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今週のプレイヤー、コーチトピックス


一点集中・ジャイアンツの戦力補強策
 
 今年のフリーエージェント(FA)市場解禁から約2週間が過ぎ、NFLの各チームはそれぞれ戦力アップを目指し、他チームからの選手補強を行っている。最も活発に補強に動いたのは、名物オーナー、ダニエル・スナイダーの豊富な資金力を背景とするワシントン・レッドスキンズ。すでにトレードも含め9人の選手を獲得し、さらにラヴァーニアス・コールズ、チャド・モートン(以上ジェッツ)、マット・ボーウェン(パッカーズ)といったプロ経験3年の「制限つき」FA選手とも次々と契約を交わした(「制限つき」FA選手は旧所属チームに移籍阻止の権利が残されている)。
 しかし、レッドスキンズのなりふり構わぬ補強戦略に比べればかなり地味ながら、堅実に自軍の弱点を埋めているチームがある。同じNFC東部地区に属するニューヨーク・ジャイアンツだ。
 レギュラーシーズン後半戦の目覚ましい追い込みでフィラデルフィア・イーグルスに次ぐ地区2位に食い込み、一時は絶望視されたプレイオフ進出権を手にした昨季のジャイアンツ。
 敵地サンフランシスコに乗り込んだプレイオフ1回戦も、第3クォーター残り5分を切った段階で49ersに24点差をつけ、レギュラーシーズンに引き続き好調ぶりを披露した。しかし、ここから49ersのまさかの逆転劇が始まる。49ersは3TD、1FGを立て続けに奪い、試合を39−38とひっくり返した。
 試合時間は、残り1分。しかし、ジャイアンツもQBケリー・コリンズのパスを軸に敵陣内へ攻め込み、試合終了まで6秒の時点でKマット・ブライアントの42ヤードFGをお膳立てする。成功すれば、41−39と再逆転がなる大事なキックだった。
 しかし、ここで引退生活から急遽現役復帰したばかりの41歳のロングスナッパー、トレイ・ジャンキンがこの日2度目のスナップミス。ホールダーのPマット・アレンがこのボールをお手玉し、FGをセットアップすることができなかった。アレンは苦し紛れにパスに出たが、これも(反則判定で論議を呼んだが)失敗に終わり、ジャイアンツの2002年度シーズンは失意のまま終了した。
 粛正は、間もなく行われた。ジャイアンツはまずアレンを解雇、シーホークスから37歳のベテラン、ジェフ・フィーグルスを総額432万ドル(約5億1840万円)で引き抜き、パンターのポジションを強化した。また、シーズン終了後に契約の切れたジャンキンには目もくれず、ヘッドコーチのブッチ・デイヴィスから「リーグ屈指のロングスナッパー」との評価を受けながらチームのサラリーキャップ状況の厳しさのため慰留できていなかったクリーヴランド・ブラウンズのライアン・クールを総額362万ドル(約4億3440万円)の5年契約でかっさらった。
 さらには同地区のイーグルスから名キックリターナー、ブライアン・ミッチェルを獲得。3月11日時点で他チームより引き抜いたFA選手は以上3人のみだが、すべてがスペシャルチーム要員。なぜプレイオフを勝ち抜くことができなかったのか、チーム首脳陣が頭をひねった末の、一点集中の戦力強化策と言える。
 比較的地味な他チームのFA選手との契約の一方で、Tルーク・ペティグー、WRアイク・ヒリアードらFA権を得た自軍の主力選手との再契約には積極的なジャイアンツ。人気者CBジェイソン・シーホーンの解雇などもあったが、その照準は2000年度シーズン以来のスーパーボウル回帰へ絞られている。
 
[2003年3月14日]

