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今週のプレイヤー、コーチトピックス


注目のドルフィンズQB起用策
 
ドルフィンズ・ヘッドコーチ デイヴ・ウォンステッド(左)とチームの先発QBに指名されているジェイ・フィードラー(右)
 ブライアン・グリーシーのマイアミ・ドルフィンズ入団は、フロリダ南部の熱狂的ファンにとって何よりの喜びだったのではないだろうか。ブライアンの父ボブ・グリーシーは1967年から80年までドルフィンズに所属し、頭脳派QBとして活躍、プロボウル6度選出を受けた名選手だった。72年にはNFL史上他に誰も成し遂げたことのない17勝0敗の無敗シーズンにチームを導きスーパーボウル制覇、翌73年にもリーグ王座に輝いている。
 その73年以来、ドルフィンズはスーパーボウル優勝を果たしていない。つまり、70年代の強いドルフィンズを知るファンにとって、ボブ・グリーシーは今なお最高のヒーローなのだ。
 その息子ブライアンが6月9日、ドルフィンズと2年契約を結んだ。「QBのポジションは我々の最大最後の穴だった。もう明日にでもシーズン突入しても大丈夫だ」とヘッドコーチのデイヴ・ウォンステッドは満足げに語る。
 ただし、ドルフィンズのエースQBの座は揺るがない、とウォンステッドは強調する。過去3年間、ドルフィンズの先発QBを務めてきたジェイ・フィードラーが、今年もエースだと宣言しているのだ。「はっきり言っておく。ジェイは今季すばらしい活躍を見せるはずだ。1年通してケガもなくね」。
 グリーシーも、その現状に不満はないと語る。「このチームに競争は必要ない。必要なのは安定感なんだ。僕がそれをもたらす存在になれればいいね。ジェイに何かあったときも僕がいる。去年の二の舞は繰り返さない」。
 昨季のドルフィンズが欠いていたのは、まさにこういう存在。フィードラーが右親指骨折で戦線を離脱している間、2番手QBのレイ・ルーカスが代役を務めたが、2勝4敗とチームはペースを乱し、それがたたってプレイオフ進出を逃してしまったのだ。念願のスーパーボウル進出へ向け、同じ過ちを犯すことはできない。
 しかし、もし今季序盤、フィードラー率いるドルフィンズ攻撃陣のパフォーマンスが上がらなかったどうなるか。ファンやメディアは伝説の名QBの実子を先発に昇格させるよう、声高に叫ぶようになるだろう。その時こそ、ウォンステッドは栄冠をつかむための最大の試練を迎えることとなる。
 ただ、QBのポジションの扱いについて、ウォンステッドには心得がある。彼がドルフィンズの指揮官に就任した2000年、ドルフィンズは最大の転機を迎えていた。前年まで3シーズン、チームは剛腕パサー、ダン・マリーノに最後のチャンスを与えようと、カウボーイズで2度スーパーボウル優勝を果たしている名将ジミー・ジョンソンをヘッドコーチに据え、チーム強化を図っていた。しかし、その望みは叶うことなく、99年シーズン限りでジョンソンは退任、その右腕的存在のウォンステッドが指揮権を引き継いだ。
 ウォンステッドの初めての仕事は、地元の英雄マリーノのキャリアに終止符を打つことだった。ウォンステッドはマリーノに、エースQBの座を確約しないことを伝えた。それを受けマリーノは、17年間に及ぶ輝かしい選手生活を終えることを表明した。ウォンステッドの判断は、当然ながらファンの大半を敵に回した。
 マリーノに代わる新エース探しが注目を集めた00年プレシーズン。ポジションはマリーノの控えQBだったデイモン・ヒュアードと、フリーエージェントでジャガーズから移籍したばかりのフィードラーとの間で争われていた。フィードラーがケガで夏のトレーニングキャンプの大半を休んでしまったこともあり、ヒュアードがポジションを獲得することが有力視されていた。
 ここでもウォンステッドは仰天の決断を下す。最後のプレシーズン・ゲームで4インターセプトを喫するなど低調だったフィードラーを、次期エースQBに指名したのだ。またも周囲はウォンステッドにブーイングを浴びせた。
 しかし、結果は名将ジョンソンの下で一度も成し遂げられなかった地区優勝。ウォンステッドの判断を批判する者はいなくなった。
 今季もまた、QB起用をめぐってウォンステッドは周囲からの雑音に悩まされることになるかもしれない。その雑音をはね返せる自信があったからこそ、ウォンステッドはグリーシー獲得に異議を唱えなかったのだと言えるだろう。往年のドルフィンズファンには残念かもしれないが、現在のドルフィンズの実権を握っているのはウォンステッドなのである。
[2003年6月12日]

