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今週のプレイヤー、コーチトピックス


名将パーセルズの名門再建策スタート
 
 「This is no democracy. This is dictatorship」(この場に民主主義など存在しない。すべて私の独裁だ)。アメリカの高校フットボール界の実話を映画化した『タイタンズを忘れない』でデンゼル・ワシントン演じる主人公のヘッドコーチ、ハーマン・ブーンが、チーム最初のミーティングで生徒たちに語った言葉だ。まさにこの言葉通りのチーム作りが、名門ダラス・カウボーイズで行われようとしている。
 過去にスーパーボウル制覇5度の「アメリカズ・チーム」。ダラス・カウボーイズも過去2年連続で5勝11敗と転落し、昨季終了後にヘッドコーチのデイヴ・カンポは解雇。名門復活を託すべく、名物オーナーのジェリー・ジョーンズが招聘したのは、かつてニューヨーク・ジャイアンツを2度のリーグ優勝に導いた名将、ビル・パーセルズだった。
 2度目のスーパーボウル優勝を果たした1990年度シーズン終了後、突如ジャイアンツのヘッドコーチを退任。2年間のブランクを経て、93年にニューイングランド・ペイトリオッツの指揮官に就任すると、同年のドラフトいの一番で指名したQBドリュー・ブレッドソー(現ビルズ)を軸に急速に戦力を強化し、96年シーズンに自身3度目のスーパーボウル出場を果たした(パッカーズに敗退)。このシーズン終了後、今度は電撃的にニューヨーク・ジェッツのヘッドコーチに転身、前年度わずか1勝に終わったチームをいきなり9勝7敗の勝ち越しにまで導いている。99年シーズン限りで勇退し、過去2年は再び評論活動をしていたが、昨年オフにもバッカニアーズのヘッドコーチ就任直前まで行った経緯もあり、現場復帰の時期が頻繁に取り沙汰されていた。
 先週末のミニキャンプでカウボーイズが最も注目を集めたのも当然と言えよう。ジェッツ指揮官を退任以来、パーセルズが初めて練習のフィールドに立つ日だったからだ。
 そしてミニキャンプ初日から、パーセルズの強権ぶりが遺憾なく発揮された。今回のミニキャンプの対象は、新人19人を中心に総勢46名。うち、ルーキーが身につけるヘルメットから、カウボーイズの象徴とも言える星のマークを取り去ってしまったのだ。「奴らはまだルーキーだ。数合わせ程度の意味しかない」と新人選手にパーセルズは手厳しい。「星のマークは、自らの力で勝ち取るべきものだ」。
 厳しい態度は、今ドラフト1巡、全体の5番目で指名を受けたCBテレンス・ニューマンに対しても何ら変わらない。ニューマンは練習の合間合間にパーセルズに水を運ぶ役目を命じられている。「1年間、彼がしなければいけない仕事だ。来年になれば、また新しく誰かがやることになるだろうが」。
 全体練習中、FBジェイソン・マッキーがミスをすると、オフェンスの選手全員にフィールド2面先にある植木まで往復ダッシュを課した。一人の過ちも、全体責任となることを明確に示したのだ。
 カウボーイズの大半の選手がこれまで経験したことのないチーム統制。勝つことに飢えた若手選手には、評判も上々だ。「彼はすべての練習で集中力を要求する。そうやって、フィールド上で選手から最大限の力を引き出すんだ。この3日間で学んだこと、それはいったんフィールドに出たら、フットボールのみに集中するってことだ」とQBクウィンシー・カーターは語る。
 チーム内の意識改革は、早くも進行している感がある。一方で、チームの戦力面に課題が多いことも否めない。最大の懸案は、QBのポジション固定だ。昨季はシーズン途中に先発の座に就いたチャド・ハッチンソンがスターターでシーズンを終えたが、パーセルズはQBのポジションを完全に白紙に戻した。そこでハッチンソン、カーター、クリント・ストーナーに加え、ドラフト外新人トニー・ロモ(東イリノイ大出身)にもかなりの練習機会を与え、ポジション争いに加える意向が見える。また、昨季は大学時代のQBからキックリターンのスペシャリストにポジションを移しプレイしたウッドロー・ダンツラーを、いったんセーフティにコンバートしながらもQBで再度練習させるなど、様々な可能性を探っている段階だ。ジェッツ時代のレイ・ルーカス(前ドルフィンズ)のように、QBのバックアップ兼任のスペシャルチーム要員、といった起用法も見られそうだ。
 春のミニキャンプは、ルーキーとベテランを分けて行うカウボーイズ。チーム全体での練習は、7月のトレーニング・キャンプまでない。そのときこそ、名将パーセルズの手腕が本格的に見られることになるだろう。
[2003年5月6日]

