められていることを果たそうとするブレイディ。一方自分の力で何とかしなくては、と思う余り、無理を承知でギャンブルしてしまうブレッドソー。
 そのメンタリティーは、当然パスのタイミングの取り方にも大きく影響を及ぼしている。システマティックにスキーム通りのタイミングでプレイするブレイディ。ブレッドソーはそれに対し、ダン・マリーノやマイク・シャナハンHCに出会うまでのジョン・エルウェイ同様、プレイの要求するタイミングではなく、自分のタイミングでプレイを行う。

 実は一昨年の第2週でニューヨーク・ジェッツと対戦したペイトリオッツのゲームを僕は解説していた。そのゲームでブレッドソーは胸を負傷し、ブレイディがその後をバックアップした。僕はブレイディを褒めちぎった。それはタイミングが余りにも正確であったからだ。
 いまやかつてとは異なり、オフェンスのプレイははるかに精巧になってきている。特にタイミング、ということに関しては、ウェストコーストオフェンスの広がりとともに、最も重要な要素の一つとなってきている。その意味でブレッドソーは一昔前のプレイスタイルを引き摺っており、これから再びスーパーボウルに返り咲くためには、『今風』の取り組みが必要となるだろう。

 話が逸れた。ジョーンズのINTをペイトリオッツはダニエル・グラハム、デイビッド・ギブンスらの活躍で進め、Kアダム・ヴィナティエリの46ヤードFGに結びつけた。
ここでキープレイとは言えないが、非常に興味をそそるプレイがあったので、とりあげておきたい。
 【図2】に示したこのプレイは、イリーガルシフトの反則で取り消されてしまうが、オフェンスコーディネーター、チャーリー・ワイスの独創性を示すものとして興味深い。
 WR(86)パッテンをモーションさせる。第3ダウンで残り5ヤードということで、予想されるのはクロスルートもしくはクラックバックを使ったRB(33)ケビン・フォークのラン。そしてボールはフォークへダイレクトスナップされ、誰もがランと考えた。
 その間にブレイディは、スナップミスがあったかのようなフェイクをしてからサイドラインを駆け上がり、WR(81)ドナルド・ヘイズが彼にマンツーマンしているCB(21)クリス・ワトソンを引き連れFS(27)コーリー・ワイアをブロック。フォークが振り向きざまにスロウバックして、ボールをレシーブしたブレイディがゴールラインを割った。
 このプレイでは、マンカバーの弱点を巧妙に突いている。それはQBをマンツーマンするディフェンダーはいない、ということだ。全てのカバーマンは、QBによってボールが投げられるものとして、それ以外のバックスをカバーするが、このプレイでは投げたのはRB、受けたのがQBというディフェンスの想定外のトリックが仕込まれていた。
 しかし、それ以上に元ディフェンダーとして感じるのは、キーを信じて動けば動くほど相手の術中にはまっていくという事態の恐ろしさだ。これではまともに動くことは出来ない。ビルズにとっては幸いにFGで終わったが、その衝撃は並大抵のものではなかっただろう。

 後半に入ると、ビルズは攻守に渡って大きなアジャストメントを行ってきた。
 オフェンス的には、エースをもっと使うこと。前半にはモウルズが1キャッチ、プライスは4キャッチしか記録しなかったが、後半では2人はそれぞれ7、5のキャッチを決めている。
 また多彩なディフェンスに対して、全体が見渡しやすいショットガンを多用し、タイミングも早めたりした。
 一方ディフェンスでは、4メンラッシュで引き気味で守るよりも、ペイトリオッツよろしくブリッツを多めにして、ブレイディを撹乱し始めた。それぞれの成果を示すプレイを以下に挙げておく。
 【図3】で示しているのは、ルーキーWR(82)ジョシュ・リードがマッチアップしている大型ベテランCB(45)オーティス・スミスのタックルをかわして42ヤードのロングゲインを奪ったプレイである。
 このプレイでペイトリオッツ守備は、7メンラッシュをかけてブレッドソーを潰しにかかった。一つ前のプレイでは5メンラッシュではあったが、ゾーンブリッツのように仕立ててもう少しでサックを奪えるところだった。
 ただペイトリオッツ的には7人のラッシュを入れたことによって、パスカバーにまわることの出来る人数が4人となったことが災いした(LB[52]テッド・ジョンソンはRBの動きを見てからラッシュするリードブリッツのサインだった)。なぜならビッグプレーを防ぐためにルースに守らざるを得ず、万が一ラッシュが届かなかったとしたら、易々とパスを決めさせてしまうことになるからだ。
 果たして事はその通りに展開し、ラッシュが届く前にブレッドソーはボールをリリースし、上記のようにビッグプレイとなったのである。
 【図4】にはディフェンスの思い切ったプレイを取り上げた。
 これはまさにサインが当ったと言ったほうがいいが、CB(26)ウィンフィールドがCBブリッツ。たまたまTE(82)グラハムへのリバースがコールされており、1Qでブラウンに走られた時の反省を元に、きっちりとトレイルムーブを行った。
 ハンドオフがうまくいっていなかったため、グラハムはファンブル。辛うじてリカバーしたが、ペイトリオッツはリズムを崩していくことになった。
 この後一進一退のまま推移し、結局ペイトリオッツが27−17で勝利した。

 賛否両論あるだろう。しかし僕はブレイディというQBを買っている。元々ペイトリオッツは全てがアベレージのチームであり、コーチの高い戦略とプレイヤーの低いエゴイズムとが素晴らしくマッチすることによってオ−バーアチーブしてきたと僕は考えている。
それゆえ2003シーズンは、間違いなくスーパーボウルのコンテンダーとなるだろう。
しかしそれよりも何よりもブレイディとブレッドソーとの対比の中に、これからのQBの行方が示されているというのは言い過ぎだろうか。

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