レイヴァンズ注目のQB3本柱
 
昨シーズン、スターターとして開幕をむかえたクリス・レッドマン
今シーズンのドラフト1位指名カイル・ボーラー
昨シーズン、カウボーイズからレイヴンズに来たアンソニー・ライト
 1996年に旧クリーヴランド・ブラウンズがボルティモアに移転し、レイヴァンズの歴史はスタートした。最初の2年間は旧ブラウンズ時代から所属するヴィニー・テスタヴァーディがエースQBを務めたが、98年にFAでニューヨーク・ジェッツに移籍。その後はジム・ハーボー、スコット・ミッチェル、トニー・バンクス、エルヴィス・ガーバックと、毎年違う選手が先発QBとしてシーズン開幕を迎えている。毎年のようにエースQBの顔ぶれが変わり、オフェンスのパフォーマンスも安定することはなかった。スーパーボウル優勝を果たした2001年度すら、シーズン途中でQBの座がバンクスからトレント・ディルファーに移ってからの快進撃。そのディルファーも、その年のオフには退団してしまっている。
 そのレイヴァンズが、テスタヴァーディ退団後初めて、2年連続で同じQBがスターターとして開幕を迎える可能性がある。また、もし違うQBが先発の座に就いたとしても、それは決してマイナスを意味するわけではない、というのが今季のレイヴァンズの陣容だ。
 今季のエース最有力候補は、昨年も開幕スターターを務めた4年目の若手クリス・レッドマン。昨季は先発1年目ながら、第6週までパス成功率53.3%、1034ヤード獲得、7TD(3インターセプト)とまずまずの内容。ディフェンスを中心に数多くの主力選手を失い、苦戦が予測されたチームを3勝3敗の成績に導いていた。しかし腰痛が悪化し7戦目以降戦線を離脱。失意のままシーズンを終えた。今年1月、椎間板ヘルニア除去手術を受けたレッドマン。万全の体調に戻ったことで、今季に賭ける意識も高まっている。「去年よりも下半身を使えるようになった。パスの速度が増したよ」と語る。昨季、レッドマン欠場後のポジションを担ったジェフ・ブレイクが今オフに移籍、独り立ちしなければならない環境も、成長を促す要因になっているようだ。
 しかし、レッドマンのポジションが安泰ではない、というのも今季のレイヴァンズの強み。4月のドラフト1巡指名でカリフォルニア大の強肩QBカイル・ボーラーが入団してきたのだ。
 元フィラデルフィア・イーグルスのQBでケーブルテレビ局ESPN解説者のロン・ジャウォースキはボーラーを「NFLで5本の指に入るだけの剛腕の持ち主」と評した。膝立ちの体勢からパスを60ヤード、しかも正確無比なコントロールで投じることのできる、まさに逸材。「強肩で、走力があり、頭脳的なプレイもできる。成長の余地はまだまだあるが、期待通りのプレイを見せてくれている」とヘッドコーチ、ブライアン・ビリックも目を細める。ルーキーながら、先発QB争いをするチャンスをボーラーは与えられることになった。
 また、3人目のQBアンソニー・ライトも格段の成長を見せている。2000年、01年にダラス・カウボーイズで計5試合に先発。周囲の戦力の乏しいチームで結果は残せなかったが、まだ27歳と若い。「アンソニーは緩いパスを投げることも覚えなくてはね。浅いスラントのパスも、縦の長いパスと同じタッチで投げているんだ。それだと、ちょっと球威がちょっと強すぎる。それさえ覚えれば、面白くなるよ」。
 ミネソタ・ヴァイキングスの攻撃コーディネイター時代、オフェンスの戦略家として名声をほしいままにしたビリック。しかしレイヴァンズの指揮官としては、その才覚を発揮し切れているとは言えない。チームのウリは常にディフェンス陣。スーパーボウル優勝も、LBレイ・ルイスを看板とする鉄壁の守備で実現したものだった。若きQB3本柱を手にした今、初めてその知略がレイヴァンズで発揮されることになる。
[2003年6月12日]