ミニキャンプでチャンスを手にした小柄RB
 
 2003年ドラフト会議が終わると間もなく、NFLの各チームは2〜3日間のミニキャンプを開催する。この時期のミニキャンプには、所属するベテラン選手のオフのコンディション作りの状態を確認する意味もあるが、ドラフトで指名されたばかりの新人選手が初めてNFLのチームに合流し、コーチ陣から指導を受けることが最大の目的となる。
 先週末、5月2日から、NFLの大多数の25チームがミニキャンプを開き、ドラフト外で契約した選手たちも含め、十数人〜2、30人のルーキーたちがNFL定着を目指し、プロの世界の競争へ第一歩を踏み出している。
 ドラフト1巡指名の即戦力DTドゥウェイン・ロバートソン(ケンタッキー大)を筆頭に、ニューヨーク・ジェッツは今ドラフトで計7名の選手を指名したが、その一方でドラフト外でも20名のルーキーと契約。その中にはネヴァダ大ラスヴェガス校で大型QBとして将来を嘱望されながら伸び悩み、プロでTEに転向し再起を図るジェイソン・トーマスのような選手もいた。
 ジェッツのお膝元、ニューヨーク州ヘンプステッドから北へ10kmほど行ったところにあるロングアイランド大CWポスト校に通っていたRBイアン・スマートも、同様にドラフト外での入団を願っていた。しかしその願いは叶わず、代わりにジェッツから示されたのは、今回のミニキャンプへのテスト生としての招きだった。スマートのような選手にとっては、ミニキャンプはNFL入りの可能性を求め、コーチ陣に自らの実力を示す場ともなるのである。
 スマートはヘンプステッドから東へ20kmほどのところにあるバビロンで生まれ育ち、NCAA(全米体育協会)2部所属のCWポスト校に進学。ここで華々しい記録の数々を打ち立てる。4年間でラン6647ヤードをマーク、通算95TDは大学フットボール界史上最高の大記録である。
 これほどの実績がありながら、スマートがドラフト指名候補選手として名をあげられることはまったくなかった。CWポスト校という無名のスモールカレッジ出身であること、さらには身長173センチ、体重86キロとプロのRBとしては小柄な体格もあって、NFLの各チームはスマートを敬遠したのだ。
 契約にこぎ着けられる確証もないまま、スマートは3日間のミニキャンプに参加。しかしこの短い期間の中で、スマートは確実にジェッツのコーチ陣の心を掴んだ。「彼の動き、走りが気に入ったよ。私には天性の才能に見えたね」とヘッドコーチのハーマン・エドワーズも満足げに語った。そして、キャンプ2日目には、見事ドラフト外での3年契約を手にしたのだ。
 ジェッツの現在のチーム事情も、スマートには追い風となった。今オフにジェッツはキックオフ・リターンで昨季2TDをマークしたRBチャド・モートンを失い(レッドスキンズへ移籍)、代わりのキックオフ・リターナー探しが急務となっていたのだ。スマートはRBとしての活躍の他、キックオフ・リターンでも非凡な才能を発揮し、大学時代は1回平均22.5ヤードの記録をマークしている。奇しくもモートンも、身長173センチ、体重84キロと、スマートと変わらない小柄な体格で活躍をしていた。体格の不利を気にしなくていい環境が、ジェッツにはあったのだ。
 さらには、昨季パント・リターナーを務めていたWRサンタナ・モスが、エース・レシーバーのラヴァーニアス・コールズ移籍(→レッドスキンズ)により、WRのポジションにより力を割かなければならない事情もあった。スマートにとっては大学2年時以来となったパント・キャッチの練習も、1度の練習で難なくこなし、ここでもNFL入りへコーチ陣に強烈アピールできた。
 「彼はいわば地元のヒーロー。キックオフ・リターナーが欲しいのも事実だ。開幕ロースター入りへ、アピールのチャンスは十分与える」と指揮官エドワーズも期待を寄せる。小柄なローカル・スターが東京ドームでどのようなリターンを見せてくれるのか。地元ニューヨークのファンならずとも、8月2日の『NFL Tokyo 2003』でのプレイぶりが大いに注目される。
[2003年5月6日]

