 |
| セインツからラムズに移籍したOTカイル・ターリー |
今オフシーズン、各チームが戦力補強に精力を傾ける中で、選手の玉突き現象が起きた。発端は、ニューオリンズ・セインツが新たな左攻撃タックルのスターターとして前スティーラーズのウェイン・ガンディを総額2600万ドル(約31億2000万円)の6年契約で引き抜いたことだった。
攻撃ラインのポジションは、そもそもセインツの今オフシーズンの補強課題ではなかった。昨年オフに、新人時以来9シーズンにわたり左タックルのポジションを守り通してきた看板選手ウィリー・ローフをチーフスへトレード、代わって、右タックルのスターターだったカイル・ターリーが左サイドに移り、ドルフィンズから移籍のスペンサー・フォーラウが右サイドのポジションを任された。新人Gルチャールズ・ベントリーの若さに似合わぬ安定したプレイぶりとも相まって、リーグ3位の1試合平均27点を獲得する得点力を発揮したのだ。
しかし、今オフシーズンに、攻撃ラインの中核選手であるターリーをセインツが放出するだろう、というのはかねてより噂となっていた。頭に血が上りやすく、2001年シーズンには相手チームの選手のヘルメットを奪い取って放り投げるという暴挙に至ったこともあるターリーに、ヘッドコーチのジム・ハズレットの堪忍袋の緒は切れてしまっていたのだ。
そうした中でのガンディ獲得。スティーラーズで過去4シーズン、左タックルのスターターとして強力ラン攻撃を支えたガンディだったが、ターリーを本来の右サイドへ戻すことで、まだ共存の可能性もないわけではなかった。しかし、セインツがターリーのトレード先を探していることは今オフシーズンの噂の種となっており、放出は時間の問題と見られていた。
そして、ターリー獲得に手を挙げたのが、攻撃ライン再編がオフの最重要課題となっているラムズだった。昨季のラムズは右タックルのポジションのスターターに抜擢された若手のジョン・セントクレアが期待を裏切り、パス・プロテクションが大幅に悪化。大黒柱のカート・ワーナーを筆頭に、ジェイミー・マーティン、マーク・バルジャーと三番手までのQBが皆ケガに見舞われるという惨状に陥った。加えて今オフにはリーグを代表するラインマンである左タックル、オーランド・ペイスを筆頭に、攻撃ライン陣だけで8人もの選手がフリーエージェント(FA)権を得、戦力の大幅入れ替えが必至の状況だった。
その予測通り、トレードでレッドスキンズからGデイヴィッド・ラヴァーンを獲得、さらにFA市場では前ブラウンズのCデイヴ・ウォーラボーを引き抜いた。そして、3人目の新戦力として、2004年のドラフト2巡指名権と交換に、ターリーを獲得したのである。
性格面で問題があるとは言え、ターリーのアグレッシブなプレイはリーグでも屈指との評価を得ており、本来の右サイドに戻り、ペイスとともにNFL随一のタックル・コンビ形成へファンの期待も高まるところ。しかし、話はそう簡単には収まらない。ペイスも、先に触れた8人のFA攻撃ラインの一人なのだ。
しかし、ラムズにとってはペイスは絶対に慰留したい人材。そこで『フランチャイズ選手』指名を行い、その移籍に制限を加えた。ペイスがFA移籍となった場合、移籍先の球団はラムズにドラフト1巡指名権2つを譲渡しなければならず、移籍は事実上不可能となっている。その境遇に不満を覚えたペイスが、「金を払う気がないのなら、トレードに出してくれ」と訴え始めたから大変だ。
その現状の中で、ターリーをトレードで獲得し、2650万ドル(約31億8000万円)という、ガンディ以上の好条件で契約を更新したラムズ。もしペイスを慰留することができなければ、ターリーは新チームでも左サイドに留まってプレイすることになることかもしれない。新戦力獲得がそれまでの主力選手を押し出す玉突き現状は、今後も続いていくのだろうか、目が離せない。 |