冷え込む「FA第2幕」
 
49ersを解雇されたWR J.J.ストークス
 6月に入り、デンヴァー・ブロンコスを解雇されたブライアン・グリーシーは、バックアップQBとしてマイアミ・ドルフィンズと契約を結んだ。サンフランシスコ49ersを解雇されたJJ・ストークスは新たな所属先を探しているが、興味を示しているチームの一つ、デンヴァー・ブロンコスが用意しているポジションは、ロッド・スミス、エド・マキャフリー、アシュリー・レリーにつづくチーム4番手のWRの座に過ぎない。かつて「フリーエージェント第2幕」として注目された6月の選手移籍動向は、今年予想以上の冷え込みを見せている。
 サラリーキャップ、年俸総額上限制度がNFLに導入され、10年が過ぎた。その間に各チームのフロントオフィスは研究を重ね、いかに上手にサラリーキャップ枠を使うかを学んできた。その結果、5月の時点でNFLの32チームが持つサラリーキャップ枠の空きの総額は1億4000万ドル(約168億円)に及ぶ。昨年の同じ時期の額が8900万ドル(約106億8000万円)だったから、わずか1年で60%近くもサラリーキャップに余裕が増えたことになる。
 6月に相次ぐ選手解雇は、サラリーキャップ枠を空けるためにとられる策。ブロンコスはグリーシーを解雇することにより、495万ドル(約5億9400万円)分、今季のサラリーキャップ加算額を削ることができた。
 しかし、大半のチームでキャップ加算額を削る必要がなくなってきている。それにともなって、この時期にFAとなる選手の量、質ともに極端に低下している。グリーシーやストークスは、6月に入って解雇された選手の中でも随一のビッグネーム。その選手たちですらポジションを確約されずに新たなチームと契約を結ばねばならないのだから、さほど名のない選手にとってはさらに状況は過酷となる。
 選手が解雇されないのだから、当然各チームとも、5月の時点でほぼ選手ロースターは確定している状態となっている。だから、新チームでバックアップの座に甘んじなければならないというのも致し方ない話だ。
 選手たちもこの状況を理解しており、あえて解雇されることを選び、他球団とより好条件の契約を結ぶ、という可能性がなくなってきていることを肌で感じている。だからこそ、年俸カットなどの厳しい条件を飲むことで現所属チームに残留することができるのなら、その方がマシだと判断するのだ。
 2001年度スーパーボウル王者のニューイングランド・ペイトリオッツは、「フリーエージェント第2幕」でRBアントワン・スミスら他チームを解雇された選手を補強し、そのことが躍進の要員の一つとなった。しかし今や、そうした戦力強化は望むべくもない。スーパーボウル優勝を果たすための道は、ドラフトで優秀な大学選手を多く獲得し、彼らをできるだけ長くチームに残留させること以外にないのかも知れない。

[2003年6月12日]


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