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| スティーラーズでは先発QBのトミー・マドックスの給料が、控えのチャーリー・バッチより安くなるという現象が起きている |
「Quarterback Controversy」……NFL関連のニュースの見出しに、よく登場する決まり文句である。直訳すれば「QB論争」。早い話が、「誰が先発QBになるか」というトピックで議論が巻き起こるような状況のことを指す。
「ポジション争い」と言えば聞こえは良いが、フットボールのQBに関して言えば、確固たる先発QBが不在の状況は、ヘッドコーチにとって頭痛の種以外の何物でもない。QB起用に関する判断の一つ一つがチームの成績に目を光らせる地元メディアから叩かれるぐらいならまだ良いが、最悪の状況ともなると、チーム内部がそれぞれのQBを支持する派閥に分裂し、チームワークが成立しないことにもなりかねない。1999年シーズン、前年度王者のデンヴァー・ブロンコスが名QBジョン・エルウェイ引退後の後継問題に際し、プレシーズンで先発と目されていたバビー・ブリスターと当時プロ2年目のブライアン・グリーシーの2人の間で真っ二つに割れ、6勝10敗の地区最下位に転落したことは記憶に新しい。
99年ドラフトいの一番指名のティム・カウチと昨季序盤およびプレイオフで目覚ましい活躍を見せたケリー・ホルコムの間で火花が散るクリーヴランド・ブラウンズの現状は、すでにその危険性をはらんでいる。その他にも、火種はリーグの各所に散在している。
ピッツバーグ・スティーラーズは、昨季途中に先発QBのポジションを奪取したトミー・マドックスを先発QBに据え、2003年のシーズンを迎える。一度はNFLからドロップアウトしながら、アリーナリーグやXFLを経て晴れ舞台に舞い戻ったマドックスのエピソードは今や周知だが、そのマドックスの現契約は、控え要員の立場だった昨年オフに結んだ5年契約のままである。今季の基本給は年俸65万ドル(約7800万円)、これに7万5000ドル(約900万円)のボーナスがつく。NFLの最高給ポジションのQBのスターターとしては、破格に安い給料である。
問題は、去る3月13日、フリーエージェント(FA)になっていた控えQBのチャーリー・バッチにスティーラーズが年平均100万ドル(約1億2000万円)の2年契約を与え、チームに残留させたことだ。さらに、スターターという立場に見合った新契約を求めていたマドックスに対しては、「今年中の再契約はあり得ない」とヘッドコーチのビル・カウワーが公言してしまったのだ。
新人年以来、一昨年まで4年間ライオンズの先発QBだったバッチは、夏のトレーニング・キャンプでのポジション獲りに意欲を見せているが、サラリー面ではすでにスターターのマドックスを抜いてしまった。スティーラーズとしては、1シーズンの活躍だけでは、マドックスに全幅の信頼を寄せるには至らない、ということなのかもしれない。
2001年7月、かつての名将ビル・ウォルシュを引き継ぐ形でサンフランシスコ49ersのGMに就任したテリー・ドナヒューは、最初の大仕事としてエースQBのジェフ・ガルシアに総額3600万ドル(約43億2000万円)の6年契約を与えた。ちょうど今のマドックスと同じく、カナディアンリーグ経由でNFLのスターターの座に登り詰めたガルシアだが、1シーズン、フルに先発としてプレイしたのは前年の1年間のみ。その2000年シーズンも、ガルシア個人はチーム記録のパス4278ヤードをマークするなどプロボウル選出を受ける活躍は見せたが、チームは6勝10敗で2年連続プレイオフ進出を逃している。
対してマドックスは、序盤エンジンのかからないチームでコーデル・ステュワート(今オフ、ベアーズに移籍)からポジションを奪い、チームをプレイオフに導いて、1回戦ブラウンズ戦では劇的な逆転勝利を演出している。少なくとも、2年前のガルシアと同等かそれ以上の評価が得られてもおかしくない存在なのだ。
今やガルシアは49ersの不動のエースとなり、チームも「QB論争」とは無縁で2年連続プレイオフ進出を果たしている。一方のスティーラーズの今回の判断が、どういう結果を招くのか。サラリーはチームの期待度の表れ。高給を与えた先発QBに対しては、チームも彼と心中する覚悟ができる。その覚悟を回避したことが、新たな「QB論争」へとつながらなければ良いのだが。 |