89年、シーズン途中で解雇されたマイク・シャナハンに代わり、ロサンゼルス・レイダース(当時)のヘッドコーチにアート・シェルが就任。NFLで初めて黒人がヘッドコーチとなった瞬間だった。
それから10年以上が過ぎ、2002年シーズンまでの時点でNFL指揮官の称号を得た黒人コーチはシェルの他、デニス・グリーン(ヴァイキングス、92〜01年)、レイ・ローズ(イーグルス、95〜98年/パッカーズ、99年)、トニー・ダンジー(バッカニアーズ、96〜01年/コルツ、02年〜)、ハーマン・エドワーズ(ジェッツ、01年〜)とわずか5人に留まっている。02年シーズンに指揮を執っていたのは、うちダンジーとエドワーズの2人のみ。残る30チームのヘッドコーチは、依然白人で占められていたのである。
来季、新たに一人、NFLヘッドコーチの座に黒人コーチが加わることとなった。今季も2勝14敗とリーグ最低勝率に沈み、低迷のつづくシンシナティ・ベンガルズが、今季終了後解雇したディック・ルボーの後任に指名したマーヴィン・ルイス(前レッドスキンズ守備コーディネイター)である。ボルティモア・レイヴァンズの2000年度スーパーボウル制覇に守備コーディネイターとして貢献したルイスだったが、昨オフに確実視されたバッカニアーズ指揮官就任はオーナーの反対にあって破談。レッドスキンズの同職に横滑りする格好で、1シーズンを過ごした後の、念願のヘッドコーチ就任となった。
さらに、もう一人、黒人ヘッドコーチが増えそうな気配もある。2001年度最終戦を前にしてヴァイキングスのヘッドコーチ職から退き、今季は解説業に従事していたグリーンの現場復帰である。
今季、レギュラーシーズン10勝6敗で久々にNFC西部地区優勝に輝いたサンフランシスコ49ers。前回地区優勝した97年にカリフォルニア大ヘッドコーチから49ers指揮官に就任したスティーヴ・マリウーチにとっても2度目の地区優勝となったが、プレイオフ2回戦でバッカニアーズに6−31と惨敗を喫し、リーグ優勝争いから姿を消した。この敗戦を受け、契約期間あと1年を残しながら、49ersはマリウーチを放出する決断をしたのだ。
昨オフにもバッカニアーズ指揮官就任が有力視され、49ersからも交渉の自由を与えられていたマリウーチ。常に退団の噂は絶えなかったが、結局そのときは現職に残留し今季を迎えた。しかし、現年俸220万ドル(約2億6400万円)から大幅に増額した新契約を求めるマリウーチと球団サイドは、契約更新に合意できなかったばかりか、残り1年の現契約期間さえ破棄する結果となってしまったのだ。
後任は依然未定だが、有力視されている一人が、かつて名将ビル・ウォルシュ(現49ersコンサルタント)の下、49ersのアシスタントコーチを務めていたグリーンなのだ。
もしグリーンのヘッドコーチ就任なれば、現職の2人と新任のルイスと合わせ、同時に4人の黒人ヘッドコーチが来季のNFLで指揮を執ることとなり、2002年度の2人から倍増となる。これまで同時に黒人ヘッドコーチが指揮を執っていたのは96年〜99年の3人(グリーン、ローズ、ダンジー)が最多。その記録を塗り替える可能性もあるのだ。
現時点で次期ヘッドコーチ職が空席となっているのは、49ersとトム・コフリンを解雇したジャクソンヴィル・ジャグワーズ。しかしジャグワーズの次期指揮官候補の第一希望はかねてよりマリウーチだとされており、49ersの職を解かれたマリウーチが横滑りする可能性は高い。同時に5人以上の黒人ヘッドコーチがNFLで活躍するのは、2004年以降まで待たねばならないようだ。 |