ベンガルズはなぜスターLB移籍を許したのか
 
 FAと言えば、総額数億円から数十億円に及ぶ巨額な契約が結ばれることも少なくないが、今オフのここまでのFA市場で目玉となっているのは、自由に移籍する権利を持つ「無制限FA選手」ではなく、移籍に制約の加えられた「制限つきFA」のプレイヤーたちである。
 まず、プロ4年目のシーズンを終え、無制限FA権を得たはずのバッファロー・ビルズWRピアレス・プライス。しかしビルズはプライスに移籍の自由を許さず、FA市場解禁を前にして、プライスをチームの「フランチャイズ選手」に指名した。このフランチャイズ選手に指名された場合、旧所属チームに移籍の拒否権が与えられるだけでなく、移籍がなった場合はその代償として2つのドラフト1巡指名権を譲渡しなければならないという、非常に厳しい制限である。
 選手を引き留める目的よりも、この代償を得ることを重視してのフランチャイズ選手指名が近年目立っているが、今回のプライスの場合もこのパターン。間もなくビルズはQBマイケル・ヴィックのターゲットとなるレシーバーを切望するアトランタ・ファルコンズとの交渉をスタートさせ、ドラフト1巡指名権を代償とするトレードを成立させた。ファルコンズにとっては決して安くない買い物だが、普通にFA契約をプライスと結んだ場合に比べ、その代償は半分。全体の23番目に位置する今年の1巡指名権で即戦力のWRを獲得できる可能性は極めて低いこともあり、その指名権を譲渡する代わりに昨季パスレシーブ94回、1252ヤード(9TD)獲得のプライスを獲得できたことは、決して悪くない取引だ。トレード成立と時を同じくし、ファルコンズはプライスに総額3500〜4000万ドル(約42〜48億円)の7年契約を与え、その期待の高さを顕わにした。
 ベンガルズの看板選手であったLBタキーオ・スパイクスも、「トランジション選手」に指名され、移籍に制限が加えられた。ただし、この「トランジション選手」というカテゴリーは、「フランチャイズ選手」に比べ提示しなければならない規定サラリーが低い代わりに、与えられるのは移籍拒否権のみ。移籍となった場合の代償のドラフト指名権はない。
 このスパイクスと、バッファロー・ビルズが総額3200万ドル(約38億4000万円)の6年契約で契約を結んだ。代償が必要ないため、ビルズにとって懸念はベンガルズが拒否権を発動することだけ。移籍拒否権は、契約サインから1週間、結んだ契約と同条件を提示することによって行使できる。しかし、ベンガルズは直後に前カウボーイズのLBケヴィン・ハーディと1400万ドル(約16億8000万円)の4年契約に合意し、早くもスパイクス抜きのチーム作りを進める意志を明らかにした。
 疑問なのは、なぜベンガルズがスパイクスを「フランチャイズ選手」ではなく「トランジション選手」に指名したのか。もしベンガルズがスパイクスを慰留したかったのであれば、当然フランチャイズ選手に指名すべきだっただろう。1巡指名権2個という代償が課されるだけでも、他球団との通常のFA契約は事実上不可能となる。その上で、移籍が避けられないのであれば、ビルズがプライスの場合に行ったように、トレード交渉で代償を得ることはできるのだ。
 ハーディに続き、DTジョン・ソーントン(前タイタンズ)、CBトーリー・ジェイムズ(前レイダース)と相次いでFA契約を結び、ディフェンス強化を押し進めるマーヴィン・ルイス新ヘッドコーチ。ジェイムズの入団会見で「今日、ベンガルズの新たな時代が、そして私の指揮するチーム作りがスタートした」と語った。これこそが、スパイクスの「トランジション選手」指名の真意だったのだろう。FA市場解禁前からベンガルズを退団したい意志を公言していたスパイクス。ルイスは旧体制ベンガルズの中心選手であった彼を放出することで、自分が新生ベンガルズでチーム作りの全権を握っていることをチーム内外に示したかったのではないだろうか。
 新指揮官に率いられたベンガルズが、長き低迷を脱することができるのか。新シーズンの注目点の一つとなるだろう。
[2003年3月14日]