新人が合流できないカーディナルズ
 
 昨シーズンのチーム総QBサック数がリーグ最低の21個と、パスラッシュ力の欠如が露呈したアリゾナ・カーディナルズ。今ドラフトでは大学界トップのパスラッシャー、テレル・サッグス(アリゾナ州立大)を指名できる位置にいたものの、その指名を見送り、ニューオリンズ・セインツに全体6番目の1巡指名権を譲渡、代わりに全体17、18番目の2つの1巡指名権を手にした。戦力の穴の多いチームであるため、できるだけ多くの指名権を手にしたいと考えるのは順当だが、しかしNFLで即スター選手と活躍できる選手はドラフト上位10人程度と言われており、トップ10以内の指名権とそれ以下の指名権では、その価値には雲泥の差がある。
 その上、手にした2つの1巡指名権で指名したのが、2巡指名程度が妥当と思われていたDEカルヴィン・ペイスとWRブライアント・ジョンソンとなれば、ファンの不満も最高潮に達しそうだ。
 それでも、ドラフトは事前の予想通りに選手が活躍するわけではないのが常。当初の評価の低さを、ペイスとジョンソン2人が覆してくれる可能性も大いにある。しかし、カーディナルズには、ドラフト上位指名選手がなかなか活躍できない、より大きな問題が存在しているのだ。
 それには、選手の契約の問題が大きく絡んでいる。NFLでは契約下にない選手が夏のトレーニング・キャンプに参加することはできないため、通常ドラフト指名を受けた新人選手はキャンプ開幕までにチームと契約を済ませる(この契約がキャンプ開幕に間に合わなかった場合、その選手はチームに合流できない=ホールドアウト)。一方で、5〜6月の段階でNFLの各チームは新人選手を対象にミニキャンプを行う。選手の実力を把握し、チームの戦術にいかに組み込むかを決定する重要なプロセスである。
 当然、ドラフト指名選手のほとんどは、このミニキャンプに未契約の状態で臨むこととなる。となると、ケガを恐れる選手側は、ミニキャンプへの参加を敬遠したがるようになる。未契約の状態でもしケガを負った場合、その後の契約交渉で不利を被る可能性があるからだ。
 一番来てほしいはずのルーキーに参加してもらえないのなら、ミニキャンプの意義は半減する。それが即戦力での活躍を見込んでいるドラフト1巡指名選手となればなおさらである。
 この問題を解決するため、NFLの各チームはミニキャンプまでに、「injury waiver」と呼ばれる免責保証をドラフト指名選手に対しておこなう。この保証は、もしミニキャンプで選手がケガを負ったとしても、そのことがその後の契約交渉に影響させないことを約束するもの。これがあって初めて、未契約の新人選手は安心してミニキャンプに参加できる。
 カーディナルズは例外的に、この保証をドラフト指名選手に対して行わない。そのため、昨年もドラフト1巡指名のDTウェンデル・ブライアントがミニキャンプに参加せず、契約交渉自体もこじれたため、トレーニング・キャンプはおろか、プレシーズン・マッチにも参加せず、結局チームに合流したのは公式戦の第2週を迎えてからであった。その結果、ブライアントはチームが期待しただけの活躍をまったく見せることができなかった。
 そして今年も、同様の問題からペイスとジョンソンの2人の1巡指名ルーキーがミニキャンプの練習に参加しなかった。「今はメンタル面でトレーニングするしかない。できるだけ早く、事態が解決すればいいけど」とジョンソンは語った。
 カーディナルズの次回ミニキャンプは6月2日から開催される。それまでに、チームと選手側の不和は解決されるのだろうか。カーディナルズ首脳は、新人選手に対する保証を改めるつもりはない意向を表明している。「これはフロントが考えること。少なくともルーキーたちは練習を見学して、学んでいる。練習に合流するときがくれば、我々は最高のコーチングを彼らに授けるよ」と気丈に振る舞うデイヴ・マッギニスヘッドコーチ。球団首脳が現場スタッフへ最大限のサポートをする体制が築けるのか、カーディナルズ再建の道は険しい。

[2003年5月6日]


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