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| 早くもチーフスとの契約を済ませたドラフト1位のRBラリー・ジョンソン(ペン州立大) |
カンザスシティ・チーフスの球団社長兼ジェネラルマネジャー(GM)のカール・ピーターソンは、1990年代の10年間にチームを102勝58敗(勝率.638)の好成績に導いた、現代NFL有数の球団経営者の一人である。初めてのドラフトで1巡指名したLBデリック・トーマス(故人)をはじめ、大学選手のスカウト手腕も卓越している。ただ、ことドラフト1巡指名選手との契約に関しては、毎年苦難つづきである。新人に法外な高額の契約金を払うことは決してしない、というポリシーなのからかもしれない。夏のトレーニングキャンプ初日までにドラフト1巡指名選手との契約を済ませた例は、ピーターソン政権下の過去14年間で、わずか4人しかいない。
ここ数年を見ても、98年のTヴィクター・ライリー(現ニューオリンズ・セインツ)との早期契約に成功して以降は、99年のWRシルヴェスター・モリス、2000年のTジョン・テイト、そして昨年のDTライアン・シムズと(01年はドラフト1巡指名権なし)、キャンプを欠席する1巡指名選手が後を絶たない(NFLではルール上、未契約の選手はキャンプに参加できない)。テイトはトレーニングキャンプやプレシーズンがとうに終わった9月に入るまで契約合意には至らなかったし、昨年のシムズもレギュラーシーズン開幕前日まで契約にサインすることはなかった。そのようにしてキャンプやプレシーズンマッチを欠席した選手たちにプロ1年目からの活躍を期待するというのは無理なことで、シムズは10月にはケガのため戦線を離脱、まったくチームに貢献できなかった。
ただ、今年に限っては、やや事情が異なっている。7月19日のキャンプ開幕前の17日、今ドラフト1巡指名のRBラリー・ジョンソン(ペン州立大出身)がチーフスとの7年契約に合意したのだ。この時点で、NFLチームとの契約に合意していたドラフト1巡指名選手は、ドラフト当日前にすでに契約を結んでいたシンシナティ・ベンガルズのQBカーソン・パーマー(南カリフォルニア大出身)のみ。例年の傾向をまったく逆転させ、他球団に先駆けてのドラフト1巡指名選手のチーム合流となったのだ。
ドラフト1巡指名選手の契約は、同じ1巡指名とは言っても、どの順位で指名を受けたかによって100万ドル(約1億2000万円)単位の差が出る。そのため各チームは近い順位で指名を行った他球団の契約交渉の行方を待って、提示金額の折り合いをつけようとする。新人選手・エージェント側にとっては、他球団が契約を行っていない段階でチームと契約を結ぶことは、非常にリスクをともなうのだ。
これには、チーフスでジョンソンの先輩となるRBプリースト・ホームズも目を丸くする。「ラリー・ジョンソンがこんなに早く契約を結んだなんて、びっくりだね。『こいつはバカか? 自分の指名順前後の連中が契約するまで待つべきだろうに』って思う人が大半だろう。ジョンソンの性格が表れていると思うよ。奴はフィールドに出て練習に参加したいんだ」。
こう語るホームズ自身、実は契約問題を抱えている。現在、ホームズはボルティモア・レイヴァンズからフリーエージェント権を得てチーフスに移籍時に結んだ総額800万ドル(約9億6000万円)の5年契約の3年目を迎えるところ。しかし移籍後の2シーズンで周囲の予想をはるかに上回る活躍を見せ、一躍リーグのトップランナーとなったホームズにとっては、そのパフォーマンスに見合った新契約が喉から手が出るほど欲しい。当然、新契約を求めてのキャンプ欠席の可能性も取り沙汰されてきていた。
しかし、「ホールドアウトしたらどれだけ余分にもらえただろうか、なんて考えたくない。もしチーフスの条件提示が『年俸10ドルと家、犬2匹』でも、首を縦に振ったよ。だって、大学を出たばかりで、僕は自分の力では何一つ手にしていないんだ。それなのに、自力で手にしたわけでもないのに『もっと金をよこせ』なんて言うのは、失敬な話だ。今の選手たちに対してだけでなく、これまでチーフスでプレイしてきた選手すべてにとってね」と語る優等生の新人RBを目の当たりにしては、「俺はキャンプに行かないよ、なんて言えるわけがない」とホームズも素直にキャンプに合流している。
何よりホームズにとって、昨年12月に負った臀部の大ケガが完治していることを証明しなければならない大切なトレーニングキャンプである。そうして初めて、総額1000万ドル(約12億円)はくだらないだろうとされる新契約の契約金を手にすることができる。
私欲を捨てて2003年シーズンのスタートを切ったチーフスの新旧RB。その奮闘の末には、97年シーズン以来遠ざかっているプレイオフ返り咲きも見えてくるはずだ。 |