AFC北部地区・混沌のQB模様
 

 ジェイク・プラマー(前カーディナルズ)のデンヴァー・ブロンコス入団など、2003年シーズンもチームの看板であるQBの勢力図に大きな変動が見られている。中でも、最もQBのポジションの顔触れが様変わりしそうなのがAFC北部地区である。
 昨季開幕時点での同地区の先発QBの顔触れは、以下の通り。
  ボルティモア・レイヴァンズ ……クリス・レッドマン
  シンシナティ・ベンガルズ  ……ガス・ファーロット
  クリーヴランド・ブラウンズ ……ケリー・ホルコム
  ピッツバーグ・スティーラーズ……コーデル・ステュワート
 レイヴァンズは前年にFAで獲得したエルヴィス・ガーバックをわずか1年で解雇、プロ3年目の若いレッドマンをスターターに大抜擢した。昨オフにブロンコスから加入したファーロットはプレシーズンでジョン・キトナとのポジション争いに勝ち、開幕先発の座を手にした。ブラウンズは同じくプレシーズンでエースQBティム・カウチが負傷、2試合戦線離脱の間を2番手のホルコムが埋めた。前年の先発QBのうち、昨シーズンもスターターとして開幕を迎えたのはステュワート一人だけであった。
 シーズン開幕後も、この地区のQBの顔触れはまったく安定する気配を見せなかった。まず開幕3戦目で本来のスターターであるブラウンズのカウチが復帰。しかし、代役出場の2試合で524ヤード、5TD(インターセプトなし)と爆発的なパフォーマンスを見せたホルコムに比べ、そのパフォーマンスは概ね低空飛行を続け、地元ファンからブーイングを浴びることさえあった。
 続いてファーロットがわずか3試合の先発の後にポジションを失った。ベンガルズのQB起用策はこの後も迷走を続け、第4週には99年ドラフト1巡指名のアキーリ・スミスを仰天大抜擢。しかしパス成功率わずか36.4%の惨状に、翌週にはキトナを先発の座に戻すこととなった。
 立場が最も安泰と思われていたスティーラーズのステュワートも、開幕から3試合でTD3個に対しインターセプト5個と乱調。チームも1勝2敗と開幕ダッシュに失敗し、4戦目からアリーナフットボール、XFLを経てNFLに舞い戻ったトミー・マドックスにスターターの座を献上することとなる。
 そうした中で、前年までNFLでのプレイ経験がほとんど皆無だったレッドマンは健闘。開幕から6試合の先発出場でチームの戦績は3勝3敗。サラリーキャップの制約から2000年度スーパーボウル制覇時の主力を大幅に放出せざるを得なかったチーム事情を考えても、これは上出来だった。しかし、腰痛のため、レッドマンは第7戦から戦線離脱、その後一度もフィールドに立たないままシーズンを終えてしまい、プロ11年目のジェフ・ブレイクが後を引き継いだ。
 まさに混沌という表現がぴったりくる昨季のAFC北部地区のQB模様だったが、このオフも、その傾向は続いているようだ。まず最も注目を浴びたのが、97年シーズンから正式にスティーラーズの正QBの座に就き、2度にわたりチームをAFC決勝まで導いた実績のあるステュワートの解雇である。ステュワートからポジションを奪い、安定したプレイを見せたマドックスが、今季もスティーラーズのスターターとして開幕を迎えることとなる。一方FAとなったステュワートには、QB難のシカゴ・ベアーズなど数チームが獲得の意志を明らかにしている。
 レイヴァンズは、ブレイクの昨季後半戦での堅実なプレイぶりを評価し、再契約を目指す方針を固め、実際に条件提示も行っていた。しかしチーム側とブレイクの交渉は決裂、FA権を有するブレイクが他チームとの交渉を始めると、レイヴァンズはすでに行っていた契約提示を取り下げ、ブレイクとの再契約を事実上諦めた格好だ。ここに至って、レイヴァンズはステュワート獲得合戦に参戦。ケガからの復帰を期すブレイクと、先発QBのポジションを争わせたい意向だ。
 カウチ、ホルコムの両QBが今季も契約下にあるブラウンズも、それ故の悩みがある。昨季プレイオフ1回戦で、再度負傷欠場にカウチに代わって出場したホルコムは、最終的にスティーラーズに逆転負けを喫するものの、パス429ヤード、3TD(1インターセプト)の堂々たるパフォーマンス。スターターを十分務められるだけの実力を改めて示した。先発の座が危うくなった2000年のドラフトいの一番指名選手カウチは、ヘッドコーチのブッチ・デイヴィスの自らの地位の確約を求めたものの、デイヴィスはその期待に応えず、サマーキャンプで壮絶なポジション争いが予想されている。先発交替の可能性も低くない。
 最後に、昨季2勝14敗とリーグ最低勝率に沈んだベンガルズ。4月のドラフト最初の指名権を有しており、昨シーズンの大学界最優秀選手、QBカーソン・パーマー(南カリフォルニア大)の指名が有力視されている。しかし、マーヴィン・ルイスを新指揮官に迎えたベンガルズは、QB以外にも弱点を多く抱えており、できればこの指名権をトレードに出して複数のポジションを強化したい、というのが本音のところ。すんなりパーマー指名に踏み切るのか、依然予断を許さないが、もし指名をした場合は、開幕先発起用はなくとも、早期のスターター昇格は十分あり得る。
 2003年シーズンも昨季のスターターがそのまま先発QBとして開幕を迎えることが確実なのは、またもスティーラーズのみ。AFC北部地区のQB模様は、今後も流動性を保ちそうだ。

 
[2003年3月14日]

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