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| NFL TOKYO2003でのNFLデビューが予想される、バッカニアーズのドラフト3位指名QBクリス・シムズ |
今年の8月2日・土曜日、東京ドームで開催されるアメリカンボウル『NFL Tokyo 2003』で来日が決定している前年度リーグ王者タンパベイ・バッカニアーズ。NFLのディフェンディング・チャンピオンが、連覇へ向け戦力をどれだけ整えてきているのか、注目が集まるプレシーズンの一戦だ。
チャンピオン・チームだけあって現時点でチーム力に穴はさほどないが、長期的に見るとQBのポジションにいささか不安を抱えている。
現在のエースQBは、ミスのないプレイで爆発力不足のオフェンスを効率的に機能させたベテラン、ブラッド・ジョンソン。今季開幕直後に35歳を迎える年齢もさることながら、昨季もレギュラーシーズン3試合に欠場を強いられるなどケガの不安が常につきまとう。今後何年も、ジョンソンに頼ることはできない。
その懸案をクリアすべく、現地4月26、27両日に開催された2003年NFLドラフトで、バッカニアーズは大学界を代表する大型パサーを指名した。クリス・シムズ、22歳。テキサス大出身のサウスポーである。
かつてニューヨーク・ジャイアンツで名QBとして活躍し、第21回スーパーボウルではMVPに輝くパフォーマンスでチームを優勝に導いたフィル・シムズ。現在はテレビネットワーク局CBSの看板解説者としてファンにもおなじみだが、クリスはそのシムズの息子にあたる。
高校時代から父親譲りの長身、強肩で全米にその名を轟かせていたクリス。大学進学時はNFL入りしたペイトン・マニング(現コルツ)、ティー・マーティン(前スティーラーズ)らを継ぐべくテネシー大への進学がほぼ決まりかけていたが、一転アメリカ中西部の名門校テキサス大への入学を発表。3年生時の2001年から本格的にスターターの座を手にし、大学キャリア通算でチームを26勝5敗の好成績に導いている。
素材だけ見れば、明らかにドラフト1巡指名を受けてもおかしくない素材。もしその通りの評価を今回のドラフトで受けていたなら、バッカニアーズ入団は実現しなかっただろう。バッカニアーズは昨シーズンオフにオークランド・レイダースからジョン・グルーデンヘッドコーチを引き抜くため、今年のドラフト1巡指名権も譲渡してしまっていたからだ。
しかし、クリスの評価は、大学通算パス7097ヤード、58TDを記録した実績にもかかわらず伸び悩んだ。原因は、重要なゲームで勝てない、というレッテルである。特に、所属リーグ「ビッグ12」南部地区のライバル校、オクラホマ大学戦は01年、02年ともに連敗、ファンの期待する全米王座はおろか、ビッグ12チャンピオンにすら名門チームを導けなかった。加えて、「あのフィル・シムズの息子」、という本人にとってははた迷惑かもしれない看板も常につきまとった。4年前にはクリスの入学に沸いていた大学町テキサス州オースティンは、今や彼に「期待はずれ」の烙印を押してしまっていた。
精神面でのタフさに欠ける、チームを勝たせることができない、こうした定評のため、今回ドラフトトップ指名を受けたカーソン・パーマー(南カリフォルニア大→ベンガルズ)やバイロン・レフトウィッチ(マーシャル大→ジャグワーズ)、カイル・ボーラー(カリフォルニア大→レイヴァンズ)からクリスは大きく引き離されてしまった。
それでも、ドラフト1巡下位から2巡目あたりには指名されるのではないか、それがドラフト評論家の一般的なクリス評価だった。それが、ドラフト1日目の最終指名順、ドラフト3巡目、全体の97番目の指名権が来るまで、クリスは指名されることがなかった。ドラフト開始から半日近く、スポーツ専門テレビ局ESPNのドラフト中継を見ることに嫌気がさしたクリスは、途中からプロバスケットボールNBAのプレーオフ中継にチャンネルを変えてしまったそうだ。
こうして、その日最後の指名権で、バッカニアーズはクリスを指名した。「彼はドラフト評論家だの、専門家たちが間違っていた、もっと高い順位で指名すべき選手だったと証明したくてしょうがないはず」。指揮官グルーデンはそうクリスの思いを代弁した。クリスも「グルーデンコーチのすばらしいところは、厳しい批判にさらされている僕の境遇を理解してくれていることだ。周りは敵ばかり、そんな状況で、これからは彼と一緒に、批判が誤りだったと証明できればと思う」と、指揮官の心意気に心酔した様子だ。
昨シーズンの2番手QB、ロブ・ジョンソンがフリーエージェント(FA)でレッドスキンズに移籍。その穴を埋めるため、今オフにバッカニアーズは昨季3番手のショーン・キングと再契約するとともに、前ベアーズのジム・ミラー、前レッドスキンズのシェイン・マシューズと他チームでスターターを務めていたベテラン選手を獲得した。そのため、実際に今ドラフトにおいては、QB指名の優先順は低かったが、クリスほどの人材が自チームの指名順までの残っていたとなれば、指名せずにはおれない。ドラフト終了後間もなく、バッカニアーズはマシューズを解雇し、将来のエースQBとして、クリス育成の体制が急速に整いつつある。
「彼がここタンパで、その潜在能力を開花させるチャンスは大いにある。少なくともこの指名が正しいものだと証明するために、我々が全力を尽くすということだけは約束できる」。QB育成に絶対の自信を持つグルーデンのこの言葉が、クリスにとって何よりの支えとなっていくだろう。そして8月、東京ドームがクリスが初めてプレイするNFLのフィールドとなる。 |